メディアが隠蔽した奄美大島の巨大ミサイル基地!
宮古島の5倍、石垣島の2・2倍という巨大基地に変貌した陸自奄美駐屯地! (本文は2019年04月04日、筆者がブログに投稿した記事) 2019年3月26日に編成され、3月31日に開設記念式典を行った奄美駐屯地・奄美瀬戸内分屯地という2つの基地。政府・自衛隊は、防衛副大臣、陸幕長以下の西部方面隊幹部50人を引き連れて記念行事を行い、報道陣に初めて、基地の全容を公開した。編成され配備された部隊にも驚くが、もっと重大な事態は、この公開された基地のとてつもない巨大さだ。 (奄美駐屯地[大熊地区])
この奄美駐屯地(大熊地区)の敷地面積50万4674㎡(50.5㏊)、瀬戸内分屯地(瀬戸内町節子地区)の面積48万279㎡(48㏊)という、初めて公表された基地……この大きさは、宮古島駐屯地(千代田地区、22㏊)の5倍、石垣島に予定する駐屯地(46㏊)の2.2倍という面積、福岡ヤフオクドームの7.3個分、6.9個分という大きさだ。
問題は、この巨大な基地の面積は、この日、初めて報道陣に公開されたということであり、地元の防衛省説明会でもこれまで一切、提示しなかったということだ。かろうじて、鹿児島建設新聞が、この敷地面積を公開していたのだが、この建設業界にさえ、自衛隊はウソをついていたか、建設業界と自衛隊ぐるみで隠蔽を図ったということだ。 (奄美・瀬戸内分屯地、下が瀬戸内分屯地A地区、上が瀬戸内分屯地B地区[弾薬庫地区])
下記の資料に、2017年の工事開始時の建設業界の発表記事があるが、ここには、奄美駐屯地30㏊、瀬戸内町節子地区28㏊と、はっきり明記されている。要するに、建設業界には、それぞれ半分ほどの敷地面積が公表されたということだ。
宮古島でも、石垣島でも、与那国島でも、防衛省はあらかじめ基地の敷地面積を公表していた。当然である。だが、このようにウソまでついて、この巨大基地建設を隠していた意図は何か?
その内容を結論から言うならば、この奄美大島の基地が、南西シフト態勢下の巨大な「兵站基地」であり、「機動展開拠点」であることを、奄美市民はもとより、メディアからも、国民からも隠しておきたかったということである。
全てのマスメディアが、3月26日に奄美駐屯地が開設されるまで、一切の報道について沈黙を守ったことがその証拠である。この日まで、在「本土」マスメディアは、1分・1行たりとも、鹿児島のマスコミを含めて、この奄美大島の基地建設について、報道しなかったのだ。貝のように沈黙し続けたのだ(変節した朝日新聞が、奄美大島の基地建設について沈黙し、完全報道規制しているだけでなく、マスコミでは唯一ジャーナリズム精神を発揮している東京新聞でさえ、奄美基地については完全に報道規制しているという、とんでもない、恐るべき状況が現れている)。
自衛隊情報保全隊(調査隊)が編成配備された奄美駐屯地
この日、メディアに発表された資料によれば、奄美駐屯地には、警務隊とともに、自衛隊情報保全隊が配備された(上図のB庁舎の配置図参照)。この悪名高い自衛隊情報保全隊とは、自衛隊の対住民情報機関(スパイ)で、かつて調査隊と呼ばれた組織だ。反戦集会などに潜入し、市民・住民の動向調査をするスパイ組織で、今まで多くの反戦集会などで隊員が摘発され、告発された。近い所では、イラク反戦への住民動向調査で、市民多数から裁判所に訴えられ、裁判でそのスパイ活動について認定、賠償されられたこともある(2016年高裁判決確定 https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG16HG1_W6A210C1000000/)。
問題は、なぜ、わずか300人という規模の部隊に自衛隊情報保全隊が配備されたのか、ということだ。本来、自衛隊情報保全隊は、陸自でも方面隊規模の部隊配置である。この理由は、与那国駐屯地配備の自衛隊情報保全隊と同様である(情報公開文書参照)。
つまり、先島―南西諸島配備は、住民の強烈な反対の中での配備であり、今後もこの反対運動の広がりは予想される、したがって、絶えず住民の動向調査が自衛隊にとって必要不可欠と判断したということである(したがって、宮古島駐屯地の自衛隊についても、間違いなくこの情報保全隊は配備されている!)。
ちなみに、陸自が「島嶼戦争」で予定する、対ゲリラ・コマンドウ作戦では、住民の動向調査が、大きな作戦となっている(陸自教範『対ゲリラ・コマンドウ作戦』)。
南西シフト態勢下の重大な兵站拠点、機動展開拠点に位置付けられた奄美大島基地
さて、奄美駐屯地50.5㏊、瀬戸内分屯地48㏊という巨大基地の出現は、自衛隊の南西シフト態勢にどのような意味をもつのか?
結論すれば、奄美大島(種子島ー馬毛島)が、先島―南西諸島における「島嶼戦争」=海洋限定戦争の、一大兵站基地・機動展開拠点として、位置付けられていた、ということである。上図の拙著『自衛隊の南西シフト』所収の情報公開文書は、「薩南諸島」(種子島から沖永良部島)の軍事的位置付けが明記されている。
すなわち、薩南諸島は、「南西地域における事態生起時の重要な後方支援拠点」であり、「奄美大島の名瀬港は海自輸送上の重要な中継拠点」、「空自通信の南西地域の航空作戦の基盤」であり、「薩南諸島は、陸自ヘリ運用上の中継拠点」である、ということだ。
つまり、南西シフト態勢下の、兵站拠点、機動展開拠点であるが、言い換えれば奄美大島は、「海上兵站」拠点、種子島(馬毛島)は、「航空兵站」拠点だということだ。
瀬戸内分屯地の巨大弾薬庫!
この実態を図示しよう。この文書は、地元住民が情報公開で提出させた文書である。
図は、瀬戸内町節子地区の瀬戸内分屯地のB地区の図と配備表である。この中には、「貯蔵庫A×5棟」、「各1000㎡」というものが明記されている。これこそ、ミサイル部隊の弾薬庫である。別の図には、そのB地区の地下に予定される5本のトンネル上のミサイル弾薬庫が図示されている。
この5本の貯蔵庫には、おそらく、数百発のミサイル弾体の保管が予定されている。つまり、先島―南西諸島で、有事に使用するミサイル部隊の弾体すべての保管が予定され、この地域から、先島―南西諸島への兵站・弾薬供給が行われるということだ(下記の図は情報公開文書)。
ところで、3月31日に報道陣に公表された、この「火薬庫」は、南海日日新聞によると、「30万6551㎡が大型ミサイルの弾薬や小銃などを保管する火薬庫。完成は来年度以降となるものの、現在配備された装備品の弾薬はすでに配備が完了している」(4月1日付同紙、宮古島で問題となった、「中距離多目的誘導弾(ミサイル)弾体」も!)ということだ。
私は現地取材を重視し、この間、与那国島から石垣島・宮古島・沖縄島・奄美大島・種子島ー南西諸島の島々を駆け巡っています。この現地取材にぜひご協力をお願いします!