
[概念] ユーザエクスペリエンス(UX)について
概要:
UXとは「User Experience(ユーザーエクスペリエンス)」の略語です。ユーザエクスペリエンス(UX)はユーザが得られる体験のことです。「Experience」は「体験・経験」といった意味を持つため、「ユーザー体験」、「ユーザー経験」とも訳されます。ユーザエクスペリエンス(UX)については数多くの定義が存在しています。ここではいくつかの定義を紹介するとともに、まず『ユーザエクスペリエンスは、使いやすさだけでなく、ユーザー体験を総合的に捉えること』と定義します。またこの記事ではUXの価値や構造についても紹介しています。
対象者:
エンジニア、デザイナー、ディレクター、PM、マーケター、経営者
1. ユーザエクスペリエンス(UX)の定義
ユーザエクスペリエンス(UX)とは
「UXとは?」ー。その議論はとどまることを知りません。
実際All About UXというサイトには27種類にも及ぶUXの定義がリストアップされています。専門家の間ではUXには『実用的(pragmatic)』と『感性的(hedonic/emotional)』という2つの側面があるという合意は形成されつつあります。
ユーザビリティとUXについて
【ユーザビリティ】
ユーザビリティの視点では、「ユーザが目標を効率的に満足して達成できたかどうか?」が重要です。
ユーザビリティの評価とは、特定の状況において特定のユーザが、ある製品の目標達成において、『効果・効率・満足度』があるかどうかを評価することです。
【ユーザエクスペリエンス(UX)】
ユーザエクスペリエンス(UX)の視点では、『ユーザが良い体験であったかどうか』が重要です。
ユーザエクスペリエンス(UX)の評価とは、『効果・効率・満足度』の3つの観点に加えて、利用文脈を幅広く捉えたり時間軸を長く見据えたり、感性や感情(情緒なども)の話にまで持ち込んだり、『ユーザの体験の度合い』を評価します。
【ISO 9241-210でのUXの定義】
国際規格として初めて『ユーザエクスペリエンス』が定義されました。
『ユーザエクスペリエンス(UX)とは、製品、システムまたはサービスを使用した時、および/または使用を予測した時に生じる個人の知覚や反応』と定義しています。
注釈1:ユーザエクスペリエンス(UX)には、「使用前」、「使用中」、「使用後」に生じるユーザの感情、信念、嗜好、知覚、生理学的・心理学的な反応、行動や達成の全てを含む。
注釈2:ユーザエクスペリエンスは、「ブランドイメージ」、「見た目」、「機能」、「システム性能」、「対話行動」や「対話システムの補助機能」、「以前の経験から生じるユーザの内的・身体的状態」、「態度」、「技能」や「個性」、および「利用状況の結果」である。
注釈3:ユーザの個人的目標という観点から考えた時には、通常はユーザエクスペリエンス(UX)に付随する知覚的・感情的な側面を、ユーザビリティは含むことができる。
【ニールセン・ノーマングループの定義】
ユーザエクスペリエンス(UX)に関するコンサルティングをしているニールセン・ノーマングループのユーザエクスペリエンス(UX)の定義は、
『ユーザエクスペリエンス(UX)とは企業やサービスや製品とのエンドユーザのインタラクションのすべての側面のこと。典型的なUXにまず必要なことは、顧客のニーズについて誇張なしに的確に適合させることである』
『所有や保有をしたくなるような製品を作るための単純さや簡潔さが必要である。真のUXは、顧客が欲しいというモノを与えたり、チェックリストで検証できるような特徴を提供したりすることではなく、それ以上のことである。企業が高品質のUXを達成するためには、「エンジニアリング」や「マーケティング」、「グラフィックデザイン」、「工業デザイン」、「インターフェースデザイン」などの多様な取り組みを連続的に結合しておくことが必要である』
【UXPAの定義】
ユーザエクスペリエンス(UX)に関わる専門家集団であるUXPAの定義
