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時は流れて現在の私 13

愛媛県松山市の生活の続きです。庭のポプラの木にロケット花火したこと、有名な道後温泉に入ったこと、新しい自転車で川の上流に行ってみたこと、ホテル奥道後が憧れのホテルだったこと、そのジャングル風呂が楽しかったこと、などなどです。

松山市の住居、と言っても官舎という借りている住居で、和洋折衷の不思議な雰囲気の家。トトロに出てくるサツキとメイが引っ越してきたあの家に、そっくりな家でした。ご丁寧に、庭に張り出した腐り落ちそうな木の柱までそっくりでした。昭和40年代ってああいう家、はやってたみたいですね。

庭もありました。さほど大きな庭ではなかったはずですが、10歳の私には大きな庭のように思えました。庭に大きなポプラの木がありました。ポプラの頂上は大量の葉がこんもりと茂った部分があり、絵になる美しさでしたが、1点だけ困ったことがありました。

それは暖かい季節には、その場所に鳥さんが大勢住みつき、夜のねぐらなのでしょうか、暗くなると鳴き声のピーピーがうるさいんです。それはもう、本当に、絶え間なくピーピーです。私はこのうるさい状態を解消しようと、一計を案じました。一計と言っても子供の考えることです。

ましてや、オモチャの望遠鏡と懐中電灯で光線銃ができると思っていた程度の子供である私の考えることです。上手くいくはずもありませんが、とにかく一計を案じました。この鳥たちをポプラから追い払おうとしました。どうせ私の事ですから、ろくな考えではありません(笑)

ロケット花火です(笑)。何を考えたかというと、ポプラの茂みに向かって、そのロケット花火を発射し(以後ロケットと呼称(笑))茂みの中で破裂させれば、鳥たちは驚いて逃げていくのではないかと考えました。今だったら、鳥たちにそんな可哀そうなことできませんが、当時はまだ子供でした。

とにかく鳥たちがうるさくてたまらなかったんです。ロケットを用意しました。夜になりました。いよいよ攻撃準備です(笑)。何を発射台にしたかは覚えていません。とにかく安定して狙いをつける方法を考案し、そして点火しました。ロケットは勢いよく飛び出し、確かに茂みには入りました。

ところがロケットはそのまま茂みを貫通して空高く飛び上がり、はるか上空で破裂しました。鳥たちは何ら気づく様子もなく、平然とピーピーしていました。次弾を装填し発射しました。今度もロケットは貫通して高く飛び上がり、鳥たちのピーピーには、影響がありません。

頭に来ました。まだロケットはあります。更に次弾を打ち込みました。すると今度は、ロケットは茂みへの狙いを大きく外れ、別の方角へ飛んでいき、遥か遠くで破裂しました。鳥たちは平然とピーピー。これを何度も何度も繰り返しました。そもそもロケット花火なんてまっすぐ飛びはしないのです。

それを繰り返しただけで終わってしまいました。私はこの攻撃に効果がないことを確認し、あきらめたのでした。そしてそれ以後、ポプラの茂みにロケットを放つことをしませんでした。私と鳥たちの攻防はこうして鳥たちの勝利、というか鳥たちに全く相手にされない状態で、終わってしまいました。

実はロケット花火には、大変楽しい思い出があります。もともと花火は好きです。とにかく美しいです。燃え尽きると消えてなくなってしまうのが、なんとも切ないです。全種類大好きです。すべての花火に、それぞれの美しさと風情があり、花火職人の心意気を感じます。

中でも異色の魅力を放っているのがロケット花火です。勢いよく飛んで行きますが、炎を噴射しながら、ではなく、よく見ると吹いているのは煙です。中には火花を散らしながら噴射するロケットもありますが、ロケット本体を前進させている噴射の主成分は煙です。噴射の威力は凄いです。

物凄いスピードで空を駆け上がります。竹ひごが付いているのは、安定棒、所謂スタビライザーです。これがないと、まっすぐに飛ばないんです。凧揚げの凧の尻尾と同じです。あれもスタビライザー、安定器です。時代が新しくなると、笛のような音を鳴らしながら飛ぶようになりました。

だから点火すると、ヒューーッ!と鳴きながら空を駆け上がり、最後にパンッ!という音がして上昇終了となります。あの破裂音、よく聞こえますが、落ちてきたロケットを拾ってよく見ると、確かに破裂してはいるんですが、破裂の規模は小さく、当たったからと言ってさほどの破壊力はありません。

まあ子供が遊ぶものですから、最後のパンッ! にあまり大きな破壊力を持たせるのも危ないでしょう。安全のためにあまり破壊力を持たせないようにしていると思われます。でも、自力で遠くまで飛んで行って最後に破裂するという物体が、だれでも買える店で売られている事に、私は大興奮でした。

