わたしがわたしを好きになる旅

二十歳の春、わたしはニュージーランドの田舎町に来ていた。人生初の海外ひとり旅。

毎日毎日、天井とにらめっこしては意味なく泣いて情緒不安定だった頃。このままじゃいけない、と思い気分転換に出た大きな旅だった。

たった二週間のひとり旅。

その旅がいつまで経っても心の宝となる。

ある晴れた昼下がり、滞在していたファームの周りを何時間もあてもなくひとりで歩いた。

広がるのは青い空と緑。そして牧場の牛たちがひとりで歩いているわたしをいっせいに見つめる。

なんだかちょっぴりその光景がおかしくてひとりで笑ってしまった。

なんて時間がゆったりとしていてのどかなのだろう。

空と緑。ネオンもビルもないシンプルな自然の景色にこの世界はこんなにも美しかったのか、とハッとする。

生きているって素晴らしい。

大地も空もわたしも生きている。

こんなに輝いた世界で。

ひとり旅でわたしは自分を好きになった。

旅してくれてありがとう、と。

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