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何を選ぶのか、よりも何を選ばないか〜過剰につながり、大切なものは自然と残る〜

何かとのつながりができた後、自然と残るつながりもあれば、薄れゆくつながりもある。

「アポトーシス」という細胞の自然死のメカニズム。そこには正常な状態を維持するという積極性が内在しています。

生物の全体性を生み出す意味で重要な神経系、神経ネットワーク。

つながりが上手く形成されなければシグナルが伝達されず、身体の連動性が保たれない。神経系は過剰な運動神経が伸び、うまくつながるものが残り、うまくつながらなかったものは死んでゆくそうです。

人生においても様々な人、物事と出会いがあり、つながる機会があります。

どのつながりが自分にとって望ましいつながりなのか、つながった瞬間にはなかなか分からないものです。

しっくりくるつながり、深いつながり。

それは数多のつながりの中から、残り続けているつながり。

消え去るつながりもあれば、濃淡を繰り返しながらも長く続くつながりもある。

「自然死」あるいは「自然消滅」というメカニズムは、自分の意思で最適なものを決めるのとは異なる最適化とも言えるのかもしれません。

「何を選ぶのか」と「何を選ばないのか」は等価なのでしょうか。

「大切なものは自然に残ってゆく」ということからすると、どうも等価には思えないのです。

自然は後者、つまり「何を選ばないのか」を選択しているように思えます。

神経系ができ上がる時も同じです。運動神経が伸びて体の各所の筋肉細胞と接続する場合、体中で大量の接続をつくらなければなりませんが、その場合特定数の神経を伸ばすのではなく過剰に送り出します。その中で無事相手の細胞と接続できたものは生き残り、うまくつながらなかったものは死んで消えていく。これは脳内の神経細胞の結合でも用いられる方法です。

中村桂子『生命誌とは何か』

うまくつながらずに脳細胞の八五%を失うことさえあるなどというデータを見ると寒気がしますが、一生を暮らすのに十分な量はできるようになっていますから大丈夫です。一見いい加減な方法に見えますが、考えてみればこれほど確実な方法はありません。重要な系だからこそこのような方法がとられるのでしょう。神経系だけではありません。内分泌系でも免疫系でも不要のものは自らが死ぬという形で全体をうまく機能させます。つまり、細胞は体を維持するために生き続けたり分裂したりするだけでなく、上手に細胞死を組み込むことによってより巧みに生きられるようにしているのです。

中村桂子『生命誌とは何か』

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