重度身体障がい者のひとり暮らしの住まいについて
「ひとり暮らしなんてできないよ」
そんなことはない!!
ただ、暮らしていく中では、色んな工夫や気を遣うところ、注意しなければいけないところがある。
ここに書くことに対しては、地域によって違いがあったり、助成金・補助金があるかもしれませんが、参考までに書いていきます。
①バリアフリー
車いすでの移動が中心になっていると、住宅内の段差はもちろん外出時に問題なく移動できることが必要になってくる。賃貸住宅では、共用部分に段差がどうなっているか、段差の高さ、を注意する。
エレベーターがあれば、2階以上でもいいが、ない場合は1階がいいですね。
住宅内でも、部屋から部屋に移動しやすくするように、扉を外すこともある。畳の部屋では、車いすは移動しにくいから、フローリングにしてもらったり、敷居の変更ができたらやってもらう、といった段差をできるだけ無くす方法を考える。
さすがに1部屋では難しいので、3部屋くらいは欲しいですね。
②立地
要するに「交通の便が良いところ」なのは間違いありませんが、それ以外でも「生活関連施設(スーパー、コンビニエンスストア)が近くにあるか」や「近所に災害時の避難場所があるか」も確認する。ハザードマップも見て、避難のことも考える。避難場所と言っても、そこもバリアフリーを考えて、障害者が本当に避難できるのかを確認する必要が出てきます。
また、日当たりや騒音も検討です。
そして、散歩しやすくて、四季の変化がわかると、なお良いですね。
③電気代
重度の身体障がい者では、電動の介護用ベッド、人工呼吸器、環境制御装置などで電気を使う。また、電動車いすや移動用リフトの充電や災害時の予備バッテリーの充電を行なう。そして、家電製品も使っている。
もしかしたら、ひとり暮らしとしては、請求額が多いかもしれません。
④入浴方法
入浴は訪問入浴サービスを利用していることもあるとは思いますが、簡易浴槽を使っていると、簡易浴槽を置くスペース、リフト移動できるスペースが必要になり、呼吸器が水に濡れないように注意したり、シャワー浴のためのポンプをどうするのか、給水・排水ポンプをどうするのかも考えていく。
⑤福祉用具
電気代のところでも触れましたが、それ以外でも自走用車いすやスロープ、オムツなどである。車いすと書いたけれど、本人に負担のないようにオーダーメイドでつくられていることがある。
また、福祉用具を使う時でも、自分がどうすれば使いやすいのかを考えている。もしかしたら、福祉用具の専門家ではあまりお勧めしない方法かもしれないけれど、本人もそれを分かったうえで工夫している。
⑥ヘルパーの休憩場所
24時間介護が必要になると、ヘルパーさんがどこで休憩するのかを考えてみる。もちろん、専用部屋があればいいが、本人の状態を気にしていないといけないので、すぐに駆け付けられる場所で休憩することがあると思います。調理や洗濯でどうしてもすぐに駆け付けることができない時に、緊急通報ブザーで対応すると思います。
また、夜間では、ヘルパーは寝ることはないにしても、横になれる場所を作っておく。
⑦駐車場
ヘルパーさんが駐車するスペース、ということだけでなく、例えば訪問看護師、往診医、友人知人が来た時に駐車するスペースを確保する。そうすると、駐車場代はどうするかというと、本人負担となることが多い。市営住宅ではヘルパーさん用の駐車するスペースがあるかもしれません。また、近くにコンビニエンスストアがある時には、そこに停めるかもしれませんが、いつもというわけにはいかないので、相談しておく。
アパートやマンションでは2台分の駐車するスペースがあれば良いですね。
⑧緊急時の対応、連絡
24時間365日の介護が必要だとしても、いつ何時本人の状態が悪くなるか分からない。そんな時には、夜間でもヘルプできるヘルパーを確保して、優先順位というか、連絡手段をきちんと確立しておく。「すぐに来て!」と連絡しても、電話に出られないかもしれない。夜勤明けかもしれない。
そして、いざ、入院となった時には、入院用のバッグを持ち出せるようにしておく。
ただ、本人とともに確認をしておく。
⑨来客対応
本人がベッドで寝たきりの場合は、すぐに対応できないからヘルパーがまずは対応する。来ることが分かっている時には招き入れるが、全く連絡がなかったり、勧誘の場合は、本人に伝えたうえで、玄関先で対応して帰ってもらうこともあります。配達員が来た時には、本人の代わりに署名をする。
といった感じです。他に気をつけることもあるかと思いますが、本人がちゃんと伝えてくれます。
自分の生活する場所だから、自分が過ごしやすい場所をつくる。好きなもの、大切なものに囲まれて暮らす。だれでも理想だよね。
だって、病室ではない。誰かに管理されているわけでもない。
自分が暮らしていく中で、一人では生活が難しいことは分かっているから、ヘルパーさんも介助しやすい生活環境も整えていく。
「できない」から始まるのではなく、「やってみる」ことで本人の自立につながっていく。そして、これからひとり暮らしをしようとしている障がい者に対して「見本」となるように、実績を作っていく。実績が積みあがっていくことで、重度の身体障がい者でも生活しやすい街づくりになり、社会を変えていく。
だって、自分の生活は、自分でしか作り上げていくことができないんだから。