社会は変わる?がん患者支援を通じて思うこと
こんにちは。患者さんの日常生活を豊かにしたい会社PEER(ピア)の代表、佐藤真琴です。このnoteではピアの事業を通じてどのような社会づくりを目指すのかについて、またその周辺について、書いています。
ここからの内容を3行でまとめると、このような内容です。
・この20年間で変わったこと、変わらないこと
・情報が増えても、患者さんは困っている
・困りごとを解決するような地域の場所が増えてきた。
20年前と比べると、圧倒的に情報が増えました。
私が患者さんのことを調べ始めたのは2003年頃です。そのころは、Googleという検索が便利らしい、という時代です。ADSL回線で、個人向けIP電話が使われ始めたころです。ケータイはガラケーで、まだ画面は白黒も現役でした。
↑iPodの初期型が発売された頃でもあります。真ん中にぐるぐるスライドするところがついていました。懐かしい。
その頃は、病気になっても、今のようにネットで検索することは一般的ではありませんでした。基本的には、病院、本屋さん、知人友人、そのくらいの情報網です。今よりも接する情報量は圧倒的に少なくて、私の個人的な感覚ですが、大体1/10000くらいでした。もっと少ないかもしれません。
病気について調べるには、書籍や人に聞くことができました。でも、脱毛とか生活の不自由に関することは、なかなか情報に出会えませんでした。今のようにがん相談支援センターがたくさんある時代でもありませんし、患者さんたちは自分なりの工夫をしながら過ごしていました。
体調不良や、脱毛などの見た目の変化がどの程度で、自分の生活がどうなるのか判らないので、仕事や外出を控える方の割合が大きく、がんなら仕事やめるよね、休むよね、というお話が普通に出ていました。今から考えると、何という時代!です。
情報が増えても、相談件数は減っていません。
ピアでは無料相談をしています。ウィッグを買うとか買わないとかは関係なく、脱毛時期の過ごし方についての情報提供とご本人の気持ちを聞いています。これは、抗がん剤や放射線、脱毛症や原因不明の薄毛など、理由は問いません。
脱毛したら、正直凹みます。凹んだ時期の生き方を考える第一歩目をご一緒したい、そんな時間です。
20年で情報量は圧倒的に増えました。インターネット上には、たくさんの経験情報がアップされて、2010年ころからはSNSも便利になり、ますます情報が増えています。これはとてもいいことです。みんなが次の人の役に立ちたいと思ったり、自分なりの工夫についてシェアできる。
しかし、私たちの受ける相談件数は減りません。情報がありすぎて、一体何から始めたら良いのか、患者さんたちは調べることも選ぶことも疲れてしまうのです。
「今のあなたには、この情報がおすすめ」これがポッとでてくる。これがピアの価値。
ピアでは、お話をききながら、ご本人の予算とか、1年後とか、髪が生えたらとか、お子さんの有無や仕事の種類、生活のリズムなどを聞きながら情報提供をしています。マニュアルは、あるようでほとんどありません。
いまの住んでいる地域で実際に使える方法、その予算、ピアでやるなら何ができるのか、できないことは他の方法、ネット上ではやっていること、その真偽など、私たちの中にある情報をご本人が使えるようにしながら説明します。
今困っていることを、今解決する。それを続けながら伴走する。
私たちがやっている事は、かちっとした名前のない支援方法で、カウンセリングでもありません。とにかく本人がなんとなく納得する。そして、困った時にピアにとりあえず聞いてみよう、と思っていただければそれでよし。こんなに難しいこと、一度で覚えられないし、他に治療や日常生活もあるので、なんとなく理解できたら大成功です。あとは、その都度聞いていただく。髪が生えたあとのことは、その時に考えてもいいのです。とにかく、今困っていることを、今解決する。そのための情報を丁寧に出す。かっこよく言うと、ペイシャンツジャーニーのジャーニーパートナーです。
相談できる場所と、解決できる場所の価値
この20年で日本のがんや脱毛症の患者さん支援は大きく変わりました。治療は病気だけでなく、その病を持つ本人を支えよう、と変化しています。
その中で、治療以外の部分で、副作用で脱毛やリハビリが必要なものがあります。この一部のものは、医療で行うものもありますが、地域で担える部分もあります。たとえば、ピアが相談できる場所を提供している、これも医療以外で担える場所です。
情報の検索も、始めのうちは大変ですが、病気や副作用の情報に慣れてきたら、検索もしやすくなります。基礎知識がついてきて、気持ちも落ち着いてきたら、検索する力もついてきます。ただ、本当に大変な時期は、調べる、考える、悩む、決める、のサポートも必要なのです。
地域にこのような場所が増えてきたのが、20年経った今の感想です。病気になってもその人らしく生きる、そのためにサポートしあえる社会が近づいてきています。