宮古島配備の地対艦ミサイル部隊は「幽霊部隊」か?―なぜ、このミサイル部隊は駐屯地に看板を掲げないのか!
明らかになった自衛隊の弾薬庫の危険性
8月28日、河野防衛大臣は、驚くべき発表を行った。それによると、「(自衛隊の)全国の火薬庫1401棟について一斉点検」を行ったが、その結果、陸自伊丹駐屯地(兵庫県)など41棟で、周辺の住宅や公園などから必要な保安距離が確保されておらず、19棟で法令違反が発覚し、弾薬量を減らすなどの是正措置を検討していると。
これは非常に深刻な事態だ。軍用弾薬庫が「保安距離」という、住民の基本的な安全原則を無視したところで建設され、運用が行われていたのだ。しかも、多数の弾薬庫が火薬取締法の法令違反を行っていたのだ(保安距離については「軍事ジャーナリスト・小西 誠が暴く南西シフト態勢(part2・宮古島編)参照 https://www.youtube.com/watch?v=KzVQZZq06Lo&t=107s)
これはまた、私たちが、宮古島・石垣島などのミサイル弾薬庫の危険性を、通産省(火薬取締法)・自衛隊の法令、教範などを示しながら、徹底して追及してきた結果でもある。現地での防衛省説明会はもとより、防衛省・通産省との政府交渉においても、たびたびこの危険性追及してきた。この状況の中で、ようやく弾薬庫の危険性について自衛隊内部から疑問の声が上がりはじめ、調査が行われたということだろう。
この自衛隊弾薬庫、特にミサイル弾薬庫の危険性については当該住民はもとより、メディアもまた徹底して追及すべきである。全国の自衛隊の弾薬庫は、都市化の中、住宅地に近接して設置されており、この爆発事故は、地域住民にとって取り返しがつかない事態を生じる恐れがある。とりわけ、只今現在、建設中の宮古島・保良ミサイル弾薬庫、石垣島ミサイル弾薬庫については、住宅地に近接したその危険性の説明と中止を求めて、防衛省を徹底的に糺すべきときにきているといわねばならない!
「編成完結式」を行いながら、看板(表札)がない、宮古島の地対艦ミサイル部隊!
この宮古島などへ配備されつつある陸自ミサイル部隊は、ミサイル弾薬庫の危険性の問題を始めとして、防衛省のウソ、欺瞞によって当初から強引に基地建設が進められてきた。
この中で筆者は、もう一つの重大な問題を指摘しなければならない。それは、宮古島配備の地対艦ミサイル部隊がメディアなどで「編成発表」を行いながら、その部隊の存在が看板上(表札)、すなわち「現住所」が隠された「幽霊部隊」であるということだ。実際に見てみよう。
写真は、宮古駐屯地の正門だ。向かって右に「宮古駐屯地」の看板が、左には「宮古警備隊・第7高射特科群(地対空ミサイル部隊)」の看板が掲げられている。ご覧の通り、今年の4月5日、同日編成完結式が行われた地対空ミサイル部隊の看板はあるが、地対艦ミサイル部隊(第5ミサイル連隊第302ミサイル中隊)の看板がどこにもない。ところが、当日の報道はもちろん、自衛隊の部内紙にも、この地対艦ミサイル部隊の配備ー新編成は、発表されている。
いわば、配備が公然と報道されているのに、「看板・表札のない部隊」「幽霊部隊」となっているのだ。これを1年前に配備された奄美大島の地対艦ミサイル部隊と比較してみよう。
奄美瀬戸内分屯地の地対艦ミサイル部隊(Hiraku Kamishima氏撮影)
このとおり、奄美瀬戸内分屯地に配備された地対艦ミサイル部隊には、しっかりと看板がかかっているのだ。
陸自の他の地対艦ミサイル部隊は、どうだろう。例えば、奄美・宮古島の上級部隊である西部方面隊総監部にはー、「第5地対艦ミサイル連隊」と。
また、北海道の第1地対艦ミサイル連隊(北千歳)にはー。
つまり、地対艦ミサイル部隊を含む、自衛隊の基幹部隊のすべては、所在地が示されており、看板・表札が掲げられている。当然である。看板がない、表札がない部隊は、その所在が秘密とされるからだ。
では、宮古島配備の地対艦ミサイル部隊は、秘密部隊なのか? 対中国との関係上、所在を曖昧にしておきたいのか? そうであるなら奄美配備部隊もそのようになる。しかし、「編成完結式」を公然と行い、報道発表まで行って秘密部隊はないだろう。では何故、看板を掲げないのか?
