教育・学びの未来を創造する教育長・校長プラットフォーム「2021年総会」レポート
<イベント詳細>
■日時:2021年6月13日(日)13:00~16:00
■参加地域:33都道府県
■話題提供者:
大分県玖珠町梶原敏明教育長
福井県福井市立至民中学校小林真由美校長
兵庫県尼崎市立下坂部小学校杉本浩美校長
岡山県早島町徳山順子教育長
岡山県浅口市立寄島小学校安田隆人校長
2020年は、コロナ禍の「今だからこそ現場みんなで」を掲げ、5度にわたりオンラインの「場」が開催されました。
2021年の総会では、改めて教育長・校長の可能性をテーマに掲げ、全国に犇く(ひしめく)多様なリーダー5名からの話題提供。
今回、どのリーダーにも共通していたことは「子どもたちの考え、意見を大切にする」ために「任せる」ことだったと思います。
どのように任せていったのか、任せることでそれぞれの現場で何が起きたのか、話題提供者のお話を元に現場の声をお届けします!
まち全体を「当事者」にし組織力を最大化する教育長
<大分県玖珠町 梶原敏明教育⾧>
GIGAスクール構想での一人一台端末配備を大分県でいち早く完了した大分県玖珠町。
学校事務職員出身としての強みである経営的視点と「ピンチをチャンスに」との前向き思考を併せ持つ梶原教育長からの話題提供。
ご自身が「弱み」を堂々と周りに見せることで裁量権を現場に渡し、関係者全員に当事者意識を生み、これが結果として組織力を最大化させる大きな要因になったということで、その具体的な内容についてお話をしていただきました。
★まず、GIGAの一人一台はどのようなプロセスで行われたのか
2020年1月に教育長に着任。
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コロナ禍に突入する前の2月、やるなら早く整えたいと考え、町長の理解を得て臨時議会でまずは「整備」に関する予算をつけてもらう。
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その後、6月に臨時議会で一人一台の予算をつけてもらい、入札等の関係で遅れもあったが10月に一人一台の配布が完了。
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ICT導入に際し一番の壁は「教職員の理解」。忙しさを考えれば当然のことだが「また仕事が増える」と、当初教職員は消極的。
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そこで、10月に有識者会議を立ち上げ、地域の方、専門家含め約50名を集め、そのうち20名ほど教職員にも入ってもらった。ICTを使うことを目的とするのではなく「未来を作る人材育成」を目的に話し合いを進めた。
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結果的に教職員も自分ごととして捉えてくれるようになり、2週間休校にした際は全ての教科で双方向のオンライン授業を実施し、保護者や子どもたち約90%から高評価を得た。
先生たちは疲れていたものの、達成感や次につながる成功体験を得た。
★地域全体で主体性を持って考え行動することが推進力に
トップダウンだと納得と理解がないと本気になれず、言われた以上のことはしないことも多いけれど、それぞれが目的に対して主体的に取り組むことで推進力が生まれスピード感につながったと思います。
また、任される中で新たな企画が生まれるなど想定以上の結果につながることもありました。
これはコミュニティスクールも同じで、地域全体が主体性を持って考え行動するようになると、みんなが作り上げたみんなの目標を守ろうという意識が働きます。参加ではなく、参画という意識で取り組んでいるからではないでしょうか。
★どのように任せていったのか
みんなで作り上げたいとの思いで、弱みを見せながらこちらから相談をするような形でコミュニケーションを取りました。そういったやり取りにより「私は必要とされている」といった自己有用感が生まれ、モチベーションにつながっていったように思います。
主体的に考えられる問いを投げるのも重要。「どういう学校経営にしようか?」などの問いを投げ自分たちが作ってる学校だと思えるようにします。
またこのような大人の成功体験が、子どもに対しても主体性を育む教育につながるのではと思っています。
★少しずつ賛成してくれる仲間を作っていく
