警告!この記事を読んではいけない51「銃」について18<魚雷について>
魚雷の構造2
前回の記事で、魚雷の構造をお話しした途端、少々脱線してしまいましたので、今回はちゃんと(笑)、魚雷の構造をきちんとお話ししたいと思います。
魚雷の構造を、うんと判りやすく言うと、先端、つまり前方の端っこから、炸薬、燃料、発動機(エンジン)、スクリュー、の4つになりましょうか。この4つが、魚雷の外殻である細長いケースというか、円筒形の本体に順に収まっている訳です。
魚雷の概念を、最初から言いますと、魚雷とは、水中から発射して水中で爆発する銃の弾丸、という事になります。水中に隠れる事のできる潜水艦は、隠密性では申し分ない場所に居ます。移動もできます。水上艦が2次元航行しかできないのに対して、潜水艦は3次元航行ができ、隠密性は他のどの船より優れています。
戦闘艦艇ですから、敵をやっつけなければいけません。しかし水中に隠れたまま敵をやっつけるのは、難しい技術が要ります。普通の銃や砲は、水中では発射できないからです。いや発射できないというより、発射しても水圧で運動エネルギーが奪われてしまい、すぐに止まって沈んでしまうからです。
そこで、水中で撃つ銃は、発射される弾丸自体に推進力を持たせる必要があります。弾丸の中に発動機を内蔵するんです。いろいろな発動機がありますが、主流は水上艦艇と同じ、普通のエンジン、内燃機関です。そんなものを弾丸本体内に内蔵するので、当然、弾丸のサイズは大きくなります。
発動機だけではなく、それを回すための燃料、そして、燃料を燃やすための酸化剤、つまり酸素が必要になります。そして弾丸本体の後ろの端っこに、スクリューを取り付け、これを回して推進力を得るのです。ちなみに、スクリューを回すと回転ヨーが発生するので、これを打ち消すため、多くの魚雷のスクリューは、2重反転スクリューです。
こうして自力で推進する(航走と言います)力を得た弾丸に、更に先端に、強力な爆薬(炸薬と言います)を詰めるんです。こうして、先端から後端に向け、炸薬、燃料、酸化剤、発動機、スクリューが順に並んで、ようやく「水中で発射できる弾丸」が完成するのです。これが魚雷です。
魚雷は、上記の中身を全部入れるため、直径も多くが53センチと、巨大な直径です。そして長さも、どんなに短くても3mくらい、平均的な長魚雷は、5~7mくらいはあるでしょうか。銃の弾丸としては極めて巨大です。重さも半端な重さではありません。
こんなに大きくて重い魚雷です。潜水艦自体も大きいですが、水上艦の砲弾と比べると、あまりに巨大な代物です。つまり、無制限にたくさん潜水艦に積めるものではないという事です。こんな魚雷が、潜水艦の中には所狭しとたくさん並んでいるんです。
魚雷の航走方法
前述の通り、主にエンジンを回し、その回転力をスクリューに伝えて航走する魚雷ですが、エンジンを回すには問題があります。水上艦や地上走行車のエンジンは、空気を吸って、その空気の中の酸素を燃料を混ぜて燃やして、推進力を得ます。水中での魚雷も基本は同じなのですが、
魚雷の外殻という小さなスペースに、可能な限りの燃料と酸化剤(通常は空気)を詰め込み、それを燃やして推進力を得ますが、少しでも燃焼効率を上げるためには、酸化剤が空気ではなく、純粋な酸素であれば、燃焼効率は上がり、出力も上がります。なので各国とも、空気でなく純粋な酸素で燃料を燃やす方法を開発しようとしました。
ところがそれが、上手く出来ませんでした。純粋な酸素で燃料を燃やそうとするとすぐにエンジン自体が爆発してしまうんです。この問題を最初に解決した国は日本でした。日本の技術者は、最初に空気でエンジンを燃焼させ、その後徐々に、純粋酸素に置き換えるという方法で、エンジンが爆発しない酸素燃焼の方法を開発したのでした。
これが世界的に有名な、日本の「九五式酸素魚雷」です。この魚雷は速度も速く、純粋酸素で燃料を燃やす、という事は、排出ガスの中に窒素が混ざらない、という事です。これにより、雷跡、つまり魚雷が航走する時、魚雷の後方に見える白い泡の線が見えにくいと長所も併せ持っていました。雷跡が見えると、敵から発見されやすくなります。酸素魚雷は見えにくいんです。なので発見しにくくなるんです。
魚雷の速度が速いという事は、射程が長いという事です。遠くの敵をやっつける事ができるんです。このように優秀な魚雷を持ち、更に潜水空母と言われるように、水上攻撃機まで内蔵できる程巨大な潜水艦を、日本はたくさん持っていたんです。第2次大戦当初は、日本はすさまじい戦闘力を持っていたんです。
高速空母艦隊で真珠湾を攻撃し、大戦果を挙げ、その後も最初の半年くらいは破竹の勢いで、南方海域を席巻していたんです。水上艦も大型戦艦や大型空母を持っていましたし、空母艦載機に至っては、主力は所謂ゼロ戦です。零式艦上戦闘機、初期は21型という大変バランスの取れた戦闘機でした。
当時は世界最高性能、20ミリ機関砲を標準装備した、速度も旋回力も上昇力も武装も、どの戦闘機にも負けない傑作機でした。そして水中でも、イ号潜水艦という巨大で速力も早く、武装も酸素魚雷という世界最高性能の魚雷を装備した潜水艦隊がいたんです。
これだけの軍備があれば、戦争しても勝てるような気がしたんでしょうね。でも世の中、そうそう甘くなかったわけです。
すみません💦、また少々脱線してしまいました💦今日は、ここまでにします。魚雷の基本構造は、お話ししましたので、次回は弾頭の炸薬についてと、最新魚雷の誘導方法について、あと、潜水艦からの発射方法について、お話ししたいと思います。