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古代ケルトと現在のケルト文化
学術的な「ケルト」という言葉はいわゆる「大陸のケルト」と「島のケルト」に分けられます。ラテーヌ文化を経てローマとドンパチやってたケルト人がゲルマン民族の大移動やらなんやらに巻き込まれてブリテン諸島に移住して、それらの地域ではかつてのケルト文化が残っていた!というお話ですね。
ご挨拶後一発目から荒れそうなエントリをブッ込んでしまい非常に申し訳ないのですが、最近の学説では大陸のケルトと島のケルトは関係ねぇ!そんなに関係ねぇ!という説が有力です。というか確定くさい。
ぶっちゃけブログ主も専門家ではないんですが、アイルランドの音楽をやらしてもらってる身としてはちょろっと概観くらいは書いても許されるじゃろ。
なお、現在「ケルト」と呼ばれる地域はアイルランド、スコットランド、ウェールズ、ブルターニュ(フランス)、ガリシア(スペイン)となります。
そこ、イングランドハブられてるとか言わない
大陸のケルトと島のケルト
上記でも記述しましたが、学術的な意味での「ケルト人」は中央ヨーロッパに勃興してハルシュタット文化・ラテーヌ文化を築き、ローマとも争っていた民族集団を指します。カエサルが「ガリア戦記」で記してたという人たちです。この集団は最終的にはローマと同化・吸収されていったようです。「大陸のケルト」という用語は主にここらへんの文化・民族集団を指します。
対して、ローマとドンパチやったりゲルマン民族大移動によって圧されたケルト人がブリテン諸島に渡った結果保存された文化や民族を「島のケルト」と呼称していたわけですね。
これは言語学的にガリアとブリテン諸島に共通点があったとされたこと、「大陸のケルト」の工芸品がブリテン諸島で出土していることから導き出された学説でした。
民族意識の高まりと島のケルト
島のケルトと言われる地域は現在のアイルランド・スコットランド・ウェールズですが、彼らは長い間イングランドの支配を受けてきました。近世に入ると政治面・文化面において被支配民族の独立意識が勃興しますが、上記の地域はそれらのムーブメントと「かつてヨーロッパを支配していた民族の末裔」という意識が交わり、政治的な意味で島のケルトという概念は浸透していきます。
戦後の再定義
第二次大戦後になると「島のケルト」という概念に疑問が呈されるようになります。工芸品が出土する、といっても交易もあったはずなのでそれが直接移住の証拠になるかは考えにくいこと、中世ケルト文化、と呼ばれる聖書写本などが制作時は特にケルトと呼ばれていなかったこと。
それにとどめを刺したのがDNA解析によりブリテン諸島の人たちのルーツは氷河期後期にイベリア半島から移動してきた人たちだという説が有力になってきていること。
恐らくこういった研究状況を考えると、これらの説が再度ひっくり返って「大陸のケルトと島のケルトはやっぱり関係あったんだ!」となる可能性は低いかなぁと。
まあ、こういう話ってよくあるじゃないですか。聖徳太子が教科書から消えたとか復活したとか。ティラノサウルスが毛皮でモフモフからそうでもなかったに学説変わったとか。
学術的に疑問が呈される一方で、エンヤやリバーダンスの成功、映画「タイタニック」などによって、急速に「ケルト音楽」という概念は普及していきます。商売がうまくいっちゃった。
「ケルト」というブランド
わたしがこの説を知ったのは7年くらい前ですが、島のケルトは学術的には別物、という学説は少なくともあまり日本では普及してないように感じます。こっからが荒れるポイントなんですが、なんで普及しないかと言えば、そら商売上よろしくないからでしょ(火の玉ストレート)。
あ、それに対して憤ってるとかじゃないですよ。面白がってはいるけど
ねえ、わかるんですよ。ケルト。いい響きですよね。ファンタジーに興味があったらケルトって言葉だけでどんぶり飯3杯イケますよね?
「島のケルト」をインスピレーションにしたファンタジー作品ってたくさんあるじゃないですか。Lord of the Ringとか、日本だとfateシリーズとかですかね。今後これらがどうなるか考えたらwktkが止まらないんですよねまあ、現在人口に膾炙している「ケルト神話」というのはだいたいがアイルランドやその近辺に由来するので、少しずつ「アイルランド神話」とか「ブリテン諸島神話群」とかの呼称にスライドしていくのがベターなんじゃないかなぁ。
まあ、当のアイルランド自体が割とケルト推ししてたのもややこしくなってる原因ではあります…w
アイルランド音楽? ケルト音楽?
わたしはアイルランドに何回か行って、現地のセッションに混ぜてもらったり、レッスン受けたりしてるので個人的には「アイリッシュのプレーヤー」という認識です。が、「アイリッシュ」って言うより「ケルト音楽」って言った方が多少通じやすい。ので人に説明するときは使い分けてますw
アイリッシュとケルトっていう言葉もちょっと境界線が曖昧な感じだし、その境界自体も人それぞれなので断言し辛いところです。まあ、自分の立場的にはそこまで違いについてうんうん考えるようなことでもないかな…w
ここらへんはまた長くなるので別の機会に書いてみようと思います。
今後「ケルト」という言葉はどうなる?
正直、ここまで文化・商業面で浸透しちゃうと、「学術的にはNGだから使っちゃダメ」と言っても難しいところがあると思います。「なんだよ違うってウケるwww」とか笑ってられるのは筆者がそこらへんの商売の恩恵を特に受けてないからです。
ここまで浸透したからには「現代ケルト」みたいな新しい呼称で分類してもいい気もするけど、歴史学とかからすると厳しいかなぁ。
本国やそれ以外、日本なども含めたアイリッシュのシーンでここらへんがどう捉えられてるかは興味深いところではあります。ただ、こういうのはニュートラルな視点から調べなきゃアカンから、内部の人間が調査するのは揉めそうな予感。
個人的にはアイルランドのセッションに参加するときはあまりこういう話はしたことないので、現地のミュージシャンがどう思ってるかは純粋に興味がありますね。