校長をしていた時、コミュニティスクール導入には反対の声もありました。
新しいものを導入する際に抵抗のある人が少なからずいるため、まずは学校にいる図書館司書、用務員といった学校支援に取り組む人たちに話をし、校長を支える4、5人の会を作りました。
そこから、少しずつ地域の人、保護者を巻き込み、面白いと盛り上がってもらうことをやっていきました。
教員が反対する背景は、忙しさはもちろん、当時学校が荒れていたこともあり、外部の人が学校の実情を知ることでお叱りを受けるのではと思っていたのもあります。ですので、何か課題があるとできない理由を並べることもあり、そのたびに「それはできるよ、これはできるよ」と地域の方が言ってくれたのです。
結局、蓋を開けてみると先生たちも楽になり、1、2年かけて子どもたちも表情が良くなり学力も上がっていきました。
★1つ1つの成功体験の積み上げが必要
結果が出ないと納得できないことも多いので、小さな成功体験の積み上げが必要です。目標が現状から見て、届きにくいものではなく、少しづつ解決していけるものを積み上げていきます。
★学校の組織編成の手順
各主任にビジョンミッションを伝えて、どうしたらいいか考えてくれないかと相談しました。教職員からヒアリングするのはミドルリーダーで、その声をまとめて主任が校長に説明する流れを取りました。
そのようなステップにより、各主任も、教職員も自分たちで作ったものを校長が承認したという達成感が生まれたようです。
★働き方改革では支援員の拡充を図る
教員のアンケートでは、保護者対応、クレーム対応、生徒指導など精神的な部分で負担感を感じているため、スクールソーシャルワーカーなどと連携し、教員が子どもたちと向き合って授業に集中できるようにしていきたいと考えています。量的な仕事の部分は、支援員を7校に25名配置するなどしています。(内訳のほとんどは特別支援教育の支援員)
これは町の単独費用なので、町長にお願いしてやっています。首長部会とは別に、毎日のように町長に会って話をすることで関心を持ってもらったり、議会からの協力も得ています。
★全国の事務職員へエール
最後に。学校は教育課程を進める場で、学校全体の経営の視点は、事務職員の方にウェイトがあります。事務職員の方は3つの目(鳥の目、虫の目、魚の目)を持って校長へアドバイスをして欲しいとメッセージを贈っていただきました。
参加者の声
「納得と理解から「共鳴」が生まれますね。先生たちが共鳴したから動き出したのでしょう」
「チームの力を最大化する、それこそが本物のリーダーシップだと思います」
「信頼して、任せることですね。素晴らしいリーダーシップです」
「梶原教育長の発言のそこかしこに「自分事、当事者」という言葉が出てきます。人を信頼するというスタンスが通奏低音のように流れているのですね」
「校務支援システム導入で負担軽減を実感してもらうことがICTを活用していこうとする意欲につながると思います」
「教師・生徒が自ら創る学校へ」総合を軸にしたカリキュラムマネジメント
<福井県福井市立至民中学校 小林真由美校長>
「総合」ならば、全先生・子どもが参画できる。
「みんなで創る学校」「私が創る学校」をビジョンに掲げ、「総合」を軸に、コロナ禍を学ぶべき題材として取り上げたこの1年。小林校長からこれまでの実践・ビジョンの裏側をセッションでの対話を通してお伝えいただきました。
数学の教師、指導主事を経て、3年間福井大学へ派遣され、その中で新しい考え方に出会いました。子どもたち、教員、地域のみんなで一緒に学校という1枚の絵を描くという話を聞いて、管理職として学校を作ることへ夢を抱きました。その後、校長として現中学校に着任。
着任校は2008年から、70分授業、異学年縦割り、地域連携が特色の学校でした。最初は子どもも先生も意欲的に取り組んでいたが、4、5年が経つと苦しいことがあり、学校が荒れた時代がやってきました。
特色あった取り組みはやめ、通常の形に戻るなど様々な背景を経た状態での着任でした。
★総合的な学習の時間の目標を「感染症対策を通して社会に関わる」に設定総合的な学習の時間のカリキュラムマネジメントは昨年度に限って、新たな目標を設定し「感染症対策を通して社会に関わる」とし、学校のルールを自分たちで考えることに取り組みました。
教科の中では、音楽で合唱ができないため、ギター演奏に取り組み、そこでできた自分たちの音楽をHPから発信したり、家庭科ではマスク作りを行ったり、英語の授業ではALTに休業中の生活を伝えたり、お店のソーシャルディスタンスの足形のデザインを美術の時間に作って地域に届けて使ってもらうなどしました。