『UXとはユーザの全体的な知覚の構成要素となる製品やサービスや企業とユーザとのインタラクションのあらゆる側面のこと』と定義しています。
2. ユーザエクスペリエンス(UX)の価値
ユーザビリティを超えて
想像してみて下さい。「メール送信」や「カーナビの目的地設定」がスムーズに完了できるとして、満足度はどれぐらいでしょうか。多くの人は「まあ満足」や「普通」で5段階評価で言えば、平均「3.5」ぐらいーではないでしょうか。競合製品がない市場でユーザビリティが高い製品の場合は「非常に満足」と回答するかもしれませんが、例えばコモディティ化して競合製品が多く、類似商品やサービスが同時に提供され、他社製品との差別化が難しい状況ですと、どの製品も同じような機能になります。その場合は仮にユーザビリティが100点であっても、製品への評価は中程度にとどまります。
「ユーザビリティが最高 = 結果も最高」というわけではありません。

例えばApple Storeに置かれているノートパソコンは、意図的にスクリーンが「ちょっと見づらい」角度で開かれています。これは見やすい角度に調整をしようとして、来店客が自らノートパソコンに触れるように誘導するためです。
Appleをこよなく愛する人の中には知っている人もいるとは思いますが、**『76°の魔法』というAppleのこだわりがあります。
Apple のデザイナーのジョナサン・アイブ氏は「人は触ったものには恐れを抱かない」という考えに基づいていて、76度という角度は垂直に近く、店舗内を歩く来店客からはディスプレイが見づらい角度になっているんです。 そこで、来店客は自然と自分にとって見やすい角度にディスプレイを調整したくなります。 その接触により、他社製品とは違うApple製品の良さを実感してもらい、購買意欲を向上させる効果があるとされています。
Apple Storeは敢えて来店客の行動を少し阻害することで、結果としてより豊かな体験を生み出しているのです。
便利で高効率であればいいのか?

少し前までは顧客体験は、『快適で心地よく簡単で便利にユーザのしたかったことをできるよう、設計してあげる』でした。『便利で高効率であればいいのか?』ここには心理学とエンジニアリングが絡み合ってきます。
どう実現するのか?工学的な観点も必要になってきます。不便で効率の悪いサービスをわざわざ欲しいか使いたいかって話とユーザが経験をどう捉えるかって話が絡み合います。
全世界の空港を評価する機関です。マニアックな認証制度があります。
様々な部門があり、「空港についてから飛行機に乗るまでの部門」や「飛行機を降りてから空港を出るまでという部門」などがあります。
ある工夫をすることで、飛行機を降りてから空港を出るまでという部門」で23位でしたが、全米1位になりました。ゲートからバケッジクレームまでをリニューアルして快適になりました。さて、どんな工夫をしたでしょうか?
実際の施策
大きく迂回してつく時間を2倍にした。それによって顧客満足度が上がりました。なせ?効率悪くなったのに。それはスムーズに出られたからです。
時間稼ぎをしました。早く移動してしまうとバゲッジクレームでの荷物の待ち時間が出来てしまうので、逆手にとって到着する頃にちょうど荷物を受け取れるようにしました。
最大のペインは、時間がかかること以上に、自分自身でコントロールのできない待ち時間を強いられるのが辛いんじゃないのかという仮説。遠いし時間かかるんだけど、着いたら荷物がすぐ受け取れます。状況や立場(コンテクスト)が変わればデザインの正解が変わります。
色々な方法がある中の最もリーズナブルな選択肢、顧客のペインをリジェクトして、すぐにリニューアルできたり、トータルで見てリーズナブルの方法であっただけです。他にも沢山の選択肢を並べた上でこの選択肢を取ることが大事になってきます。
エクスペリエンスの価値
ユーザの「非常に満足」という評価を得るためには、ニールセン・ノーマングループの定義にあるようにユーザビリティを超えたレベルを目指さなければなりません。それを実現している代表例としてよく挙げられるのが『スターバックス』、『東京ディズニーランド』、『iPhone』です。この3つに共通していることは、『顧客 / ユーザに圧倒的に優れたエクスペリエンス(体験)を提供していること』です。



