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夢はなぜこのような感情をわたしに味わわせようとするのか

夢はなぜこのような感情をわたしに味わわせようとするのか


昨晩の夢
昔、ならず者の男がうちの近所に住んでいた
男が何の仕事をして生計を立てているのか
近所の誰も知らなかった
幼い息子と二人暮らしで
子供の母親がどうしているのかも
誰も知らなかった
 
男の子はそのころまだ五歳か六歳くらいだったが
男は怒鳴りつけたり
殴るふりをしたりした
以前男が仲間と思われる数人の男女と
酒を飲んで店から出て来て
「ついて来んな! 帰れ!」
と男の子に三角コーンを振り上げるのを見たこともあった
仲間の女はゲラゲラ笑い
男たちはいっしょになって殴る真似をしたりした
男の子は
泣きながら男たちの後をついて行った
 
今思えば
男が本当にその男の子に暴力を振るっているのを
少なくとも外では見たことがなかったし
時たまスーパーなどで
自分ではとても食べなさそうな
甘い菓子パンを買ったりしているのを
見かけたこともありはしたのだが
 
わたしは当時中学生くらいで
時々外で男の子を見かけたときに
なんとなく気になって
お菓子をあげたこともあった
そんな時男の子はおずおずと
でも嬉しそうに受け取ると走って行った
 
 
 
――夢によくある暗転――
 
 
 
今、わたしは五十歳くらいで
薄暗い部屋にいた
目の前の机の上には
一冊の古い電話帳がある
(昔は地域の家やお店などの電話番号が
すべて掲載された電話帳が
各家庭に配布されていた)
その電話帳をぱらっとめくると
 
 
 市外局番×××× △△ ― 4020
 
 
 あっ、この番号、どこかで……
 
 
わたしは当時あの男の子の家の電話番号を
なぜか知っていたのだ
そして電話帳に記されている名前は
あのならず者の父親のものだった
急に昔の記憶がぶわっと甦った
この家にもしかして
まだあの子も住んでいるのだろうか
だけどあの父親といっしょに暮しているとしたら
彼も真っ当な世界で生きているようには
とても思えないのだが……
 
それでもわたしは
懐かしさと好奇心を抑えることができなかった
この愚かな好奇心が
この先のわたしの人生を崩壊させる音さえ
わずかに聞こえる気がした
それなのに
わたしはその番号に電話をかけた
 
 
 トゥルルルル……
 トゥルルルル……
 
 
呼び出し音が鳴っていた
わたしは重い気分で目を覚ました
 


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