●嬉々として「台湾有事」を煽る「戦争屋ども」はともかく、メディアでも「識者」なるものたちが、煽る「台湾有事」キャンペーン!
小西 誠
「台湾有事」キャンペーンに与しない!
その中でも、共同通信客員論説委員・岡田充さん、元アエラ副編集長の田岡俊次さんなど、少なからず方々がこのキャンペーンに与せず、対峙しているが、ここでは、異色の人物を紹介する。
・軍事アナリスト・小川和久氏
……南西シフトの推進者であり、かなり前から自民党の防衛費2倍化を主張していた人物だが、軍事的に「中国軍の台湾侵攻不可能論」を説く。
https://www.youtube.com/watch?v=yYweDl0ZgQA
・海上自衛隊呉地方総監を務めた伊藤俊幸元海将
――米中の中距離ミサイルギャップという虚構をも暴く
https://mainichi.jp/.../20210731/pol/00m/010/003000c...
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●そして、拙著『ミサイル攻撃基地と化す琉球列島―日米共同作戦下の南西シフト』では、「台湾有事」キャンペーンに真っ向から対峙する!
*同書・序論「試し読み」 https://tameshiyo.me/4907127282
*以下は同書「結語」の一部から引用
結 語 アジア太平洋の軍拡競争の停止へ
メディアの「台湾有事」キャンペーン
2021年3月の、米インド太平洋軍司令官(当時)・デービッドソン発言以来、性懲りもなく「台湾有事」キャンペーンが、連日のように繰り広げられている。デービッドソンの上官であるミリー統合参謀本部議長が、その発言を修正して以降も、この発言は一人歩きしている。というか、「台湾有事」――戦争を待望する戦争屋どもが、わが国にはゴロゴロしているということだ。
例えば、退官後も自衛隊の南西シフトを強力に推進する、元西部方面隊総監・用田和仁などは、「今年以内に台湾有事で衝突が起こる、来年は本格的戦争になる」と、ネットメディアに嬉々として書いている。こういう軍事評論家だけではない。中国通と称する評論家らも同様。始末に負えないのは、本来、こういう問題では検証した報道をすべきメディアが、全く何の検証もせずに「台湾有事」論に与していることだ。
この「台湾有事」キャンペーンの意図・目的については、本論で繰り返し検証してきた。結論からいうと、第1列島線防御態勢の完結のために、台湾を日米の南西シフトに組み込むことであり、台湾とフィリピンの間の、ルソン海峡の封鎖態勢づくりである。
それにしても、「台湾有事」論者というのは、現実認識、歴史認識の全てが根本から欠落している。本論でも触れてきたので繰り返しはしたくないが、例えば、中国の原油はその90%がマラッカ海峡を通過しなければならない。つまり、「世界の工場」である中国自体が、「海洋の平和」なしに、国の存立さえできないのだ。
歴史認識と言えば、これらの「台湾有事論」は、中国軍の台湾侵攻が前提となっているが、こうした世界貿易で成り立っている中国が、中国を含む世界経済の崩壊に直結する「台湾侵攻」の暴挙を行うと主張するというのは、完全に思考力が停止している。おそらく、新型コロナ禍で世界中がパニックになっているが、そのパニックに日本中のメディア、知識人なども汚染されてしまったのではないか。
例えば、中国の「還球時報」の胡錫進編集長は、「台湾への武力行使は米国との全面的な武力衝突を覚悟しなければならず、『直面するリスクと挑戦に冷静に対処すべき』」として、武力統一論を戒める文章を寄せたという(『虚構の新冷戦』東アジア共同体研究所 琉球・沖縄センター編、岡田充執筆論文)。
ここでは、逆説的に「武力統一」が可能な条件として「①中国軍が第1列島線周辺で圧倒的優勢に立ち、米軍が容認できないほどの代償を払うまでの実力を有すること。②中国の市場規模と経済競争力が米国を越え、米国や西側の経済制裁を無力化する実力を備える」という2条件を上げたという。
ここで重要なのは、「経済制裁を無力化する実力」というものが、果たして可能なのか、ということだ。統計数字から見てみよう。
日米中の経済的相互依存と戦争
2019年の日本の輸出先の第1位は、アメリカで19・8%、第2位は中国で19・1%、輸入の第1位は、中国で23・5%、第2位は、アメリカで11%である(財務省貿易統計)。また、2020年の日中の貿易総額を双方の輸入ベースで見ると、3402億ドルであり、日本の輸入貿易総量の25・7%が中国である(ジェトロ)。そして、2020年のアメリカの輸出先は、中国が8・7%、日本が4・5%で、輸入は中国が18・6%で、日本が5・1%である(米商務省統計)。
すなわち、日本の中国との貿易額は、すでに2009年にアメリカを抜いてトップに立っており、アメリカもまた現在、中国との貿易は、世界の中でトップを占めている。
このような中でバイデン政権は、トランプ政権の対中貿易政策を基本的に踏襲し、中国とのデカップリング(分離)を行いつつある。しかし、アメリカを始め、世界の国々に広がっている、中国に全面的に依存したサプライチェーン(供給連鎖)の再構築は、ほとんど不可能である。
貿易総額でもそうだが、さらに、アメリカの存立に関わる「米国債保有残高」についても、中国は、1兆961億ドルという世界最大の米国債を保有しており(2021年統計で、日本の1兆2767億ドルと並ぶ保有額)、仮に中国が米国債全ての売却を行えば、一挙にドル恐慌が爆発し、アメリカ経済の全面的崩壊、ひいては中国を含む世界経済の完全崩壊へと陥っていく。
私たちは、歴史の教訓を思い起こさねばならない。あの第2次世界大戦に突き進んだ根本には、世界経済の崩壊があったのである。29年恐慌から始まる世界経済危機は、1930年代には、その大不況を乗り切ろうとして世界各国の「経済ブロック化」を引き起こした。イギリスの「ポンド・ブロック」に始まり、アメリカの「ドル・ブロック」、日本の「円・ブロック」と。これらは、域外に対して差別的な高い関税を維持するなど、排他的な経済圏を形成したのである。つまり、「経済制裁を無力化」する以前に、「世界経済は分断」されてしまっていたのだ。
こうしてみると、「還球時報」の編集長が挙げた「中国の武力侵攻」の条件には、米中日などの「世界経済のブロック化」という、もう1つの重大な要件を付け加える必要がある。
このような、現実的、歴史的認識を検証することなしに、無責任に「台湾有事」を煽る政治屋、メディア、売文屋などの煽動については、厳しく批判しなければならない。
「朝鮮半島有事」を煽り、「国難突破選挙」とまで言い放って解散総選挙を行った安倍。「朝鮮からミサイル飛来」と言って、子どもたちに、防空頭巾を被させ、漫画的な避難訓練をさせた政府・自治体。イスラム勢力などからの「テロ襲撃」と言って、駅のホームのゴミ箱まで点検させた、メディアを含む「テロ脅威論」の煽動――いずれもその後、その煽動の責任、結果の責任を、誰もとらないうちに、うやむやにされたのだ。(以下略)
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現在、日米軍隊による南西諸島全域へのミサイル基地建設造りが急ピッチで進んでいるが、これを報道するメディアがほとんどない。この全容を現地取材…
私は現地取材を重視し、この間、与那国島から石垣島・宮古島・沖縄島・奄美大島・種子島ー南西諸島の島々を駆け巡っています。この現地取材にぜひご協力をお願いします!