経営面でのエクスペリエンスの重要性

経営の面からもエクスペリエンスは非常に重要です。それはエクスペリエンスが一番高く売れる(儲かる)からです。ジョセフ・パインとジェームス・ギルモアは著書の中で『エクスペリエンスの価値はコモディティや製品の数十倍から数百倍である』ことを明らかにしています。顧客は製品やサービスにそれほど高い価値は認めません。彼らが最も高い金額を払うのはエクスペリエンスに対してです。
例)コーヒー1杯分の価格
豆の段階(コモディティ)では1〜2セントです。
加工業者が豆を挽いて袋に詰めて店で売る(製品)と5〜25セントになります。
豆を使ってコーヒーを淹れて提供する(サービス)と50セント〜1ドルになります。
同じ品質のコーヒーでも洒落たカフェやホテルのラウンジで提供する(エクスペリエンス)と2〜5ドルになります。
コンテクスト(状況や立場、文脈)が変われば価値が変わる
価値を決めるもの、それは『コンテクスト(状況や立場、文脈)』。ダイナミックな価値の変化、(製品・サービスが持つ)価値は変化します。HCD/UXDの上流の部分をもう少し考えれば、他にはないものとして選ばれるようになります。

全米で4位から5位に入ってくるけど、1〜2番には入れない。業界のトップを取るために、イノベーションコンサルティング会社に「顧客体験を考えて欲しい」と依頼をします。施策は何をしたか?全米の空港にカメラを設置して行動観察をしました。
移動のシャトルバスや営業所の手続き所で行動観察をして行動データを取りました。
3時間ぐらい、シャワーを浴びるように見ました。ビデオを見ていると今までレンタカー会社が想像もしていなかった顧客の体験している世界が浮かび上がってきました。
企業から見た顧客経験
予約を取る
顧客を受付まで運ぶ
書類を完成させる
返却手続き
車を清掃させる
アラモ(Alamo)レンタカーは当初は色々とこのフローで努力したけど良くならなかった。そこでイノベーションコンサルティング会社に依頼をして顧客の行動観察をしました。
顧客自身から見た顧客経験
観察の結果、顧客との重要なタッチポイントの外側にもっと沢山の行動や経験をしていました。
寒かったら服を変えるなど、荷物の詰め替えを道端でしていました。
その結果、荷物の詰め替え場所や簡易的なシャワーを設置した。
GPSデータを集計すると、9割近くがコンビニに寄ってまずスナックと地図帳を買い、車の中で小腹を満たしながら、疲れをリセットしてました。
その結果、営業所の中にスナックコーナーを作って副収入を増やした。端末で、地図をプリントアウトできるようにしました。
施策の結果
結果的にレンタカー屋で全米1番になりました。顧客が自分自身にとって重要なことをアラモレンタカーは提供しました。顧客にとってはレンタカーが大事なのではなくて、旅行や出張を快適にするのが重要でした。ここで注目したいのは、顧客自身も気づいていない重要な経験があるということになります。顧客の誰一人、スナックコーナーを作って欲しいとか、地図を作って欲しいなんてお客さんの声などは当初ありませんでした。理由としては顧客は、レンタカー屋にスナック菓子の販売を期待することではないと思ってるからです。
企業から見える顧客経験の外側に、顧客自身にとってさらに多くのエンドゴールが存在していました。
アラモ(Alamo)レンタカーが自社の価値をリフレーミングした視点特に不満な点のない気の利いたレンタカー会社
↓
旅や出張の移動におけるストレスを最小化してくれるきめ細かいトラベルパートナー
企業は価値提案しかできない(Vergo and Lusch, 2004, p.3)
企業ができることは価値を提案することだけ
『サービスドミナントロジック』という概念で、顧客の感じる価値や体験・経験に焦点を置いた考え方です。
価値提供と価値提案何が違うのか?
