しゃべる履歴書

僕は性別の欄の所でペンを動かすのを辞めた。僕は最近、性別についてよく分からない。女性が好きなのだが、それと同じ様に男性も好きである。(履歴書の性別をなんと書こう)一息溜息をついた。母から聞いた話なのだが、弟が生まれる時僕は(優しいお姉ちゃんになるんだぁ)と話していた様だ。僕は再びペンを走らせようとした時、微かに声が聞こえた。(それでいいの?)まるで履歴書がしゃべりだした様だ。(だって仕方がないじゃないか男って書いた方が丸く収まるんだから)と僕は履歴書に向かい話した。すると(僕は優しいお姉ちゃんが好きだったなぁ)と話し出した。弟は僕が兄と知りながらお姉ちゃんと呼んでいた。友達にお兄ちゃんだろと言われ虐められても弟は、僕を(お姉ちゃん)と呼ぶのを最後まで辞めなかった。それを、思い出した時はっとした。今日は弟の命日だ。性別なんて関係がない。僕は履歴書の性別欄の部分の男性、女性の真ん中にマルを付けた。

ショートショートnote杯

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