まるでミサイルじゃないですか!いや、最も近いのは、ロケット弾ですね。ロケット弾は無誘導で、一応まっすぐに飛ぶようには設計されているんですが、実際に発射すると、狙撃銃の弾丸のようには、まっすぐ飛びません。そして標的に命中すると爆裂するんです。命中しないと爆裂しません。

まっすぐ飛ばなかったり、爆裂しなかったり、そこが可愛いぢゃないですか!ベトナム戦争とかのフィルムを見ると、ロケット弾大活躍です。でも、大量に、本当に一度に大量に発射するのに、なかなか当たらないのが、そのフィルムからもわかります。可愛いです。そこが可愛いんです(愛)!

そこ行くと、ミサイルは可愛くないです(笑)。あれ、必ず当たるように作られているんです。だから、ロケット弾と違い、ミサイルの発射って、ほとんどの場合1発、もしくは2発です。大量発射なんてミサイルには必要ないんです。そしてほぼ必ず命中します。ああ、可愛くないです。

最近ではミサイルも、いくら誘導されてるからって、必ずしも命中するわけではありません。ミサイルを回避する方法が発達してきたからです。ミサイルは、自分に向かって飛んで来たら、まずは助かりません。だからミサイルを回避する側は必死ですよ。チャフをふりまいたりフレアをふりまいたり、

電波誘導ミサイルだったら、ジャミングと言って妨害電波を出して、当たらないようにするんです。すると今度は、ミサイルの側も工夫し始めて、当たらなくても近くを通っただけで爆裂するやつ、近接信管てやつですね。とか、近くに磁器を感じたら爆裂する磁気信管とかを付けるんです。

するとパイロットの腕で直前回避できたはずのミサイルも、近くで爆裂するもんだから無傷ってわけにはいかなくなります。鼬ごっこですね。あ、ロケット花火からミサイルの話になっちゃって、止まらなくなっちゃいました。すみません、ごめんなさい。ミサイルの話はあと一つで終わりにします。

この一つだけは話させてください!ミサイルの弾頭、つまり先っちょですね。に、何が詰まっているかというと、爆薬です。ミサイル本体の大部分は、推進のための燃料入れでして、先っちょのほんの小さい部分にしか爆薬は積んでないんです。その爆薬だけで相手を破壊しなきゃならないんです。

今はどんな爆薬が主流なのかは知りません。ひと昔、20年ほど前までは、オクトーゲンという爆薬が主流だったようです。小さな容積で、相手の戦闘機や、爆撃機や、場合によっては駆逐艦や空母までを破壊しなきゃならないので、その爆発力(爆速という単位で表現します)は絶大です。

ノーベル賞って知ってますよね。あれは、ノーベルという人がダイナマイトという製品を開発し、それがめっちゃ売れて、ノーベルは大金持ちになったんです。ノーベル賞は、ダイナマイトで大金持ちになったノーベルが、何か人々のためにお金を使いたいと言って始まったものです。

ダイナマイトは爆薬です。ごく大雑把に言うと、ダイナマイトの中にはTNT火薬っていう火薬が詰まっています。トリニトロトルエンというやつです。この。このTNT火薬は、それが開発される以前の爆薬である、ニトログリセリンを珪藻土にしみこませて、扱いやすくしたものです。

それまでの爆薬、ニトログリセリンは、液状の爆薬で、化学的に非常に不安定な物質で、僅かな衝撃で爆発してしまう、大変取り扱い辛い爆薬でした。それがダイナマイトの発明によって、扱いやすくなったものだから、世界中にすぐに普及したんです。このTNT火薬は扱いやすい有名な爆薬ですが、

ミサイルの弾頭はほんの少しの量で相手を破壊しなきゃならないので、このTNT火薬でも威力が不足しているんです。そこで強力な爆薬が開発されて、これがオクトーゲンです。爆速なんとTNT火薬の40倍です(!)そんなものが、どこまでも追いかけてくるんです。そりゃあ怖いです。

だからミサイルに追いかけられたら、まず助からないんです。すみません、長々と。ごめんなさいの絵文字とか書きたいですね(笑)。ロケット花火、ロケット弾、ミサイル、ダイナマイト、爆薬、オクトーゲン、と、お話が広がってしまいました。すみません、私、そういう分野、大好きなんです。

今度こそ、ちゃんとお話を戻します。実はロケット花火には、大変楽しい思い出があります。次回の14では、そのお話から始めたいと思います。では、おたのしみに。

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