そして、子どもたち自身が、初めてのオンライン学校祭を実施しました。全て生徒が企画する手作り修学旅行も行い、今だからできることを企画し実行していったのです。意図しなかったことですが、教員でも各部会の話し合いの場が必然的に出来上がり、それぞれのチームの結束が強くなりました。
辛かったが悪いことばかりではなかった昨年度の経験を今年度につなげていくことが重要と考え、令和2年度をこえる3年度を作ろうという合言葉にしています。
★ルールで統制を図るのではなく、子どもたちの意見をきく
着任前はルールがしっかりあって、生徒指導も先生方が一致団結して統制が取られていました。
学校評価を数値化して、「ここが足りないからここを埋めてここへ向かおう」というやり方で少しずつ上向きになっていた。初年度はそれを引き継いでやっていました。
それをコロナ禍を機に問い直すきっかけができたのです。
正解のない状況になったため、ルールが先行するのではなく、子どもたちはどう思っているのか?子どもたちの意見を聞きながらやっていってはどうかという方向性へ。
子どもたちもやってみてうまくいったという体験があると嬉しい気持ちが湧いてきます。
これまでは「○○がだめ」と言われてきたけど、「○○ができた」と言われるようになって、子どもたちの姿が変わりました。
★「こんな学校だったらいいよね」を教員と子どもで共有
子どもたちとともに「こんな学校だったらいいよね」というふうに考えていきました。これは教員がみんなで見つけ出したやり方です。
結局やりたいことは何かということに立ち戻り、子どもたちが「休校より学校に来た方がいいよね」と思えるように、学校を開いていこうという思いを学校全体で共有し、教員が部会でチームを作って話をして進めていってくれました。
★オリジナルのキーコンピテンシーを軸に問題作りや評価をする
学校には着任前からオリジナルのキーコンピテンシーがあり、5つの力を常に基準にし、その観点でどのくらいできていたかがわかる問題作りをしています。そして、単元ごとにどの程度できていたかをテストやアンケート、子どもたちのレポートから評価しています。
教員の中ではこのコンピテンシーは定着していて、子どもたちにも全校集会などでこの5つの力を校長から伝え意識させるようにしています。
★総合の時間を感染症対策から、キャリア教育へ
学校教育目標を実現する一番の手段として、総合的な学習の時間をどう位置付けていくか様子を伺っていたところ、コロナ禍に突入しました。これにより、カリキュラムマネジメントしないと授業が間に合わない状況になり、感染症と絡めながらやっっていくことで、総合の時間を生かすとはどういうことかというのを教員に体感してもらうチャンスになりました。
今後は、子どもたちが一番やる気を持って探究していけるであろう「自分の将来」を念頭に置きながら、これからの世の中を生きていくためにどうしたらいいのかというのが最終的な総合の目標になることを目指し、キャリア教育とつなげていきたいと考えているという話をしていただきました。
参加者の声
「『地域感染症対策を通して社会と関わる』をテーマにした総合的な時間(PBL)は目からうろこ」
「子どもたち自身が自分たちの未来の学校を考えるというのもワクワクしますね」
「校長が子どもをよく知る。だから、信じられる。大切にしたいです」
「コロナという危機によって教員の一体感を醸成し、生徒主体のカリキュラム改善、学校改革につなげたのですね」
学校経営の在り方〜特別支援に従事してきた視点から
<兵庫県尼崎市立下坂部小学校 杉本浩美校⾧>
特別支援学校での勤務経験をはじめ、特別支援に深く従事してきた杉本校長。
そうした経験から見えてきたことが、現在の普通学校での経営で、どのよう営に活かされているのか。教員一人ひとりとのコミュニケーションの在り方、子どもを中心とした課題解決など、杉本校長を支える二人の教員とともに、学校組織をどのように捉え、運営しているのかをお話しいただきました。
★ビジョンを共有し、柔軟に取り組む学校
まず、学校の研究テーマが「より良い社会の創り手となる児童の育成を目指しましょう」ということで教職員と”大きなテーマ”(ビジョン)を共有している点がとてもいいと思っています。
学校の強みは、組織で取り組むことができること。少人数ならではPDCAサイクルを基本とした取り組みを行っており、年度途中でも必要な場合は改善や、新しいものの導入なども柔軟に取り入れています。職員の気持ちよく共通理解が図れる環境です。