価値はコンテクストで決まるとするとコンテクストを決めるのは顧客です。そのため、自社がこういう製品を持ってますよと認識してもらう提案をすることはできます。ただし提供はできません。
3. ユーザエクスペリエンス(UX)の構造・モデル

ピーター・モービル(Peter Moville, 2005)の「UXのハニカム構造」では
UXの要素を以下の7つに分けています。
便利か(Useful)
利用できるか(Usable)
望まれるか(Desirable)
発見できるか(Findable)
信用できるか(Credible)
アクセスできるか(Accessible)
価値があるか(Valuable)
ユーザエクスペリエンス(UX)のモデル
ユーザエクスペリエンス(UX)はソフトウェア製品の場合、ユーザインターフェース(UI)という形でユーザと接することになります。UIは一見すると1枚の絵のようにも見えるので、センスのいいデザイナーに頼めば、サラサラとかっこよくて使いやすいプロダクトを書き上げてもらえると誤解しがちです。しかし、本来はそこには全ての要素(ユーザニーズ、ビジネス要件、技術要件)が凝縮されています。UXの構造を有名にしたモデルがあります。
ジェス・ジャームス・ギャレット(Jesse James Garrett, 2003)が提唱した有名なモデルのThe Elements of User Experience

ユーザエクスペリエンス(UX)の構成要素を、
『Strategy(戦略)』、『Scope(要件)』、『Structure(構造)』、『Skelton(骨格)』、『Surface(表層)』の5つとした、UXの5段階モデルを提唱しています。
Web構築時に考慮すべきことは、ユーザにとってのエクスペリエンスであるとしています。
ノーマンの行為の7段階サイクル
ユーザビリティの概念からユーザエクスペリエンス(UX)への流れを明瞭な形で最初に提起したのはノーマンであると言われています。そして、ノーマン(2013)は人間の認知的側面に注目して「行為の7段階サイクル」を提唱し、情動的側面を考慮した「3つの処理レベル」を提唱し、更に両者を関連づけています。
ハッセンツァールのUXモデル
ハッセンツァールは「UXとは、製品やサービスとインタラクションしている時の一過性で一時的な評価的感覚(良い-悪い)のことである」と定義しています。このモデルには、デザイナー(作り手側)の観点の流れとユーザ(使い手側)の観点の流れがあります。そして、その製品の性質を「操作性、使いやすさ」の実用的属性(Pragmatic Attribute)と「刺激、喚起」の感性的属性(Hedonic Attributes)に分けることを提案しています。
UX白書
2010年にドイツでユーザビリティ専門家を30人集めたワークショップが開催され、その成果がUX白書として2011年2月に「ALL ABOUT UX」というサイトで一般公開されました。
4. ユーザエクスペリエンス(UX)の期間
UXの対象とする期間

UXの対象とする期間は、一時的UX、エピソード的UX、累積的UXの3種類に分けられます。それ以前のUXは予期的UXです。
一時的UX
インタラクション中に感じる感情の特定の変化
エピソード的UX
特定の利用エピソードに関する評価
累積的UX
特定のシステムをしばらくの期間利用した後の見方
予期的UX
ユーザにとって初めての利用よりも前の期間、上述の3つの期間よりも以前のUX
5. ユーザの使う意欲と利用態度
UXに影響するユーザのモチベーション
同じ製品でも、人によって製品・サービスに接する態度は違うし、使い方や使う頻度も違います。これを個人差だと言えばそれまでですが、どうしてそのような違いが生じるのでしょうか? 特にPC・スマホや家電製品など、インタラクティブな操作を伴う製品・サービスは、理解しなければならないことが多いため、敬遠したり最小限の使い方にとどめたりする人も多いです。 ユーザによって使い方が違えば、知覚される製品の性質も異なるため、そこから得られる評価も違ってきます。つまり、UXは製品に対するユーザのモチベーションに影響を受けると考えられます。
