「香りに対してどれだけ意識を向けているだろう」
そのようなことを思います。たとえば、体調を崩して鼻が詰まってしまうと香りが感じられず、なんだか世界から色が失われてしまったような気持ちになります。
あるいは街の香り。
電車の扉が開いた瞬間にふれる空気は街の香りに満ちています。街の香りは紐解いてゆけば、その街に暮らす方々の生活そのものとも言えます。
その土地の食の香り。料理に使われる食材の香りが重ね合わさり、一言では言い表すことのできない芳醇さを醸し出してゆきます。料理を味わうことは香ることでもあり、味と香りは密接に結びついています。
あるいは自然の香り。
都会の喧騒を離れて緑豊かな森林に足を運んでみれば新緑の香りが。太陽光が乱反射する海に足を運んでみれば青々とした潮の香りが。
香りには色彩(光)の記憶を呼び覚ます力があるような気がします。