弱みは、敢えてあげるのであれば20、30代の若手教員が中心で経験値が少ないこと。また、規模が小さいがゆえに人的な余裕がないこともあります。
子どもたちは地域から大切にされており、異年齢で仲が良いという特徴のある学校です。
★大学院では色んな人との繋がりで考えの幅が広がった
現在の小学校に校長として着任する以前に、現職派遣制度で兵庫教育大で勉強したことがいくつかあるターニングポイントの一つとして印象に残っています。
そこでよかったことは色んな人との繋がりができたことです。色んな立ち位置で働いている方と関わり、話すことができました。大学院では研究のことで日本全国の人と話ができるので考えの幅が広がりました。同じ研究でも、地域や現場ごとに使う言葉も捉え方や認識の仕方も違うことを知ることができました。
★柔軟に物事を考えるため経験値以外の視野を持つ
これまで出会った恩師の一人である先生の口癖に「何が普通かわかんないんだけどね」というのがあったのですが、まさにこのコロナ禍で、これまで”普通”だったことが”普通”ではなくなっている中で、柔軟に物事を考えることやそのためにそれぞれ色んな背景があることをを知っておかないと判断を誤ってしまうことを実感しました。
つい経験値で物事を考えたり判断しがちですが、特別支援教育の中では経験値以外の広い視野が必要です。エビデンスも踏まえながら判断していかないといけないというのは、大学院に行ってより一層感じました。
★教員が強みを生かせるようチームで取り組む
学校では教員たちにも得手不得手が色々ありますが、みんな子どもが好きでこの仕事がしたいと思ってやっているので、強みを生かして仕事をして欲しいと思っています。
強みがあって、それにより弱みがカバーできるので、強みを生かして欲しいです。さらに組織はチームなので、1人の力が1馬力ではなく、相互作用や掛け算によって増えていくため、仲間で協働していくことで弱みを乗り越えることが可能だと思いっています。
★5つの部で学校活動の相談ができるように
「仕組み」で、若い教員の経験値が足りない点をカバーできるようにしています。
5つの部(教務部、指導部など)を作り、学校活動の相談が教員同士でできるようにしています。一年目の教員が自分の知識や経験だけで進めるのは厳しいので、部の中でそれ以外の教員が話し合いに入ってくれることで、一年目の教員の提案もブラッシュアップされていきます。
また、部の他に運営委員会があり、部長と主幹教諭と管理職が集まって、管理職と同じ視点で学校全体を見渡しこれからのことを考えてくれています。
★杉本校長は挑戦する背中を押してくれる先生
一緒に参加されていた杉本校長を支える2人の先生からは以下のようなコメントをいただきました。
挑戦を恐れない「いいねやってみよう」が基本のスタイル。部の運営も研究部も若い教員の意見を吸い上げてゴーサインをくれる。
挑戦することが子どもたちや若い先生の次のエネルギーにつながる。
どんどん次の挑戦に向けて背中を押してくれる。
じっくり話をする機会をくれる。いつ校長室に行っても扉が開いている状態。今年やってみたいことは何かと話を聞いてくれる。特別支援のことも杉本校長から感銘を受けて、取り組みを始めた。
通常学級においても発達に課題がある子もいるので、教員にも保護者にも個別の指導計画や教育支援計画を作って良かったと思えるように意識している。
★校長も教員もフラットな立場で
校長も教職員も皆フラットな立場。役割が違うだけだと思っています。
「校長という立場で学校を預かっている」「1年目の先生は担任として子どもたちを預かっている」これは役割が違うだけです。教員一人ひとりに権限を持ってもらい自分の頭で考えるようにしてもらっています。
子どもたちの学習活動も同じです。素直で従順な人を育てるのではなく、自分の頭で考え、チャレンジし、判断できる子を育てたいです。
最後に、「立ち位置も考え方も様々だとは思いますが、学校全体で特別支援教育を共有し目指すところが同じになるといいなと思っています」とメッセージをいただきました。
参加者の声
「『権限委譲』のような形で「任せて育てる」育成が効果的であるのかなと思いました」
「特別支援教育の『特別』がなくなるといいですね」
「ボトムアップ型が大切ですね」
まち全体の「大校長」としての教育長~日本に13.3%ある小中一校ずつの自治体
<岡山県早島町 徳山順子教育長>
そのうちの一つである早島町の徳山教育長は、小規模自治体の強みを活かし、幼保小中の学校種をまたぐ「タテ」と学校家庭地域を結ぶ「ヨコ」双方の連携により、町が一体となった教育を実現。
