バーチャルなクリック感??
今日は『触楽入門 -はじめて世界に触れるときのように-』(著:テクタイル)から「タテヨコの区別がつかない、指先の錯覚を試してみよう」を読みました。
昨日は「見間違い、聞き間違いがあるように、触り間違いはある?」という話にふれました。
触り間違いの例として「ベルベットハンド・イリュージョン」という現象が紹介されました。テニスガットを両手で挟んで手を動かすと、本来であれば(ガットで)引っかかるような感覚があるはずですが、「ヌルヌル」とした感覚が生まれるというものです。
見間違い、聞き間違い、触り間違いがあることを踏まえると、ありのままの世界を捉えることは本来かなわないのかもしれないけれど、様々な感覚を統合して、色々な角度から世界をありのまま捉えようとしている。
現代社会は視覚・聴覚優位な時代ですが、特定の感覚に偏るのではなくて、自分の身体に備わった感覚を可能なかぎり全て解放して世界を捉えることが求められているのではないでしょうか。
今回は引き続き「触り間違い」の事例紹介、応用例が取り上げられています。
皮膚はどちらに引っ張られている?
著者は触り間違いの体験として、次のような事例を紹介しています。
この実験を自分でも試してみましたが、たしかに指が押されたような感覚がありました。不思議ですね。
触覚は垂直方向の力と水平方向の力を区別することができない。なるほど。横向きに引っ張られているにもかかわらず、縦方向に伸びる感覚(縦方向に皮膚が伸びる感覚)として捉えられてしまう。
伸びる方向までは正確に捉えられない、緩やかな曖昧さがあるんですね。
バーチャルなクリック感??
このような触覚の曖昧さを応用した例として、Apple社の製品に搭載された技術である「トラックパッド」が紹介されています。
私もMac Bookを使用しているのですが、トラックパッドを指でクリックする時の感覚は「パッドが下方向に動いている(押している)」というリアルな感覚だと捉えていました。たしかに電源が入っていないときはビクともしません。
デバイスに内蔵されている振動子による振動をバーチャル(少なくとも自分が力を加えていると思っている方向と異なる力が加わっている)と捉えれば、もはやバーチャルとリアルの境界線は本当は曖昧で、「実」を伴っている意味では等価なのではないかと思えます。
錯覚は誤りや避けるべきもの、として一面的に捉えるのではなく、認識次第で豊かな意味を生み出す源泉になるのだということ。モノの見方、捉え方をしなやかにしていきたい。そのように思うのでした。