肩甲胸郭関節の複雑な動き


外転時の4つの要素に注目


肩甲胸郭関節は、上肢を大きく動かす際に欠かせない関節です。特に、腕を横に挙げる「外転」運動では、肩甲骨が多様な軌跡を描きながら、肩甲上腕関節と協調してスムーズな動きを生み出します。肩甲骨が外転時に行う4つの主要な動きを分かりやすく紹介します。

1. 肩甲骨が外転時に示す4つの動き


1-1. 上方への挙上(約8~10cm)

• 肩甲骨が外転時に、前方へ移動せず真上に8~10cmほど上がる動き
• 上肢が横に挙がるほど、肩甲骨が肩甲胸郭面に沿って高く位置する

1-2. ソネットの動き(上方回旋)

• 腕を横へ挙げる(0~145°)過程で、肩甲骨が約38°まで直線的に回旋
• 外転120°を超えるあたりから、肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節の回旋角度がほぼ同じになる

1-3. 傾斜の動き(内転・外転、後傾・前傾)

• 肩甲骨の下端を前上方に引き起こし、上部を後下方へずらすような、斜め軸の動き
• 外転0~145°の中で、約23°の変化があると報告
• 「後ろにのけぞる」ように肩甲骨が少し後傾することで、上肢を上げやすくする

1-4. 垂直軸まわりの方向転換(回旋)

• 二相性の特徴があり、外転角度で前後の向きが変化
• 外転0~90°では、肩甲骨が約10°後方を向く
• 外転90°以降は、約6°前方を向く
• 最初の方向には戻らないという点が大きな特徴

2. 外転運動中の肩甲骨の複雑な転位


外転動作での肩甲骨は、挙上や回旋、方向転換などを組み合わせて動きます。
• 肩甲骨が上に持ち上がり(挙上)、正中線にやや近づくように移動
• 大結節が肩峰下を通る際には肩甲骨の回旋が重要な役割を果たす

これらの多面的な動きにより、腕を広範囲に動かせる可動域が確保され、円滑な外転が成立します。

3. まとめ

• 肩甲胸郭関節では、挙上・上方回旋・傾斜・方向転換という4つの動きが組み合わさっている
• これらが協調することで、上肢の外転運動をスムーズに行うためのスペースと安定性が確保される
• 肩甲骨の動きを理解することで、上肢が高い可動域を発揮する要因が明らかになる

肩甲胸郭関節の複雑な動きを知ることで、肩周囲の動作メカニズムをさらに深く理解できます。腕を上げる際にどのような変化が起こっているのかを捉えることは、スポーツパフォーマンスや日常生活の快適な動作にとって重要な視点となるでしょう。

著作者情報


山岸慎(やまぎし まこと)
パーソナルジム STUDIO KOMPAS渋谷店
東京都渋谷区南平台町13-11 南平台WEST地下102

ストレッチリラクゼーションサロン
ESL 都立大学 監修

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