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家族全員が実はタバコを吸っていた話
もうすぐ正月だねぇ、なんて言っていた昨年末のこと。
その日は免許を取ったばかりの次男(20歳)の高速運転の練習を兼ねて相方と3人で深谷のプレミアムアウトレットへ行くことになった。
「ね、今度深谷に新しく出来たアウトレットへ行かない?」
別にいいけど、プレミアムアウトレットだからなぁ、買うものないしな。
ところが次男も相方もプレミアムアウトレットが何なのかをあまり理解していなかったようで、いざ行ってみると
「ブランドものばっかりやん。しかも来ている客層もなんか違うな」
とテンション一気に下がって、とりあえず一通り店舗を回って、結局3人とも何も買わずにアウトレットを後にした。
「本当に高速教習に来ただけみたいだったね」
「景気づけに夕食は地元に戻って焼き肉屋で忘年会って感じ?」
「いいね!」
年の瀬で同じことを考えている人も多いのか、行きつけの焼肉屋はかなりの待ち行列だったが近所でお茶をしながらのんびり待って、店内に入ったのが20時半を過ぎた頃。
帰りは酒を呑まない僕が車を運転するということで、僕は烏龍茶、相方と次男は生ビールで乾杯。
焼き肉を平らげながら、2人はお酒もぐいぐい進む。
アルコールも入ってリラックスした雰囲気で話題は色んなところへ飛んでいく。
僕がある話題を振る。
「そういえば、最近思ってたんだけど、トイレとか2階への階段や2階の廊下とかなんか臭わない?
タバコか?とも思ったけど、まさかそれは無いなって。何だろうね?」
一瞬の間が空く。
次男と相方が顔を見合わせて、次男が言う。
「パパさん、知らなかったんだ? それ、タバコだよ」
「ええ!!!」
「◯◯(長男)がタバコ吸ってるから」
「本当!!?」
「自分もちょっとだけ吸ってたけど止めた」
「うそ!!?」
「ママさんも最近たまに吸ってたよね」
「!!!!!」
我が家は僕も相方もタバコを止めて20年以上経つ。
もはや非喫煙者の家庭で生まれ育った息子たちにとってもタバコは遠い存在で、むしろ忌み嫌うものだったはず。
まだ大阪の祖父母の生前に息子2人を連れて帰省する度に、
「大阪の家はクサイから嫌だ」と言っていた。
祖父母ともにタバコを喫うのでやはり家の中はタバコの匂いが染み付いていた。
長男なんて大学時代も喫煙者を見ると「ヤニカス」と揶揄していたくらいなのに。
それが!一時期はみんなタバコを吸ってたの?
それに全く気づかなかったのか!?
本当に驚いた。
皆、大人だからどうってことは別にないんだけど、そんなこともあるんだなぁと。
いや驚いた。
その後も、あえて長男には「タバコ吸ってるんだって?」て訊くこともない。
たまにフワンと臭う時があるが、もはや正体を知っているので一人でほくそ笑んでいる。
「あぁ、◯◯(長男)だな。僕は君の秘密を知ってるんだよ、ふふ」
<了>