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共通性の上に多様性が実るということ〜食を囲みながら、味覚の違いを探るという共進化のダンス〜

「"同じ"を通して、"違い"が浮かび上がってくる」

生命、生物の多様性。

およそ九億年前には動物特有の遺伝子のほとんどが生まれていて、遺伝子の「共通性」の上に、遺伝子の組み合わせによる「多様性」が結実している。

細胞による「物理的なつながり」と「情報的なつながり」の両立が生命現象を支える「有機的なつながり」の礎となっていること。

瞬間瞬間に「つながり」の上で数多の細胞が互いの状態に関するシグナルを発信して、受け取り、そしてあるべき状態へと自らを変化させて、また他へ働きかけていく。

なめらかに「部分と全体」が調和し続けてゆく。
通時的で共時的な最適化が編み出す生命の織物。

時には遺伝子の複製エラーが起きて、適切に情報を伝えられない、受け取ることができない、あるいは全く違う働きをしてしまうこともある。

そうした誤りも自ら察知して、自ら修正、解消しながら正常な状態を維持しようとする。

生物は「ゆらぎ」に対応する「しなやかさ」を持ち合わせています。

と、そんなことを思いながら、ふと日常生活に意識を向けてみると、「食卓を囲む」という営みは、とても生命的だと思います。

「今日の味付け少し薄い気もするけど、これはこれでおいしい!」

「ありがとう。ちょっと薄かったかな。まあ、たまには薄味もいいよね」

こうした軽やかな会話は、お互いの味覚の違い、味の感じ方の違いという、関係性のなかに含まれる「ゆらぎ」を調整しながら、重なりを作ってゆく。

人間関係も、時にくっついたり離れたり、時につかず離れず、それこそ二重らせん構造のDNAのように、螺旋的に発展していく。

「共進化のダンス」なんですね。

ごはんをよそう時、「ほんの少し」と言われても、いったいその人の言う少しとは、どのぐらいの分量をしめすのか。
その「少し」をはっきりどれだけ、と知るのが私達の商売でございます。
と、ある呉服屋が言っていました。

白洲正子『たしなみについて』

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