「誰が何を知っているか?」を知っている
今日は『ソーシャル物理学 - 「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学』(著:アレックス・ペントランド)より「自分の周囲のアイデアの流れを改善する方法」を読みました。
「情報やアイデアの流れ」を変えれば、創造性や生産性が変わる。他者とのつながりの中で新しい情報・アイデアにふれ、それらを適度に取り入れることで望ましい判断や行動につながる可能性が高まる。
「社会的学習」が促されるネットワーク構造とはどのようなものなのか?「イートロ」と呼ばれるオンライン金融取引サービスを通じた社会実験から見えてきたのは「スケールフリー・フラクタル・ネットワーク」と呼ばれるネットワーク構造の重要性です。
「少数の人が多くの他者とつながり、多くの人は他者とのつながりがそれほど多くない」ような状況を表すのが「スケール・フリー性」です。そして、フラクタルは雪の結晶を拡大・縮小して眺めると、元の結晶構造が見られるように「自己相似的」であることを意味します。
他者のアイデアを模倣し、模倣した他者をさらに別の他者が模倣する。その連鎖がネットワーク内で情報やアイデアを効率的に伝播する鍵を握っています。
著者のコメントにおける「スター」は研究で良い成果を残す人物を意味していますが、「準備的探求」と呼ばれる活動を通して、個人の力でソーシャルネットワークでアイデアの流れを速くすることができるとは興味深いです。
専門家たちと双方向的な関係を築き、その関係性に頼っている。このことは何も研究に限らず、仕事や勉強などにも通じるかもしれません。仕事では、まず自分のアイデアをラフスケッチしてみて、他者にアドバイスを求める。勉強では、独学を基本としながらも、適度に他者の解説を取り入れて知識を更新していく。
いずれも「言われたとおりに実行する」「鵜呑みにする」ということではなく、自分が深く納得すること・腹落ちすることが前提であるように思います。謙虚でありながらも、無批判に受け入れ続けるのではなく、アイデアの仮説検証を繰り返してゆく。スケールフリー・フラクタル・ネットワークはそのような行動を促す基盤になるのかもしれません。
適切なタイミングで助言や支援を得る。他者との間に深い結びつきを築く。自分に知識が欠けていたとしても、ネットワークの中で「誰が何を知っているのか?」を知っていることは重要だと思います。
「誰が何を知っているか?」を知っている人同士のつながりを辿れば、自分から遠く離れた人にアクセスできる機会を得られるかもしれません。実際にそのようなつながりは形式知として蓄積・可視化できる場合もあれば、暗黙知に留まってしまう場合もあるかもしれません。
その時に大切になるのは「自分が何に関心があるのか?」を日頃から開示・発信しておくことのように思います。
問題は眺め方によって複雑にもなれば簡単にもなる。「誰の視点で考えるか?」というのは、実際に他者とのつながりがある、あるいは他者を想像する経験の蓄積がないと難しいのかもしれません。
「そのような見方もあるんですね」と、素直に耳を傾け、問いを重ねながら関心を高めてゆくこと。他者とのつながり、情報やアイデアの流れを活かすために実践していかねばと感じます。