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長年継承されたUIやワークフローを刷新するということをAKAI MPC3 アップデートから考える

AKAIのサンプラーMPCというビートメイカー御用達のマシンがあります。
そのMPCのファームウェアOSがそれまでのバージョン2ベースから、MPC3にアップデートされることが発表され、界隈では結構な騒ぎになっているようです。
海外の電子音楽機材系やビートメイカー系のYoutubeチャンネルでもこぞってMPC3アップデートについてのレビュー動画を出しています。

MPC3のBETAプログラムは発表されていますが、まだパブリックBETAではないため、チャンネル登録数の多いYoutuberチャンネルにレビューのためBETAバージョンを提供しているのかもしれません。
(それとも、BETAプログラム登録したユーザでも欧米では開始されているのかな?)

そういうケースの場合、新機能については両手をあげて絶賛のレビュー動画が公開されることが多いと思うのですが、意外にもMPC3への評価は賛否両論のようです。

何故なら、MPC3ではこれまでのハードウェアでずっと継承されてきたワークフローが一新されているからです。

最初のMPCサンプラーは1987年のMPC60です。
これは、リズム・マシン LINN Linndrumの生みの親ロジャー・リンが設計をした初号機でMPCの名称は"MIDI Production Center"の頭文字から取られています。
それ以降、3000、2000、2500、5000、1000とスタンドアローンサンプラーの名機たちがずっと継承してきた16パッドとシーケンスによる制作ワークフローは継承されてきており、
機種ごとに若干の違いはあれども、現在のMPC ONE、X、LIVEIIなどでも同様の操作感でビートメイクが出来るようになっています。

僕もだいぶ前にMPC1000を購入したのがはじめてのハードウェアサンプラーで、その独特な操作感にかなり最初は手間取ったのですが、慣れてしまうとレコードからサンプリングしてサンプルをスライスしてパッドにアサインしてレコーディングするという一連の操作はなるほど理にかなったものでした。

最近になってMPC ONE、LIVE IIを入手した時も、MPCマシンとしては10年以上ぶりでしたが、MPC1000で覚えたワークフローは基本的に同じですぐに使うことが出来ました。

今回、そのいわばレガシーとも言えるワークフローがMPC3で大幅に再設計されているのが、賛否両論となっているようです。

いくつかレビュー動画を見ていると画面もカラフルになっていますが、確かにシーケンスを組む時の概念がいくつか変わっているように見受けられます。
特にサンプリングして編集したサンプルデータを保存するプログラムという概念がそもそも無くなっているようです。

さらに、今回のMPC3はこれまでのマシンの発展型というよりは、コンピュータベースの音楽制作では欠かせないDAWでは一般的なシーケンサーのインターフェースを大幅に取り入れたMPC FORCEに寄せたOSアップデートになっているところも、昔からMPCハードウェアに慣れ親しんできたユーザからあまり良い評価ではないようなんです。

MPC FORCEのインターフェースは触ったことがないので具体的には分からないのですが、欧米の掲示板サイトRedditのMPCスレッドでも
「俺達はMPC FORCEではなくMPC LIVE IIを選んだのは、MPCのスタンドアロンマシンが好きだからなんだよ」
みたいな書き込みもあったようです。
つまり、レガシーを引き継いだワークフローそのものに愛着があるからMPCスタンドアロンマシンを選択しているという訳です。

今回、インターフェースやワークフローが大幅に変わる、いやそもそも全く別物になってしまうようなアップデートはAKAI社内でもかなりの議論の末だったと思いますし、その決定には相当な勇気が必要だったんだろうな、とも思います。

ですが、考えてみればAKAIというブランドは当初の赤井電機、そしてAKAI professional M.I.が破綻した後、アメリカのNumarkを経てinMusic Bransというアメリカの会社になってしまっています。
なので、彼らにとってはAKAIブランドには敬意を持ちつつも、レガシーを引き継ぐOSを刷新するということにあまり躊躇がなかったのかもしれないのかな、とも思ったりします。

ということで、これまで覚えてきた現在MPC2ベースのワークフローがMPC3でどれだけ変化するのか、楽しみでもありますが不安の方が大きかったりもします。
幸いにも、MPC3へファームウェアアップデートした後も、起動時にメニューからダウングレードしてMPC2として起動することも出来るようなので、正式リリースが来たらアップデートしてみようかなと思っています。
BETAプログラムはパスかなぁ。。。

<了>


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