まち全体の「大校長」の役割を果たす徳山教育長の現在の実践、そしてここに至るまでの道のりをお話いただきました。
「一人一人が輝く教育のまち・早島」の実現 ~協働・協学・協育の町づくり~
早島町では「めざす子ども像 地域とつながり 未来を拓く 早島っ子の育成」としてビジョンの具現化に取り組んでいます。
「地域とつながる」早島っ子とは
①早島町のことをよく知り、②早島町の発展のために協力・協働でき、③早島町を愛し続けることができる子どものことです。
「未来を拓く」早島っ子とは
④「確かな学力」を身につけ、自主的・協働的に課題を解決できる力と、⑤ 高い志をもち、世界でも活躍できる力を身につけた子どものことです。
これらを具現化するために、「一貫教育(学力向上)の推進」「支援員の配置」「ICT教育の推進」「はやしま学の充実(地域社会との協働)」「国際化に対応した教育の推進」「規範意識と思いやりの心、健やかな体の育成」「家庭・地域の教育力向上」「施設等の環境整備」に関して様々な実践をしてきました。
★地域の学び舎としての大校長
校長時は関わりが中学校に限られていましたが、教育長になったことで幼保小中全体に関わることになり、地域の学び舎として「大校長」という表現を選びました。
★子どもたちの郷土愛を育くむことが課題
教育長着任時は、子どもたちの生まれ故郷に対する郷土愛を課題と感じました。小さい町だから外に出たいという気持ちが多くの人にあります。そのような地域の背景から、早島を愛して誇りに思う子どもを育てたいと思いました。
★地域全体を巻き込むポイントは「あいさつ」
地域の様々な行事に出かけて行って大きな声で、笑顔で色々な方へ挨拶をし、関わりを持っていきました。地域の方とコミュニケーションを取るために朝早く草抜きのような草の根的な活動から始めて、地域の方との交流を深めていきました。
★他の町と積極的に連携する
大学や企業、オンラインで他市町村とカリキュラムをするときは結ぶようにしています。
例えば、平和教育で沖縄の中学と連携したり、気仙沼の小学校とは5年生が防災の授業で連携しました。
その他、チャンスがあれば貪欲に掴んでいきたいと考えています。
大学は岡山大学や環太平洋大学の留学生とロゲイニングをしたりしました。卒業して早島に住んでいる留学生もいるくらい地域を愛してくれています。
★子どもたちの活躍の場を地域へ
学校教育ビジョンを具現化するために取り組んでいますが、子どもたちの活躍の場を地域に持っていくことで、地域の応援団を増やし、地域に開かれた学校にしていくことを意識しています。
発案に関しては、生涯学習課とも連携をとっていますが、自分で思いついたらどんどん提案してやっています。教員にもとにかくやってみようとチャレンジしてもらうと、最初は難色を示してもやってみるとうまくいくことが多いです。
★普段のコミュニケーションで理念を共有
月1回の校長・教頭会だけでなく、常に話をしているので、理念は普段のコミュニケーションで共有していると思います。
常に思いを伝え、場合によっては説得も試みています。
そして、校長の学校ではなく、早島の学校ということを意識してもらうにしています。
★他者とつながる力が郷土愛を育む
早島町で身につけようと取り組んでいる「やり抜く力」などを身につけるために、早島町は町ぐるみで、子どもたちの価値観や自己認識、行動特性にアプローチしています。
例えば「他者とつながる力」の以下のような価値観の部分は、町の人たちが持っている郷土愛と重なるものであります。
・他者とつながることを大切にしたいと思えている
・なぜ他者とつながることが大切なのかをわかっている
このようなことを地域の大人たちが子どもたちに問いかけアプローチして郷土愛を醸成しています。
そしてこのような取り組み全体で、非認知能力の向上につながっていると重なっているという話を中山教授から補足として、最後に話していただきました。
参加者の声
「大人の学びの場があり、その姿を子どもたちが見ることができるのは学び続けることの楽しさを伝える最適の場となっているのですね。コミュニティースクールの実施に向けての重要な視点として参考になります」
「徳山教育長をはじめ、各学校の教職員が『学びの主体』として地域やプロジェクトを通して学び、さらに『学びのファシリテーター』に変貌、進化していく…そのスパイラルが素晴らしいのだと思います」
家庭・地域が「協力したくなる学校」創り
<岡山県浅口市寄島小学校安田隆人校長>
