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人件費は適切ですか?        労働分配率を読み解いてみよう!

 新たな最低賃金が適用されて、まもなく1か月が経とうとしています。政府は2020年代に最低賃金を1500円に引き上げる方針を示しました。

この発表を受けて、日本商工会議所の小林健会頭は「急激な最低賃金の上昇は、中小企業の廃業を招く恐れがある」と慎重な意見を表明しました。

多くの社長が従業員に可能な限り給与を支払いたいと考える一方で、業績が追いつかない中小企業も少なくありません。

政策により賃金が上がることで事業が続けられないと感じる中小企業も存在します。

今回は、企業が適切な人件費を把握するための代表的な指標として代表的な指標である「労働分配率」について考えてみたいと思います。


1.労働分配率とは?

労働分配率は、企業が生み出す付加価値に占める人件費の割合を示す経営指標です。これは、企業が従業員にどれだけの価値を還元しているかを測るために重要です。

労働分配率の重要性

適正な労働分配率を維持することが大切です。高すぎる場合、経営資源が人件費に偏り、投資が難しくなることがあります。

一方で、低すぎる場合は、従業員のモチベーションが下がり、離職率が高くなる可能性があります。

2.労働分配率の計算方法

計算式

ここでは、中小企業白書でも使われている計算式をご紹介いたします。

労働分配率

労働分配率=人件費 ÷ 付加価値額
で求めます。

付加価値額

 付加価値額 = 人件費 + 支払利息等 + 動産・不動産賃借料 + 租税公課 + 営業純利益
で算出できます。

人件費

人件費 = 役員報酬+従業員給与+従業員賞与+福利厚生費(法定福利費・厚生費・福利施設負担額・退職金支払額等、給与以外で人件費とみなされるものの総額)
幅広く人件費と捉えられる経費の合計になります。

3.労働分配率の目安

産業別の労働分配率

労働分配率の推移を見ると、「医療・福祉業」「卸売・小売業」「サービス業」などで高い水準が続いている一方、「情報通信業」「製造業」では低めです。

2020年にはコロナ禍の影響で「運輸業・郵便業」「サービス業」「製造業」「卸売・小売業」などで大幅に上昇しましたが、2021年には「運輸業・郵便業」「サービス業」を除く多くの産業で感染拡大前の水準に戻りました。

労働分配率の適正な水準は、ビジネスモデルや業種によって異なります。労働集約的な業種では高めに設定される一方、そうでない業種では低めになります。

また、同じ製造業でも、最新設備を備えた大企業と中小企業とでは違いが出ます。そのため、「適正な労働分配率」を一概に数値で示すことは難しく、自社の業種や状況に応じた適切な水準を見極めることが重要です。

労働分配率の調整方法

労働分配率が同業他社より高い場合、労働生産性が低く、利益が減少して戦略的な投資余力が減る可能性があり、競争力が低下する恐れもあります。

生産性を高めることで労働分配率を適正化できます。業務フローの見直しやIT導入が効果的です。

一方、労働分配率が低いと労働生産性が高いことを示しますが、従業員にとっては給与が低く感じられ、不満につながる可能性もあるため、労働分配率は単に低くすれば良いわけではなく、バランスが重要です。

4. まとめ

企業にとっては適正な労働分配率を見極めることが重要です。

適正な労働分配率を保つためには、生産性を高め、適正な労働分配率を維持することが必要です。

業種やビジネスモデルに合わせて労働分配率のバランスをとることで、企業も従業員も共に成長できる基盤を作り、激しい市場環境に適応していくことが求められています。

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