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窓の外の景色を眺めているうちに心がとき解されてゆく感覚〜焦点から焦点面へ〜

「窓の外の景色を眺める」

「何かに集中している時」というのは得てして「近くを見続けている」ことが多いように思う。

物理的に焦点を自分の近くに置いている。

文字を読み書きしたり、パソコンに向き合ったり。

少しだけ視点を遠くにしてみる。

たとえば、ヨガに取り組んでいるとき、向かい合う鏡からのいつもより距離を離してみる。

すると、鏡の向こうの焦点もまたいつもより遠くなる。

焦点が遠くになると、ある点に対して意識を向けるだけでなく、その周辺にまで意識の範囲が行き届く感じがする。

焦点から焦点面へ。

遠くをぼんやりと眺めていると、固まった心がじんわり融けてゆく。

窓の外の景色を眺める時間がとても心地よい。

芸術家にして科学を理解し愛好する人も無いではない。また科学者で芸術を鑑賞し享楽する者もずいぶんある。しかし芸術家の中には科学に対して無頓着であるか、あるいは場合によっては一種の反感を抱くものさえあるように見える。また多くの科学者の中には芸術に対して冷淡であるか、あるいはむしろ嫌忌の念を抱いているかのように見える人もある。場合によっては芸術を愛する事が科学者としての堕落であり、また恥辱であるように考えている人もあり、あるいは文芸という言葉からすぐに不道徳を聯想する潔癖家さえ稀にはあるように思われる。

寺田寅彦『万華鏡』

科学者の天地と芸術家の世界とはそれほど相いれぬものであろうか、これは自分の年来の疑問である。

寺田寅彦『万華鏡』

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