「リニア中央新幹線静岡県内工事差止請求事件」
「リニア中央新幹線静岡県内工事差止請求事件」
は2020年10月30日提訴。
第1回口頭弁論は2021年1月15日 静岡地方裁判所にて。
ここでは「第4回口頭弁論」における原告 森信一氏の「意見陳述書」をご紹介します。森氏は静岡県リニア工事差止訴訟の会共同代表をされています。
森氏は大井川電源開発の歴史を以下のように陳述されました。 「電力会社によって水利権を独占されたために、大井川流域の自然や生態系は次第に変化するようになりました。1960年には塩郷ダムが完成しましたが、その下流では焼けつくような夏の河原砂漠と冬の砂嵐が、上流ではダムがせきとめた土砂で河床が上昇したことによる水害が増えました。また沿岸域では大井川から海へ流入する土砂が減少し海岸線の後退が続くなど、バラ色のダム建設から負の影響がでることがわかってきました。
1988年から89年にかけて、地元住民による「水かえせ」運動が繰り広げられました。」
森氏は“水かえせ”運動の際の住民の述懐を以下のように引用されています。 「大井川の川岸に一人立つと、南アルプスを源流とする豊かな流れは今はもうなく、砂煙を上げて行きかう砂利採取のダンプカーだけ。グミの花の甘酸っぱい香りに包まれて流れる大井川、日焼けした子どもたちの歓声がひびく夏、凍てつくような川面を流れる筏、濁流渦巻く増水時の大井川。少年時代、川とともに育った思い出が後から後から蘇ってくる。現在の子どもたちに話しても、到底理解してもらえないだろう。滔々と流れる大井川を川根に生きる次の世代の子どもたちに蘇らせてやるのが、私たちの責任ではないだろうか」
「リニア中央新幹線静岡県内工事差止請求事件」において、原告の適格性が問われるようです。裁判というプロセス、仕組みの中ではあり得ることです。しかしながら、関係官庁、管理企業に任せた大井川の現状が、既に重大なリスクや問題を露呈しています。流域住民がステークホルダー(自然への関与者、観察者、享受者)として関与して行くことが重要なのです。