その理由を筆者は、宮古島配備の地対艦ミサイル部隊ー第302地対艦ミサイル中隊は、「宮古駐屯地の常駐部隊」ではなく、移動予定の部隊、つまり、宮古島・保良地区のミサイル弾薬庫完成とともに、「保良基地」に配備される部隊であると推測する。
この理由を「note」https://note.com/makoto03/n/nd67173c1f202 にも詳しく書いたので参照されたい。つまり、結論はこういうことである。
結論から言えば、宮古島・保良ミサイル弾薬庫は、地対艦ミサイル部隊の基地として、「宮古駐屯地・保良分屯地」として、第302地対艦ミサイル中隊「専用のミサイル基地」として造られる、ということだ。
奄美では、奄美大島北部の大熊地区に地対空ミサイル部隊が配備され、奄美大島南部の瀬戸内地区に地対艦ミサイル部隊が配備された。このように、作戦運用の異なる地対艦・地対空ミサイル部隊が、同一の基地に配備されるということは、全国のミサイル部隊でもあり得ないことなのである。
このことが事実とすれば、これは重大な住民への背信行為である。防衛省は、宮古島市民には、千代田地区に地対艦・地対空ミサイル部隊配備を説明し、保良・七股地区住民には、保良地区には「弾薬庫・射撃場・訓練場」などを造ると説明してきた。保良地区へ「地対艦ミサイル基地」を造るとは、一言も説明していないのだ。
防衛省・自衛隊の住民無視、国民無視は、例のイージス・アショア問題をはじめ、この間の弾薬庫の保安距離の問題など、デタラメばかりだ。これが、宮古島・石垣島などのミサイル基地建設問題でも頻繁に行われている。この横暴を私達は暴き、食い止めねばならない。
コロナ禍でも、南西諸島でのミサイル基地建設は急ピッチで続けられており、現地の市民・住民たちは、必死になってこの工事を食い止めようとしている。これに連帯する、戦争反対ー南西諸島の要塞化反対のうねりを、今直ちに全国につくりださねばならない。
安倍政権後でも自公民政権が続く限り、この南西シフト態勢は変わらない。今求められているのは、中国を含む東アジアの平和外交―軍縮を推し進める政権である。
そして、この間の防衛省・自衛隊の軍事・防衛政策の大変更―イージス・アショア中止、自衛隊弾薬庫の総点検など―を創りだしたのは、現地住民の、根源的な、粘り強いたたかいと、それと連動した平和的世論の形成である。これらをさらに的確に推し進めていくならば、強靱に見える自衛隊の南西シフト態勢―南西諸島へのミサイル部隊配備も、必ず破綻を引き起こすことができる。
今や傲慢にも、日米の軍隊は、南西諸島を自衛隊のミサイル部隊のみか、米海兵隊・米陸軍のミサイル部隊で埋め尽すという戦略を打ち出しつつある。この激しい対中軍拡競争の危機を見据え、その危機の認識を共有し、東アジアの軍縮ー平和への道を創りだすときがきているのだ(参照note「米軍の最新戦略「海洋プレッシャー戦略」の全訳――日米軍の南西シフト=新たな「海洋限定戦争」態勢を提示」 https://note.com/makoto03/n/ne20995cdea40)。
上は保良弾薬庫建設工事を阻むために、連日阻止行動を続ける保良住民。下は、保良住宅地の側で
工事が始まったミサイル弾薬庫
(注 宮古島配備の地対艦ミサイル部隊は、本年4月5日に編成完結式を行ったとされている。本来、編成完結式とは、自衛隊法に基づき特別部隊を編成した場合、部隊の編成命令を受け、編成を終えたことを防衛大臣らに報告する式である。式を終えた時点で、部隊に任務が付与される。国連平和維持活動(PKO)協力法に基づき海外派兵するときや、訓練で複数の部隊を派遣するとき、災害派遣のときなどに行われる。)
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現在、日米軍隊による南西諸島全域へのミサイル基地建設造りが急ピッチで進んでいるが、これを報道するメディアがほとんどない。この全容を現地取材…
私は現地取材を重視し、この間、与那国島から石垣島・宮古島・沖縄島・奄美大島・種子島ー南西諸島の島々を駆け巡っています。この現地取材にぜひご協力をお願いします!