「ふるさとを誇りに思う子供たち」「家庭や地域が協力したくなるような学校」という信念を持ち、赴任先の学校を次々とコミュニティスクール化してきた安田校長。 経歴やこれまで大切にされてきた想い、どう協力体制を創って来たかなどを深掘りしながら、どうしてコミュニティスクールを学校運営の核とすることに辿り着いた経緯について話題提供いただきました。
★着任直後にコミュニティースクールを計画
現在の学校では、コミュニティスクールに関しては導入も、その仕掛けもまだありませんでした。着任後はまず、その年の10月中に立ち上げるゴールを見据え、6月位にコーディネーターとして適任であると判断した方に必要性などの話をし、その方にもう1名誘ってもらう形でやることが決まりました。
「子どもの姿と寄島の強み弱み」に関して取ったアンケートでは、学力低下や徳育のこと、地域との連携のこと、働き方のことが課題であると見えてきたので、それを教員に伝え、4大課題として解決に向けて取り組むことになりました。
これらを一人の担当にすると負担なので、チームにして取り組みました。そうすると指示をしなくてもチームで話し合うという状況が生まれたのです。
またこのようなプロジェクトを進めるにあたり、目標や課題の可視化は非常に大事であることを実感しました。前任校で働き方改革のモデル校として取り組んだ際、教職員で決めたことが叶った時は課題が1つなくなったことが可視化され、モチベーションにもつながった。
どのゴールに向かって誰が何をしていくのかをアクションシートを作成し、取り組んでいることを見える化すると、これから何をしたらいいのかが分かるので大事だと教員自身が実感しています。
★自分ごとになった課題をチームで積極的に進める
アンケートから課題を洗い出したので、「この課題は解決しないといけない」と教員の中では自分ごとになっていたため、校長からはチームでやることだけお伝えし、教員で進めてもらうようにしました。
チームは校務分掌に関連付けて分けました。チームにすることで、他のチームからも刺激を受けて前向きに取り組んでいました。
チームでフラットな関係で課題を解決していこうということが共有されているため、どのチームも様々なアイディアを積極的に出してやってくれています。
★コミュニティスクールが機能することで負担が軽減
コミュニティスクールの立ち上げと働き方改革は並行して取り組んでいたが、初発のエネルギーは必要なものの、軌道に乗ると様々なことがスムーズに進み出しました。
例えば、運動会を半日で導入するのが決まった時。
通常であれば役員会開いて、保護者などにお知らせするプロセスが必要です。ただ、運動会の目的に照らすと午前中だけでも達成することをコミュニティスクールの方で伝え、了解を得ました。コミュニティスクールでOKを貰えば、お墨付き感もあり、他への説明も紙の通知だけで済み、クレームもありませんでした。
また、地域でサポートいただくことで、子どもが落ち着きを取り戻すので、生徒指導面での負担感の軽減にもなり、そのことで保護者からの心配な意見も結果的に減りさらに負担感が減る結果となりました。
★保護者も子どもたちも地域の人へ感謝
保護者からも地域の方々への感謝の声はある。また、子どもが卒業したらボランティアとして関わりたいという声もありました。
地域が子どもたちを守ってくれてる実感があって感謝する保護者が多くいるので、地域も保護者の声を聞いて「やってよかったね」となっています。
子どもからも、次は自分が地域の子どものために関わりたいという声が出てきて、学びの循環とはこういうことなんだろうと実感しています。
★ミドルリーダーを育て持続可能な体制作りへ
人材育成が一番課題だと感じています。管理やコーディネーターをするようなミドルリーダーを育てなければいけないため、個々に校務分掌を振り分けるのではなく、チームでやっているのは人材育成の視点もあります。
最後は、人材育成を今後の展望としてお話いただき締めていただきました。
参加者の声
「学校運営協議会で実働部会の先生方が実際説明できるのは、教師の主体性も生みますね」
「ボトムアップでの取組が、各先生方の意欲につながり児童の変容に繋がるのだと感じました」
「年間計画や目指すものが示されると、地域のみなさんも自分たちの取組が孤立した「『点』から『線』担って繋がりがわかり、やる気が出ますね」
「校務分掌をプロジェクトチームにするのは素晴らしいですね!」
「課題を明確にし、それが解決できるかもしれなという希望があって、その解決に関して自分の役割があるというのが重要な要素なのですね。あとはほかのチームの様子が見えること」
