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MPC Stemsは最後のゲームチェンジャーになるか

早速、購入して試してみましたよ。
AKAIがリリースしたMPC Stems。

MPC Stemsはサンプリングした楽曲・オーディオファイルを分析して、Drum、Bass、Vocal、上モノ楽器の4つのステムデータに分割してくれる新機能。

3月末にリリースされ、$9.99(日本価格は税込1,725円)のダウンロード販売で購入出来るようになっています。
(円安の影響大きいなぁ。。15年前なら$9.99は900円でお釣りが来たのに)

すでにビートメイク系Youtubeチャンネルでは、数ヶ月前からプレスリリース版でのレビュー動画も多数出ていて、話題になっていました。

MPC Stemsについての詳細はAKAIの公式サイトより、DTMステーションさんの方が分かりやすいかもしれません。

「AIがサンプリングの常識を根底から覆す」というキャッチがこの記事には付いていますが、全くそうだなと実際に使ってみて感じました。

果たしてそれが、サンプリングでビートメイクするために本当に良いのかどうかはさておき。

これまでは、例えばドラムキットを自分で作るのであれば、他の楽器が入っていないドラム演奏だけを探します。
イントロとか、ブレイクの瞬間のドラムだけのおかずなんてところからサンプリングすることが多いでしょう。

次に印象的な楽器のフレーズを使いたい場合も、出来るだけ他の楽器、特にドラムが入っているとさきほどサンプリングしたドラムとぶつかってしまうので避けたい、が入っていない一瞬を探して、目を皿のようにして(いやこの場合は耳を皿のようになのか?)レコードを何度も聴いて探します。

それはもう気の遠くなるような作業の場合もありますが、
むしろそうしたサンプルネタを探している瞬間が楽しいなんて時もあったりますが。
1つのビートを作るために、そうやって苦労してサンプル素材を集めて来るわけですが、そこに歴代のビートメイカー、トラックメイカー達の技というのがあったりした訳です。

しかし、MPC Stemsを使うとこの作業が激変します。
「おお!このフレーズ格好いい!」というところがあれば楽器のかぶりなんてことは一切気にする必要はなくなります。

その箇所をMPCでサンプリングして、Stemsに分析させるとものの数秒から数十秒でDrum、Bass、Vocal、その他楽器の4つのステムデータを生成してくれます。

実際、僕もYoutubeからカーペンターズ、ビートルズ、スライ&ザ・ファミリーストーン、エアロスミス(もちろんWalk This Way!)、NHK朝ドラのOPテーマ等の曲のワンフレーズをMPC LIVE 2でサンプリングして、Stemsに片っ端からかけてみました。

す、す、スゴすぎる。。。

もうこの一言です。
よく、Youtubeで昔のクラシック・ロックのBassだけ、Drumsだけを抽出したデータがアップされていることがありますが、
それらよりも、もっとキレイに各楽器だけ抜き出してくれています。

MPC Stemsはzplane社というその筋(どの筋?)では有名な会社のAIエンジンを使っているようで、その精度はある意味折り紙付きなのかもしれません。

オーディオデータをステムとして扱うというのは昔からミキシングなどでは使われていましたが、それを楽曲制作段階などからも使おうという取り組みは、以前からトライされていました。
Native Instrumentsは2016年くらいから、Stemsというファイルフォーマットを発表して、例えば彼らのDJツールTRAKTOR PROではStemsデータを使ったDJミックスなんかを提唱していましたが、あの取り組みはどうだったんでしょう?
正直、あまりNI Stemsが成功したような噂は聞いていません。
(個人的に知らないだけなのかもしれませんが)

そして、今回満を持してというかAKAIがMPCブランドとしてStemsエンジンを製品化したというのは、ある意味当然のことというか、ここにこそニーズがあったのだ、というべきなんでしょう。

現時点では、MPC StemsはMPCハードウェア単体では使えず、MPC Softwareと連動して使います。
(MPCハードウェアはコントローラモードで起動して、Stemsによる分析はMPC Software側のWIndowsまたはMacのCPUを使います)

ですが、現時点でMPC Stemsを購入しておけば、間もなくリリースされる予定らしいハードウェア単体での利用も無料で使えるようになるそうです。

とはいっても、最近のハードウェアはMPC ONEにしてもMPC LIVE 2にしてもコントローラモードの切り替えは簡単ですぐにスイッチできますし、そんなに面倒ではありません。
Stemsデータさえ作ってしまえば、そのプロジェクトをMPCハードウェア側のドライブに保存すればよいわけですし。

さて、このようにMPC Stemsを使うことで非常に簡単になるサンプリング・ワークフローが、ビートメイクにとって吉と出るのかどうか。
(凶にはさすがにならないとは思います)

サンプリングの魔術師といわれるピート・ロックがこのMPC Stemsのことを聞いたらなんて言うでしょう?
「そんなやり方は邪道だ、サンプリング文化の冒涜だ」
とでも言うでしょうか?
案外、
「うわ、すごい簡単やん、これが昔からあったらめっちゃ楽やったのに!」
とか言ったりして。

少なくとも、僕は「楽器かぶりもテクスチャー」として従来のやり方のサンプルとMPC Stemsを使ってもっとクリーンな分離したサンプルと、使い分けてみようかなと思っています。

果たしてMPC Stemsは最後のゲームチェンジャーになるか!?

<了>

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