DJI RS 2、RS 3 ProをPTZヘッド化する「Project92.com PTZ Remote」の販売を開始しました。
1月に書いた「既存のビデオカメラやミラーレスカメラをリモートPTZカメラにする」をきっかけに、DJI社の電動ジンバル「DJI RS 2」「DJI RS 3 Pro」を外部から制御する方法を調べはじめ、RS 2とRS 3 ProのNATOポート/RSAポートに出ているCANバスに接続し、「DJI R SDK」で提供されているプロトコルで制御することがわかりました。
私はもともとBescor社の電動雲台MP-101を制御するための無線リモコン「MP-101無線リモコンキット」を開発・販売してきたのですが、それをベースにした試作品の開発に着手し、「DJI RS2、RS3 Proを外部から制御する(試作編)」でも最初の試作品をご紹介しました。
いろいろ困難もありましたが、ようやく発売を開始し、ありがたいことに、すでに何人かのお客さまにはお買い求めいただいております。仕事仲間で機材マニアでもある某氏からは「これ触りながら、酒飲めそう」というありがたいコメントを頂戴しています。実際、動かしていると気持ちよくて、私自身も試作品を動かしては、ニヤニヤしていた気がします(すごいのは、DJIのジンバルなんですけどね)。
製品発売直前でDJI RSフォーカスモーター(2022)の制御の不具合を発見
筆者は自分のライブ撮影・配信現場のために、DJI Ronin-SC、DJI RS 2と使ってきて、現在はRS 2をメインで使っており、それを使って開発を進めてきました。しかし、3月末にほぼ完成したところで、RS 3 Proを借りて動作確認したところ、RS 3 Proとともに登場した「DJI RSフォーカスモーター(2022)」との組み合わせで不具合が発覚し、その対応でファームウェアを更新するのに1週間を要しました。
同フォーカスモーターが従来のモーターと振る舞いが異なる問題は、世界的に困っている人たちがいるみたいで、DJIのサポートフォーラムでも「Big Issue on Ronin R SDK」でも、話題になっていました。答えはなんてことはなく、フォーカスモーターの制御コマンドをSDKのドキュメントに明記されていた100Hzの頻度で送り続ける必要があるということだったのです(モーターを動かす必要がないときも、送り続けないといけない)。
以前の「DJI Roninフォーカスモーター」は、必要なときにコマンドを送るだけでも反応してくれていたので、顕在化しなかっただけということでした。それ以外にも、新モーターの振る舞いがSDKの仕様とは違う点はあり苦労しましたが、結果的に安定したファームウェアにはなりました。
上記のサポートフォーラムの書き込みで、フランスのMiddle Thingsの「APC-R」という同じくDJI RS 2などをPTZヘッド化するソリューションがあることを発見したのですが、これも実際にライブ撮影・配信現場から生まれた製品のようで、非常によく考えられているなぁと感心しました(ただし、3月時点での書き込みによると新しいフォーカスモーターとの組み合わせでは動かないそうですが)。
大型ジョイスティックを採用した新型リモコン
もともと販売していた「MP-101無線リモコンキット」は、リモコンのジョイスティックとして、ゲームコントローラなどでも利用されている小型のものを採用していて、細かい動きがやりにくいという不満もあったため、前から作ろうと思っていた大型のジョイスティックを利用したリモコンも作ってみることにしました。幸か不幸かコロナ禍での「ライブ配信バブル」も完全に過ぎ去って、時間があったこともあり、あたためていたアイデアを形にする機会に恵まれました。
実際、操作してみると、ジョイスティックのサイズによる操作感の違いは劇的で、ゆっくりした動きから速い動きまでより意図を伝えやすく、ジョイスティックの軸長の長さによって力点が作用点から遠くなった効果がこんなに大きいものかと驚きました。
なるほどゲームコントローラー用に軸長の長いノブが売られているのも納得です(もしかしたら、旧タイプのリモコンでも、これらのカスタマイズは有効かもしれないですね)。
また、採用したジョイスティックはノブが回転するようになっていて、1本でパン/チルトに加え、フォーカスモーターの制御が可能で、これもいい感じです。
MP-101制御ユニットも新ファームウェアをリリース
大型のジョイスティックのリモコンを作ったことで、従来からのMP-101の制御でも、もっと速度域の変化をうまく制御できないものか? という欲が出てきまして、前々から考えてはいたものの、うまくいかない可能性を考えていたアイデアを実際にファームウェアとして落とし込んでみたら、かなりよかったので、新ファームウェアをリリースしました。
Bescor MP-101は元々製品に付属するリモコンにあるスライドボリュームを使って、モータの動作速度を無段階で調整できるようになっているのですが、これはパン・チルト共通のため、従来のファームウェアでは、これを積極的には利用せず、3段階で変更できるようにするだけにとどめていました。
ジョイスティックの傾きによる速度変化はPWM制御によるようにしていたのですが、これだと低速の動きに限界があるため、このボリュームによる速度変化をうまく組み合わせられないかはこれまでも考えてはいました。
今回の新ファームウェアでは、パンとチルトの移動量の大きい方にあわせて、純正リモコンのボリュームによる速度調整と同様の制御を行い、PWM制御を組み合わせる形に変更しました(ただしハードウェアの設計上ボリュームと同様の制御は3段階ではありますが)。
これだと、パンが優位な状態からチルトが優位な状態に変移するときに、違和感があるかもと心配していたのですが、これは杞憂で、全体としてはよくなったのではないかと思います(新ファームウェアでも、従来動作に切り替えることは可能です)。
