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なにかお困りですか?
つい先日、ある駅の中にある「お酒売り場」でこんなシーンを見かけました。
その女性客は、お店に入ってきて、一通り店内を歩いた後、お酒のコーナーに向かいました。
そこでいくつかの地酒のボトルを手に取り、眺め、結局棚に戻す・・・と言う行為を繰り返しています。
何度も何度も同じ様な行為を繰り返しているんです。
たまたまその場所に居合わせた僕の目には、その女性が何かのお酒、例えば誰かへのお土産とか、を探しているようにしか見えません。
どことなくそんなサインを出しているように見えました。
でもその売り場にいた従業員の誰一人として、その女性客に声をかけることをしません。
代わりに僕が声を掛けたいくらいな感じでした。
結局、数分後、その女性客は、なにも買わずに店を出て行ってしまいました。
他方、こんな経験もしました。
これは東北のある飛行場の中にあるお土産屋さんの中のお酒売り場でのことです。
ある男性客が飛び込んできました。
飛行場内の売り場ですから、お客さんは基本的に急いでいます。慌てています。
で、その男性。
地酒コーナーに向かい、お酒を物色始めました。
2~3品を手に取り比べています。
するとある女性のスタッフが、「何かお困りですか?」と声をかけました。
ここでのポイントは、「何かお探しですか?」ではなく、「お困りですか?」と、その男性客が一番待っていた言葉をかけた点です。
そのお客さんは即座に、「酒好きの上司に地酒を土産に持って帰りたいんだけど、どれがいいかな?」と尋ね、スタッフも的確なアドヴァイスをして、ものの数十秒で男性客は商品を決め、とてもスッキリした表情でお店を出て行きました。
前者のお店は、お客さんを無視し、お客さんがして欲しい対応をしなかったばかりに、一人の、でもひょっとすると将来にわたり、とても大事なお客さんになってくれたかもしれない人を失いました。
彼女はもう二度とその店には寄らないでしょう。
後者の店は、ツボを押さえた対応で、一人のファンを獲得しました。
時間のない中、気持ちの良い、しかも自分が一番して欲しい対応をしてくれた店を彼は絶対に忘れません。
おそらく出張にくるたびに、この売り場に立ち寄るでしょうし、このエピソードは彼の口から沢山の人に広がっていく可能性は大きいです。
このように「言葉」は店の将来を決め、お客さんの明日をも決めるかもしれません。
そんな心構えをいつも持っていたいものですね。
【言わないことは聞こえない。】
いつも言ってるだろ!と言う事の意味は、「時々言うことがある!」であり、書いてあるだろ!の意味は、「言外に読み取ってくださいよ!」です。
それでは言ったことにはならないし、伝わる筈もありません。
言わないことは聞こえないんです。
闇夜のカラスと言う言葉があります。
真っ暗闇でいくらガーガー鳴いても、どこにいるかは分からない。
ちゃんと居場所を示すことが大事です。
「うまい料理を出しておけば、客は来る!」
と、看板も出さない店が潰れるように、
「特殊な技術を持っているから、宣伝なんてしなくても患者は来る!」
とうそぶいている整体師の院が消えていくように・・・
まずはちゃんと伝える事。
つもり、つもりはゼロなんです。
言ったつもり!は何も言っていないのと同じなんですよ。