際限のない欲
親の欲はまるでわんこそばのようだ
食べても食べても補充されるそばのように
ひとつ満たしたらまた次の欲が出てくる
しかもタイミングが絶妙だ
ヒーヒー言っているときではなく
それが過ぎて少し余力が生まれかけているときに次のお題が提示される
最初は「頼むから高卒資格だけはとってくれ」だった
それが済めば学校から離れられると思った
だから渋々従った
死ぬほど嫌だったけれど
これが終わればと
淡々と日々の業務をこなし
あと1年となったとき
「大学行くでしょ?」
と言われた
…えっ、………はぁ?
あの時「高卒資格とれればそれでいい」って
あなたそう言ったよね?
そう思ったけれど
逆らう理由もなかったから従った
予備校に通い始めた
勉強は好きだったらかわりと楽しかった
「目標がないと頑張れんタイプじゃろ?」
あなたの生きがいを見つけてあげたとでも言わんばかりの言いようだった
大学に入った
一人暮らしを始めた
もうこれでいいだろう
そう思った
同世代を拒絶していた
同世代以外の友達はたくさんいた
それで充分だった
「同世代とつながりを作りなさい」
一生の友達はそこからしか生まれないかのような物言いだった
3年目に入って同世代とも交流するようになった
それを伝えると安心したようだった
あるとき気づいた
ああ、これはいつまでたっても終わらんわ
だからといっていきなり拒絶することはできなかった
私は食べるふりをすることにした
食べなかったそばに申し訳ない気持ちになった
たまにやけになってちゃぶ台をひっくり返した
わんこそばはいまも続いている
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