ファームウェアの更新は一旦お預かりしての対応となってしますが、ご希望のお客様は「お問い合わせフォーム」よりご連絡ください。
DJI RS 2、RS 3 Pro対応機能の特徴
それでは、今回発売開始した、DJI RS 2、RS 3 Pro対応の特徴について、ざっくり見てきたいと思います。しつこく「DJI RS 2、RS 3 Pro」書いているように、残念ながら「DJI RS 3」「DJI RS 3 Mini」には非対応です。また、DJI RSC 2やRonin-S、Ronin-SCなどにも対応しておりません。
ご利用にはいずれかのリモコンと「DJI RS制御ユニット」が必要となります。また、従来型のリモコンもDJI RSシリーズで可能となったプリセット機能に併せてリニューアルしております。
① DJI RS 2、RS 3 Proの3軸の動きを繊細に制御
ジンバルの3軸の動き(パン・チルト・ロール)を、アナログジョイスティックの操作角度に応じた速度で制御できるほか、3段階で最大速度を変更可能です。RS 2、RS 3 Pro本体での「ジョイスティック速度」の設定も有効で、撮影現場や演出内容、設置場所に合わせたカメラワークが可能となっています。大型ジョイスティックを採用したリモコンは、より自由かつ正確なコントトールがしやすく、ジョイスティック1本でPTZ操作が可能です。
② フォーカスモーターの制御に対応
DJI Roninフォーカスモーター、DJI RSフォーカスモーター(2022)の制御に対応しており、レンズのズームリングやフォーカスリングの操作が可能です。
モーターのキャリブレーションが完了した状態では、RS 2、RS 3 Proの提供するダイヤル機能とは独立して、フォーカスモーターの制御が可能ですので、ズームリングにフォーカスモーターを装着し、カメラとジンバルをUSB Type-Cケーブルなどで接続して、フォーカスの制御をダイヤル機能により電子的に行えば、フォーカスとズームの両方を操作できます。
DJI RS 2でも、より強いトルクのモーターが必要な場合は、付属のフォーカスモーターではなく、DJI RSフォーカスモーター(2022)を組み合わせて利用することができます。
③ 最大4ポジションのプリセット・リコールが可能
ジンバルの3軸のポジション、フォーカスモーターの位置を最大4ポジションまでプリセットとして保存でき、呼び出す(リコール)ことが可能です。リコール時の動作速度は5段階から選択できますので、シーンに合わせたプリセットの呼び出し動作が可能です。なお、フォーカスモーターのプリセット機能を利用するには、フォーカスモーターのキャリブレーションが必要です。
④ フォーカス、絞りなどカメラの制御が可能
RS 2、RS 3 Proが提供するUSB Type-CやBluetooth接続でのカメラ制御機能を利用し、対応したカメラでは、録画開始、録画停止、プッシュAFの操作が可能で、録画状態もリモコン側で確認できます。
そのほか、RS 2、RS 3 Proのダイヤル機能に割り当てたカメラ機能の操作もでき、電子的なフォーカスのコントロールやISO、シャッタースピード、絞りの調整に割り当てが可能です。カメラや接続方法ごとの対応機能はDJI社の「Roninシリーズ互換性ガイド」をご覧ください。
⑤ 1台のリモコンで最大4つの操作対象をコントロール
1台のリモコンで、DJI RS制御ユニットないしMP-101制御ユニットを組み合わせ、最大4台まで制御可能です。DJI RS 2、RS 3 Proに加えて、Bescor社の電動雲台MP-101を混在させたシステムが構築可能です。また、4つのチャンネルから通信チャンネルを選択できるため、同一空間上に最大4セットが共存可能です。
※「MP-101無線リモコンキット」として販売されていたリモコンでも、DJI RS制御ユニットの操作は可能ですが、プリセット機能など一部機能はご利用になれません。ファームウェアのアップデートをお受けしておりますので、「お問い合わせフォーム」よりご連絡ください。トップパネルの交換を伴いますので送料ご負担のうえ有償となり、1000円を頂戴しております。トップパネルの在庫もありますので、必ず事前にご連絡ください。
⑥ 安定した通信が可能な2.4GHz帯IEEE802.15.4での無線通信
日本国内、北米、オーストラリア、EUでの認証取得済みの2.4GHz帯IEEE802.15.4を採用した無線モジュールXBeeを採用しています。Wi-FiやBluetoothと異なり、低ビットレートである代わりに、安定した通信ができるのが特徴で、2.4GHz帯含む多くの電波が飛び交う撮影現場でもご利用いただけます。モジュールの仕様上は室内最大60m、屋外見通し最大750~1200mとなっており(出荷時期により異なるモジュールを利用しています)、実際の利用実績でも室内20~30m、屋外100mの通信を確認しております。
くわしくはマニュアルもご覧ください
実際の操作方法などを知りたい方のためにも、マニュアルを公開しておりますので、そちらも併せてご覧ください。
お試しできるイベントを4/19(水)、4/20(木)の午後に渋谷で開催予定です!
もちろん、いますぐお買い求めいただけますが(タイミングにより納期は数日お待たせすることもあるとは思いますが、通常は翌営業日には発送予定です)、買う前に動作を確認したいという方は、お試しイベントを4/19(水)、4/20(木)の午後に渋谷で開催予定です。会場の広さの都合もございますので、ご希望の方は「お問い合わせフォーム」でお問い合わせください。詳細決まり次第ご連絡いたします。
在庫があれば、現地でも販売予定です。併せて、旧製品のファームウェアアップデートも現地でお受けしますので、お時間ある方はぜひお越しください。