「文章を声に出して読む」
その時、自分に何が起こっているのだろう。
朗読教室に通い始め、様々な作家の作品を朗読するようになり、早くも半年以上になる。
地の文、台詞。
「声」を一つとっても、抑揚、スピード、トーン、大きさなど、様々な登場人物、情景が感じられるように、いや、その文章、言葉に既に内在している「何か」が自然と立ち現れてくるように。
何度も口にしては、立ち止まり。
違和感や不自然さを削ぎ落としながら、時に大胆に、時に微妙に変化を付けながら、自分が言葉の向こう側の世界になじんでゆく。
声を出しながら、読むことを通じて、作品の世界にふれていく。
目に見える物事に物理的にふれる(触れる)こと、言葉の向こうに存在する世界にふれる(触れる)こと。
いつしか、その二つの「ふれる」に差はないと思えるようになっていた。
「ふれる」ことは、「私」と「私以外」という関係を超えて、向こう側にいる「私」がこちら側にいる「私」に向かって立ち上がってきて、手を取り合うような、そんな感覚を覚え始めている。