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総論と各論について考える

公認会計士の三浦真です。

私は子供の頃から、なぜか分かりませんが、総論と各論の関係を考えることが好きでした。大きな方向性と、日々の活動の整合性をよく考える子供だったと思います。

本日は、経営や組織運営における「総論と各論」について、深く掘り下げて考えてみたいと思います。総論と各論を行ったり来たりする力は、特に、トップマネジメントにとって欠かせないスキルです。

一方で、担当者や現場の視点では、各論に注力することが求められる場面が多くあります。この両者の役割の違いを理解し、いかに組織として一体感を持つかが、成果を左右します。

総論と各論が矛盾すると、会社は立ち行かなくなります。

経営者は、総論と各論を行ったり来たりする力を身につけましょう。

総論賛成、各論反対を超える

「総論賛成、各論反対」という言葉に象徴されるように、全体の方向性には同意しながらも、具体的な実行段階で反発が生じることはよくあります。

このような矛盾を解消するためには、総論と各論をつなげる思考が欠かせません。

特に、経営の場面では、総論(全体の方向性)を描くだけでは不十分であり、それを具体的な各論(行動計画)に落とし込み、さらに成果に結びつけることが求められます。

これは一方通行のプロセスではなく、総論と各論を何度も行き来しながら調整し、磨き上げていく必要があるのです。

トップマネジメントに求められる力

経営において、トップマネジメントが果たすべき役割は、総論と各論を行き来しながら、一貫したストーリーを描くことです。

ストーリーとは、企業が目指すべき未来像(ビジョン)と、その実現に向けた道筋を明確にし、社員やステークホルダーに共感を与えるものです。

例えば、総論として「社会に貢献する企業であること」を掲げるのであれば、その具体的な実現方法として、環境への配慮や地域社会への貢献といった各論を示す必要があります。

そして、その各論を実行する上での進捗や成果を定期的に総論へフィードバックすることで、戦略全体の一貫性と柔軟性を保つことができます。

このように、トップマネジメントは、総論を描くだけでなく、それを各論に落とし込む力、さらにそのプロセスをストーリーとして語る力を備える必要があります。

このストーリーが明確であればあるほど、社員や関係者が同じ方向を向き、組織全体としての一体感を生むことができるのです。

大局観のない経営者、つまり各論に注力しすぎる経営者も、高い確率で、困難に直面します。

環境は変化するからです。

担当者は各論に注力して良い

一方で、現場の担当者に求められる役割は異なります。

担当者は、トップマネジメントが描いた総論を基に、自らの業務に関連する各論に注力することが求められます。

担当者は、業務執行が仕事です。

例えば、経営方針として「DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する」という総論が掲げられた場合、

担当者には「新たな業務効率化ツールの導入」や「デジタルスキルの社内研修」といった具体的な行動計画の遂行が期待されると考えます。

これらの行動が積み重なることで、総論が現実となり、企業全体の成長に寄与するのです。

担当者が各論に集中することの利点は、専門性を深め、具体的な成果を生み出せる点にあります。

全体を俯瞰する総論はトップマネジメントに任せ、自らの業務範囲における改善や成果創出に集中することが必要です。

総論と各論の具体的事例

以下、最近、経営顧問先様とのディスカッションで直面した、総論と各論を行き来する事例です。

文字にすると、当たり前なんですが、一つ一つ、考えて実行しないと、間違いを犯してしまいます。

それぞれにおけるトップマネジメントと担当者の役割を考えてみましょう。

1. 日銀の金融政策と経済への影響

総論としての日銀の金融政策(例:金利引き上げ)は、経済全体に大きな方向性を与えます。

一方で、不動産業界では、今後、新たな融資の際に、金利が上がることに、対応するという各論の対策が必要です。

2. ビジョンと長期戦略・短期戦略

総論として企業が「環境に優しい社会を作る」というビジョンを掲げた場合、トップマネジメントはこれを実現するための長期戦略(例:再生可能エネルギーの導入拡大)を描きます。

一方、担当者は短期的な施策(例:省エネ機器の設置や運用改善)に注力し、具体的な成果を出す必要があります。

3. 海外進出と人材育成

海外進出という総論を掲げる際、トップマネジメントは市場調査や全体方針の策定を担当します。

一方、現場では、現地の人材採用や研修プログラムの運営といった各論が求められます。総論と各論の連携が取れなければ、海外進出の成功は望めません。

4. 経営目標におけるKGIとKPI、KDI

経営目標の管理において、KGI(最終目標)は総論に相当します。

一方、KPI(目標達成のための指標)やKDI(具体的な行動指標)は各論に該当します。

たとえば、「売上10億円達成」というKGIを掲げる場合、トップマネジメントはその達成戦略を描き、

担当者は「週10件の営業訪問」や「顧客満足度の向上」といった具体的な行動に注力します。

総論と各論を結ぶ力

組織として成功するためには、総論と各論のバランスが重要です。

トップマネジメントは、全体像を描きつつ、それを現場の各論に落とし込む力を磨く必要があります。一方で、担当者は各論に集中し、具体的な行動で結果を出すことが求められます。

この両者の役割が噛み合い、一つのストーリーとして繋がるとき、組織は一体感を持ち、目標達成への道筋が明確になります。

トップマネジメントが総論と各論を行き来し、ストーリーを語る力を磨くことで、企業全体の舵取りが強化されるでしょう。

ここの力、経営者のみなさん、つけていきましょう。訓練すれば、できるようになります。

この考え方を経営会議、取締役会に仕組化して、日々の経営に取り入れてみてください。

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