組織や社会におけるアポトーシス(役割の自然死)とは?〜正常な状態を保つための死の積極性〜
「アポトーシス」とは「個体が生きるために細胞が自ら積極的に死を選ぶ」現象であり、細胞の自然死です。
死をどのように捉えるのか。
どこか「避けるべきもの」でいうか、いささかネガティブな印象を伴う概念のように思われる中で、物質的な現象としての死に「積極性」が見出されることに新鮮さを覚えました。
例えば、アポトーシスによって腫瘍の成長が未然に防がれていますが、この仕組みが壊れている細胞は自然死しない、つまり無限に増殖を続けてゆき、やがて「がん細胞」へと変化することが知られています。
個体を正常な状態に保つために「自然死」というメカニズムが組み込まれている。無限の成長に歯止めをかける仕組みが「組織の状態を正常に保つために必要である」ということ。
ふと、組織や社会においては成長の追求に焦点が当たる一方で、「正常な状態とはどのような状態な?」という問いが投げかけられることは少ないのではと思います。
そして、正常な状態を保つための仕組みとしての「自然死」を組織や社会にどのように埋め込むのか。それは世代交代、新陳代謝を促したり、がん細胞(悪性腫瘍)の発生を抑制する効果を期待する意味で必要なはず。
物質的な死ではなく、「役割としての自然死」を積極的に受け入れるには何が必要なのだろう。
生命を学ぶ中で浮かんでくる問いを大切にしたいのです。