不思議な本の物語
不思議な本があった。本にはその人の人生が書かれているらしい。
ある人がそれを読み進めた。生活はいつもどおり。
来る日も来る日もその本を読み続けた。内容は……よく覚えてないらしい。
ただ、不思議に惹かれるものがあり読み進めた。その人は死んだ。思うに、そんな人生だったのだろう。
本は別の人の手にわたり続けた。ある時は若者だった。
斬新なデザインをするアーティストだった。彼は本を見てまず考えた。
表紙を変えようと。黒のシックな表紙じゃあ、気分も暗くなる。
数刻考えて一日作業した。本の表紙は斬新になった。
満足した若者は本など忘れて死んでいった。形だけの、人生だった
私が手に取ったとき、本は白紙だった。悔しくて破いたが、本のページはきりがない。
厚みと頁はあまり関係がない。まるで魔法みたいだ。なんともいえない気持ちになった。
私の人生の有様に。ある日ふとメモ帳程度には使えるんじゃないかと思い持ち歩いた。
過去を振り返り思う。要点だけの人生だった、と
所有者の全てが書いてある本の話。あるときその本は哲学者の手にわたった。
その本を見て、哲学者は笑った。「私とはなんだ」本にはそう書いてあった。
後に彼はこう書き綴り死んでいった。「君とは私だよ」
本の存在が忘れ去られた頃、本は地面に寝ていた。沢山の生を見続けた本は、
疲れたと言わんばかりに寝た。そしてその本は――。最後の所有者に敬意。地は、安らぎを与えた。
私は一つ、嘘をついた。私の手にわたったとき本には沢山の生が書かれていた。
この話をフィクションにするため私は自分をキャラクターにしたてた。
私は小説家。本の最後の所有者にして本であり、要点である。
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