最後に
運営をサポートしているNPO法人ETIC.の元代表理事である宮城治男さんからは、立ち上げ当初は文部科学省の職員のみなさんの熱意に感動してサポートしていたが、次第に参加者のみなさん一人ひとりに変革の力を感じる場になったことや、現場の危機をギフトに変え、学校がボトムアップで変わっていることに対して、現場の実践の実態が全体を変えていく時代であると確信しているというメッセージが贈られました。
設立以来、熱量の高い開かれた場を作ってきた事務局メンバーの方からは、イベントを通して全国の方との対話する中で、困難を抱えながらも前向きに取り組み、変化を恐れず挑戦を楽しんでいる教育長・校長に出会うことで学校教育の力を再認識することができたというお話がありました。
新型コロナウイルス感染症の収束の見通しもつかず、依然として厳しい状況が続いていますが、このような場に様々な方が立場を越えて知恵を持ちより、可能性を信じて課題解決に取り組む姿から、子どもたちが自分たちの手で未来を創っていく姿を想像することができました。
私たちに何ができるのか?を諦めずに考えている「現場」の方から学ぶことのできるこのプラットフォームの今後の進化もとても楽しみです。
編集後記
ここからは、少し長めの所感になるため、事前にお伝えしておきます(笑)
私は、このプラットフォームで様々な方の意見を伺うことで、SDGsでも掲げられている「誰一人取り残さない」を実現する力が日本の公教育にあると強く感じることができました。
その理由を大きく3つにまとめました。
①教育長・校長が身近に感じられた
私はイベントに参加する前まで、このコロナ禍の正解がない中で、コトを前に進められるのは牽引力のあるリーダーシップなんだろうと想像していました。しかし、教育長・校長の話題提供から見えたのは、迷いながらも周囲の力を信じて託し、その現場の頑張りを支えるような役割を担っている姿でした。
ビジョンを共有した上で、教職員、保護者、子どもの声を聞き、今できることを泥臭く、また新たなチャレンジのために学び続ける姿を見せていただけたことで、僭越ながらとても身近な存在に感じられました。
私たちにはとても真似できないと感じる強靭なリーダーシップではなく、私たち一人ひとりに力があるんだと教えてくれるような、そんなリーダーシップでした。
②常に「現場」が主語である
イベントのコンセプトでもある「答えは現場にある」がどの自治体や学校でも体現されていると感じました。なぜかと言えば、教育長であれば校長や教頭、校長であれば教職員や保護者を主語に、そして参加者の誰もが子どもたちを主語に話をされていたからです。
自分たちの実践に光をてるのではなく
「子どもたちが頑張った、先生方が頑張った、保護者や地域の方が協力してくれた。だからチャレンジできたんです」
と、誰もがそんなメッセージを発信されていました。
子どもたちの姿に光を当てて試行錯誤されている参加者全員の声からは、子どもたちの表情も想像できるほどでした。
そして、このコミュニティを主催されている文部科学省やNPO法人ETIC.の職員の方々においても、有志で活動の場を作り、全国から声を集めて多くの方へ届けようとする姿には心打たれるものがあり、お一人お一人の思いが可視化されたイベントになっていたように思います。
③自分には何ができるだろうか
そして、個人的には「私には何ができるだろうか」そんな問いを与えてくれた場でもありました。
私自身は現場に身を置いていません。しかし、何が正解かわからない時代に、多くの人が迷いながら選択し、時に悔しい思いをしながら試行錯誤している中で、どうしたら孤独や不安を抱えずに、ここに集まる方のようにチャレンジしていけるのかなど、自分ごととして考えるために多くの問いをいただくことができました。
私自身、友人がつないでくれたご縁で「教育長・校長プラットフォーム」という活動に関わることができました。
自分一人が頑張っても簡単には繋がらなかったご縁だとも思っています。このような機会をいただけたことへの感謝と、全く違う畑の私だから届けられることがあるはずだという使命感を持ちながら私自身もこのようなレポートにより様々な方を繋いで少しでもシームレスな社会を作っていきたいと思います。
以上、ここまで読んでくださりありがとうございました!
イベントの過去記事は、以下のリンクからもご覧ください。
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