地平
地平線が遠い。遠く、遠く、知っている土地のはずなのに遥か遠くに霞んでいって一体向こう岸に何があるんだろうと希求する。美しい営みであれば良いのにと薄甘い夢をみる。人もそれくらい遠く、緩やかに分断されれば良いのに。あの人の使う言葉はあまりに鋭利でただ切り立ったコンクリートの厚い壁ように固く激しく分断する。
人工物は風化しても人が1人生涯を全うするよりもはるかに長くその存在意義を保ち続ける。赤茶けたフェンスや表面の剥がれた鉄筋は、どれだけ荒れ果ててもそこにあることで空間を分離する。無機質でも積み重ねた年月の痕とありつづけることへの羨ましさにわたしは美しさすら覚える。
こんな風に死ねれば良いのに。
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