「人間関係の贅沢」とは何だろう。
ふれた瞬間の言葉の一つひとつが、輝き、響きあう眩い星々のように感じる文章に出会うとき。じんわりとした高揚感に包まれ、どこか縮こまって固くなっていた心が震えて、しなやかさを取り戻してゆくのを感じます。
『星の王子さま』で有名なサン=テグジュペリによる『人間の土地』も私にはとても大切な一冊です。
「人間関係の贅沢」こそが唯一の真の贅沢である。
本書で印象的な言葉の一つで、たしかにそうかもしれないと思うと同時に、あらためて考えてみたいわけです。
「贅沢とは何だろうか」「人間関係の贅沢とは何だろうか」と。
昨日、「簡素さの中に豊かさを見い出す」ということについて綴りました。その豊かさというのは、簡素であるがゆえに「物事の多元性」が自然と浮かび上がり、多元的なものを多元的なままで、あるがままをあるがまま受け取ることに下支えられているのだと思うのです。
この意味において「贅沢」と「豊かさ」はとても重なるように思います。多元的な内実。
人間関係の贅沢とは「あの人はこういう人」「私はこういう人」という一面的な関係に閉じているのではなく、「こんな一面があるんだ」と新しい発見があったり。
たとえ昔に同じような出来事を経験していたとしてても。一つひとつを新鮮に感じつつ、それぞれの多元性が浮かび上がり、時に離れたり時に近づいたりしながら、「あるがまま」の私たちが絶え間ない螺旋的発展の中で開かれ続けてゆくこと。
そのような関係のあり方の中に「人間関係の贅沢」が見出されるのではないかと思うのです。