見出し画像

ハヤカワ春のロートル祭りその2のつもりが真夏のロートル祭りになっちゃったよ

 こんにちは。毎日暑いですね。いかがお過ごしですか。

 つか、春に1を書いてから、どんだけ時間経ってんの。続き物になってないやん。あ、1ってこれね↓
https://note.com/makoto_kuroi/n/n80da9c95919d

 前回はですね、小説に出てくる格好いいインテリ&ジェントルおぢとして、私の推しキャラであるジョージ・スマイリー烏丸少将をご紹介したんですが、今回はインデペンダント&ディーセントおば編として、ベル・ウィング(『マルドゥック・スクランブル』及び『マルドゥック・アノニマス』より)とミス・シンイー(『ホライズン・ゲート 事象の
狩人』より)をですね、早速ご紹介していきたいと思いまーす。

インデペンダント&ディーセントおば編

ベル・ウィング
『マルドゥック・スクランブル』および『マルドゥック・アノニマス』に登場し、主人公バロットを支える名わき役。

『マルドゥック・スクランブル』では、全三巻の2にあたる「燃焼」の後半で名スピナー(ルーレットでボールを回す人)として登場。最初から最後までフェアな勝負の末、負けても尚、気高く凛然とした姿勢を崩さず、戦いの場を去って行きます。

 続編となる『マルドゥック・アノニマス』においてはバロットの後見人として登場し、5巻では、バロットのみならず、妹分であるアビーの身元も引き受けることに。
 特に、アビーとバロットとストーンを交えたやり取りは、ぐっときますね。
 私もね、最初はストーンと同じ意見だったんですよ。「いや、それは違うんじゃないか」と。だけどね、「いや、いいんだ。それがうちのルールなんだ」と、ストーンを押し切って、アビーがいつか話せばいいんだよと言うベルさん、人間としての器の大きさを感じさせますよね。

 実写のイメージとして、なかなかしっくりくる人がいなかったのですが、しいて挙げるとすれば、ゾーイ・ワナメイカーさん。日本では、デビッド・スーシェ版『名探偵ポワロ』シリーズのオリヴァー夫人でお馴染みのあの方です。

 原作では、ぱっちりした青い目にグレイブロンドと描写されているので、その点と、あと年齢もちょっと違うのですが、職業人としての自信溢れる佇まいと、仕事の話をするときのちょっとシニカルな物言いは、オリヴァ夫人役のワナメイカーさんが、ぴったりな感じがします。

 と、まあ色々書いてきましたが、物語の見どころ(読みどころか?)は、ベルさんだけでありません。

 バトル要素の強い『スクランブル』の「圧縮」から、続く「燃焼」と「排気」では、良く練られたミステリのような美しい論理に裏打ちされた博打小説へと変化し、『アノニマス』は社会問題の要素が強くなり――と、どんどん小説としての持ち味が変化していくマルドゥックシリーズ。
 主人公であるバロットが、戦う強さと賢さを身につけ、さらに社会とのかかわり方を学んでいく過程とシンクロしていて、読み手にも成長を促す、素晴らしい構成だと思うのです。未読の方はぜひご一読を。

『マルドゥック・スクランブル』『マルドゥック・アノニマス』

 ちなみに、上記公式ページでは7巻までが紹介されていますが、今現在(2024/08/21)、スクランブルが全3冊で、アノニマスは現状で9巻まで発行されているため、一気に買おうとするとちょっとした出費になるので、その点が気になる方は、少しずつ購入するか、キンドルの値下げキャンペーンを利用するという手もあるかと思います。ご参考まで。

ミス・シンイー
 第11回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作『ホライズン・ゲート 事象の狩人』の主人公。

 冒頭試し読みはコチラから↓

 表紙の絵がちらっと見えると思いますが、この横顔の女性が、主人公のミス・シンイーです。剃髪した頭に、九つの太陽とクモタカチョウの刺青をほどこした、孤高の狩人。
 狩りで生活をする民族、というよりも狩りが生活そのものであるヒルギスの民であり、幼いながらも卓越した狩りの能力を有する彼女は、スカウト的な感じで人類が居住する巨大宇宙ステーションである「ホライズン・スケープ」に連れて来られます。
 そこで、狩りのパートナーとなる、パメラ人の少年イオと出会い、優れた射手としての能力を有するシンイーと、パメラ人特有の時間に特化した情報処理能力を持つイオの、二人の力を合わせて、事象の地平面に残された情報を求めて「狩り」をすることになります。

 しかし、狩場であるブラックホールは、その時間のギャップで二人を引き裂いていき、さらに予想外の事態も起きて――とまあ、こんな流れなのですが、とにかくですね、とてつもない負荷のかかる、犠牲を伴う狩りに、狩人のプライドをかけて、ストイックに、孤独に向き合うシンイーの姿が、とても格好いいのです。
 格好いい女主人公ものが好きな方には、ぜひおすすめしたいです。

 ちなみに、冒頭にも書きましたが、今作は第11回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作なので、末尾に「選評」が付いています。これ、ハヤカワSFコンテスト受賞作の恒例なのですが(出版される受賞作には毎回ついている)、自分でも小説を書かれる方には、この選考委員の方々のコメントも参考になると思います。個人的には菅先生のコメントが一番しっくりきました。

 さて、前回と今回とで、インテリ&ジェントルおぢと、インデペンデント&ディーセントおばという、魅力的なロートルキャラを紹介してきましたが、お気に入りロートルキャラは見つかりましたでしょうか? 
 いずれの作品も、ご紹介したキャラクター以外にも魅力的な人物が登場しますし、ストーリーラインも面白いので、未読の方には、ぜひご一読をお勧めします。

 それでは、よき読書ライフを。

(終わり)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?