「シンプルなルール」がしなやかさを生む。

今日も昨日に引き続き『植物は<未来>を知っている 9つの能力から芽生えるテクノロジー革命』(著:ステファノ・マンクーゾ 他)から「根のコロニーと社会性昆虫」を読んで感じたことを綴ります。

分散と統合。植物は地中で根を放射状に張り巡らせるわけですが、根の先端(根端)には感覚器が備わっていて、幅広く地中環境の情報を集めて統合しながら根をはります。

ハチやアリのように集団(コロニー)をつくり、それぞれの役割に従って行動し、行動の結果得られた情報を活用して、群れとして最適な選択・行動をする。そのような昆虫は「社会性昆虫」と呼ばれますが、まさに分散と統合を実践しています。

集団で行動する動物は、たいてい独自の行動パターンをもつ。昆虫や鳥の群れはまさにこのケースだ。各個体どうしの単純な相互作用を通して、群れの動きがまるで一つの生物の行動のように見える。

個体が群れの中で行動する。他の個体との距離感を調節したり、相互作用の中で自律的に行動する。群れ全体の中での行動規範・ルールが与えられているわけではないにも関わらず、群れ全体が意識を持った一つの生命体のように振る舞う。

全体に関する規範を定めなくても、個体に関する行動規範を定めるだけで、全体が協調してゆく。「みんなのために〜」という大義を掲げなくとも、ある意味で自分本位な行動が結果的に全体の調和をもたらされる。

自分の目が届く範囲で、他者との距離や関わり合いに気を配るだけでよい。人類も個人と全体の調和を探り続けてきたのだろうなと思うわけです。

こうした非中央集権的なシステムには二つの利点がある。一つは、非常に堅固な構造だということ(ただ一つの指令センターが計算やコミュニケーションを担っているわけではないので、さまざまな種類の刺激に耐えることができる)。もう一つは、計画と実行が容易だということ。非常に複雑に見える行動も、個々のエージェント間におけるとても単純な情報伝達のルールから成り立っている。

非中央集権的であることは、堅固であり、単純(シンプル)である。ここでいう「堅固」とは、システムのどこかで障害が起きた際に、それが連鎖して全体が機能しなくなる事態に陥りにくいということ。

そして、個と個の間での単純な情報伝達ルールがシステムの「非中央集権的」な性格を支えている。単純なつながりが「しなやかさ」を生んでいる。各部分(個体)があれこれ時間を考えて判断していたら、大きな時間差が生まれてしまったら、システム全体が有機的に協調することが叶わず、ちぐはぐになってしまうのでしょう。

たとえば、アリは一匹だけで、獲物などがその場所に残す非常に小さな濃度勾配(物質の濃度の微小な差異)をたどって進むなど、ほとんど不可能だ。実際、アリは、場所による濃度勾配の変化を補正することができず、道に迷ってしまうだろう。ところが、集団で行動すれば、コロニーは簡単にこの障害を乗り越える。コロニーは、環境から受け取った情報をたえず処理しつづける優れた集積回路として機能するからだ。

アリは餌を見つけると、フェロモンを出しながら巣に戻ります。そうして、他の仲間を連れて自分の足跡を辿りなおすことで、大きなエサを協力して運ぶことができます。結果、群れとしての生存確率も高まります。

最初は個体がバラバラで行動する。バラバラで行動するからこそ、広い範囲を探索することができる。個体の行動結果は群れの中で統合され、群れとして周囲の環境を多面的に捉えることができるわけです。

人間社会でも様々なコミュニティが存在します。普段はバラバラに行動しつつ、たまにフラッと集まってお互いの近況を共有するぐらいがちょうどいいのかもしれません。

コミュニティも群れと同義だと思えば、「何がコミュニティにしなやかさをもたらすのだろう?」という問いを立てることができます。窮屈にならないための秘訣は、分散と統合、個体間のシンプルなルールにある。

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