インタラクティブ製品のUXに強い影響があることが知られているモチベーション
製品利用の自己効力感(SE:self-efficacy)
製品関与(PI:product involvement)
この2つのモチベーションの組み合わせにより、1人ユーザの製品に対する態度を明確に位置付けることが出来ます。
これは、UXをより詳細に理解するために役立ちます。
製品利用の自己効力感
自己効力感とは、心理学者アルバート・バンデューラ(Albert Badura)が定義したモチベーションの一種で、「それぞれの課題が要求する行動の過程を、うまく成し遂げるための能力についての個々の信念」と定義付けています。「やれるかどうか」ではなく、「やれるように頑張れると思うか」と言う効力予期と呼ばれる度合いを意味しています。
インタラクティブ製品の場合、自分のやりたいことを実現するために自分で操作したり、取扱説明書を読んだり、トラブルにあった時には自分で対処したりとさまざまな対処をしなければなりませんが、そうした努力をどれくらい頑張れると思うか、と言う自分の能力の度合いが製品利用の自己効力感になります。
製品の操作が苦手な人は、この自己効力感が低く、使いこなせる人は自己効力感が高いことになります。
右の製品関与の測定尺度を使うことで、インタラクティブ製品に関しては、特定の製品によらず製品利用の自己効力感を測定することが出来ます。
※実際には20問あり、7段階の測定尺度で把握します。
評定は、「とてもそう思う(7点)」「まったくそう思わない(1点)」とし、すべての評定値の素点を合計した値を個人の自己効力感得点として用います。
製品利用の自己効力感尺度の項目
電子機器をよく使うために、自分なりに利用法を工夫したりする
やりたいことがあれば、自分から進んで機能や使い方を探す
電子機器が備えている機能のうち、どの機能を使えばやりたいことができるか、大体わかる
トラブルが起こった時、慌てずに原因を推測して、対処の仕方を考える
機能や操作がわからなくなった時、自分で取扱説明書やマニュアルを読んで理解できると思う
もっと効率的な方法や使い方ができないか、調べたり考えたりする
どんな電子機器であっても、自分がやりたいことは操作できる自信がある
電子機器を使うこと自体が楽しいと感じる方だ
どのボタンを操作すればどうなるかが、大体わかるので、操作に不安は感じない
自分には操作が難しいと感じても、あきらめないで、できるまで頑張る
製品関与
製品関与は、対象となるインタラクティブ製品に対する関心の度合いです。「個人にとっての対象の知覚された目的関連性に関わるもの」と定義されています。
つまり、ユーザの個人的な目的や価値観と対象となる製品との関係の度合いを意味しています。
下記の『製品関与尺度の項目』は、個人向けのインタラクティブ製品を対象にした場合の測定尺度を示しています。 3つの因子に分かれており、「使う楽しさ」「情報感度」「利用効果の認識」で、それぞれ感情的側面、情報的側面、認知的側面から測定します。7段階の測定尺度で把握します。評定は、「とてもそう思う(7点)」「まったくそう思わない(1点)」としますが、「利用効果の認識」の3つの項目は逆転します。その合計値を用いて個人の製品関与得点とします。
製品関与尺度の項目
使う楽しさ
1. この製品を使うことが、楽しいと感じる
2. 自分の趣味や興味に関する製品・サービスである
3. 自分が積極的に使いこなしたり、活用したりする様子を想像できる
4. 自分らしさが反映できる
情報感度
5. 新しい機種が出たら、欲しいと思う
6. 新しい機種が出ると、とても気になる
7. 新しい機種に搭載されている機能について、大体知っている
利用効果の認識
8. この製品を使うとどんな効果が得られるか、想像できない
9. 使い方や利用の仕方が分からない
10. どんな風に使えば、自分のためになるか、想像できない
利用意欲で分かれる4つの利用態度
製品利用の自己効力感と製品関与は、強い関係性があるものの異なる側面の利用意欲です。
例)オンラインでの音楽配信サービス
インタラクティブな機器やサービスに対する自己効力感が高く操作が得意な人であっても、音楽そのものにあまり興味がなく音楽配信サービスに対する製品関与が低い場合は、そのサービスを使いこなそうという意欲はわきにくいです。逆に、自己効力感が低く操作が苦手な人でも、音楽好きの人であれば、難解な操作でも製品関与が高くなり、頑張ってでも操作を覚えて使いこなす意欲が湧いてきます。
2つの意欲を組み合わせることで、ユーザの利用態度を分類することができることが分かりました。
そこで、製品利用の自己効力感(SE:self-efficacy)の高・低と、製品関与(PI:product involvement)の高・低の組み合わせで4つのグループに分けると、利用意欲の異なるユーザがどのように製品と関わろうとしているか、利用態度を把握することが出来ます。
この分類法を『SEPIA法』と呼びます。この手法は、インフォーマント(調査協力者)の選定を行い際に用いられたり、簡易なペルソナを作る際のフレームワークとしてUXデザインにも活用されています。

実際、特定のユーザを調査すると、マニアユーザとミニマム利用ユーザを合わせて6割ほどになることが多く、期待先行ユーザや冷静・合理的ユーザがそれほど多くない場合が多いです。
利用行動や評価への影響
利用態度は、利用行動の違いに影響を与えると同時に製品評価にも影響が確認されています。個別の製品ごとに違いはあるため一般化することはできませんが、それぞれの利用態度ごとに利用や評価に一定の傾向があります。特に「期待先行ユーザ」は、積極的に利用したい気持ちがあるのにうまく使えないという、このグループの特性が反映される傾向があります。いくつかの製品を例にした研究では、製品の満足度が比較的高いと同時に不満足度も高いという、特徴的な結果が得られました。
ユーザと製品・サービスとの関わりを扱うUXデザインでは、ユーザの意欲や態度を把握することが、UXをより詳細に理解することにつながります。
6. ユーザエクスペリエンス(UX)とユーザビリティの手法
💡 人間中心の基本の4つ(調査、分析、設計、評価)のプロセスとプラスで(改善、反復)のプロセスに必要になる手法をまとめました。
調査:利用の状況の把握と明示
利用状況の把握
利用状況の調査
アンケート(質問紙)
フィールドワーク
エスノグラフィ
ダイアリー法
インタビュー
分析:ユーザの要求事項の明示
グランデッドセオリー法
動線分析図
シナリオ法
ステークホルダーマップ
カスタマージャーニーマップ(Before)
サービスブループリント
品質機能展開
KJ法
ワークモデル分析
統計解析
提供価値分析 / KA法
UXマップ
設計:要求事項を満たす解決策の作成
コンセプト設計
プリンシパル
発想法
ペルソナ
ビジネスモデルキャンバス
パターンランゲージ
共感型デザイン
参加型デザイン
課題リスト
カスタマージャーニーマップ(ToBe)
ユーザシナリオ
ストーリーボード
機能モデル
アクティングアウト
ユーザーストーリーマッピング
UIクラス図・画面遷移図
プロトタイピング
ワイヤー・UI
評価:要求事項に対する設計の評価
ユーザビリティテスト
ログ分析 / NEM
インスペクション法
シナリオ共感度評価
UXカーブ / UXグラフ
主観評価分析
心理的尺度
生理学的手法
長期的な計画
改善:評価結果をフィードバックして解決案を改善する
テストFB会議
改善計画書
反復:評価と改善を繰り返す
共創
アジャイル開発
反復デザイン
まとめ
UXデザインでは、ユーザが得られる体験を考慮してトータルでデザインします。「ユーザエクスペリエンス(UX)」については、ISO 9241-210やニールセン・ノーマングループ、UXPAなどがそれぞれの定義やジェス・ジャームス・ギャレットのUX5段階モデルやハッセンツァールのUXモデルなどの認知モデルなどを見てみると、実に多種多様な観点があります。特に大事に思うのは『ユーザエクスペリエンス(UX)はユーザビリティを超えていくもの。ブランディングの確立や体験性を向上することでユーザビリティを超えて一番高く売れるもの』ということになるかと思います。