#2 メンターと生徒のセッション編 │ デザインスクール運営ここだけの話。
どうも、もちです!👋
まずはじめに自己紹介。知ってる人は飛ばしてください🙇♀️
デザインスクール運営の振返りシリーズ第二弾になります!
第一弾の記事はこちら。(デザイン課題の設計について振り返りました)
ーーーここからは前回と同じ導入部分になりますーーー
ワイは、NOT DESIGN SCHOOLというオンラインデザインスクールを運営しています。
去年2023年12月に立ち上げました。
そんなNOT DESIGN SCHOOLが初めて迎え入れたゼロ期生。カリキュラムは1年間です。長いと思っていた、そのカリキュラムも残り1ヶ月とちょっとになりました。
生徒たちを成長させるために、本気で考え抜いたカリキュラムですが、この約1年間、実際に運用してみて、うまくいった点もあれば、改善点もたくさん見えてきました。
このシリーズでは、NOT DESIGN SCHOOLゼロ期生の運営を振り返り、何がうまくいったのか、何を改善すべきのかを赤裸々にシェアしていきます。
普通こんなもの外部に公開しないと思うんですが、これからデザインを学ぼうとしている人や、スクールを運営している同業、個人的にデザインのメンターをしている人、デザイン業界全体とって、少しでも何か参考になれば良いなと思い、思い切って公開していきます!
ーーー導入終了ーーー
前提のお話
NOT DESIGN SCHOOLは、未経験からデザイナーを目指す人のためのスクールではなく、すでにデザインを仕事にしている人が新米デザイナーから中堅デザイナーを目指すための、いわばセカンドステップを提供しているデザインスクールです。
立ち上げの想いについてはこちらのnote記事を読んでみてください。
メンターと生徒のセッション内容
当初設計したセッションの内容はこのようなものでした。
カリキュラム期間:1年間
◎ 前期(4ヶ月)
生徒がやる内容:デザイン課題
セッション:週2回(最大月8回)デザインメンターとの1on1セッション
◎ 中期(2ヶ月)
生徒がやる内容:Studio学習
セッション:月最大2時間 Studioメンターとの1on1セッション、slackで質問は無限
◎ 後期(6ヶ月)
生徒がやる内容:ポートフォリオ作成、実案件チャレンジ
セッション:週1回 デザインメンターとのグループセッション
◎セッションの方針
デザイン課題に関するセッションの方針は「ティーチング形式」ではなく、「コーチング形式」を重視するというもの。理由は直接的な修正指示を出す添削方式だと、生徒自身のデザインを考える力が成長しないと思ったためです。
◎その他の制度やルール
担当メンターは毎月変える。
生徒にはセッション前、事前にアジェンダを用意してもらう。デザイン作成の過程を制作プロセスにまとめておく。
後期のグループセッションは課題の進捗ごとにグループをわける。1グループ3〜4人につき1人のメンターが付く。
セッションの振り返りをやっていく
※今回、Studio学習の振返りは性質が特殊なため割愛。(またこちらは別の機会に!)
まず良かった点から振り返ります。
圧倒的に多いセッション(フィードバック)の機会
できる限り生徒自身に考えさせるという方針
毎月メンターを変えたこと
制作プロセスを書かせたこと
つぎに改善が必要だと感じた点。
セッションの回数が週2回は多すぎた
あえてアジェンダのテンプレートを用意しなかったこと
1on1だけでも微妙、グループだけでも微妙
コーチング形式のフィードバックだけでは厳しい
一つずつ詳細に見ていきます。
良かった点の深堀り
◎圧倒的に多いセッション(フィードバック)の機会
私たちのスクールほどセッション(フィードバック)の機会が多いスクールは他にないと思います。いままで複数の未経験者向けスクールでメンターをしてきましたが、多くのスクールでは、1つの課題につき1〜3回のフィードバックがあり、課題の数は3〜4つほどです。
つまり、通常のスクールでは、全体で3回〜12回程度のフィードバックが行われます。
一方、NOTでは、マンツーマンのセッションが40回以上と、圧倒的に多い設計になっています。更にマンツーマンのセッションに加えて、合格判定のフィードバックは別であります。(合格判定の詳細は、振り返り第一弾の記事で詳しく説明しています)
それだけでなく、メンター1人が複数生徒の課題を添削する「100本ノック会」もあります。これらをすべて合わせると、メンターからフィードバックを受ける機会はなんと80回以上! (さすがに多すぎた…という反省は後述します…汗)
なぜこんなに多くしたかと言うと、正直、それくらいしないと「生徒たちのデザインスキルが、仕事に結びつくレベル」まで上達しないと感じたからです。
過去のメンター経験から、数回のフィードバックだけで、デザインで生きていけるレベルのスキルを身につけるのは難しい、という課題感がありました。
そんな数回のフィードバックで、スキルが付くわけないんですよ。
それも添削形式になるので、生徒自身が自分でブラッシュアップするというよりも、メンターのスキルを借りてブラッシュアップしているという形になってしまっています。
だからこそ、「圧倒的に数をこなさないと成長しない!」という強い思いで、このような脅威のセッション数になっておりました(汗)
その結果、たくさんのフィードバック回数が必要である、という仮説は確信に変わりました。頻度やバランスは調整しますが、来期もフィードバックの機会をたくさん用意する予定です!
◎できる限り生徒自身に考えさせるという方針
NOTではティーチングではなくコーチング形式で教えることを方針としていました。
今までのメンター経験から、課題を添削する時にティーチング形式でやってしまうと、「余白が詰まってるから、この要素はもっと下にさげよう」など、直接的な修正指示になってしまい、ブラッシュアップ後の作品が、生徒自身の作品というよりは、メンターとの共作になってしまうことに課題感を持っていました。
最近では、面談時にポートフォリオを見せると、スクール卒であると分かった場合「この中でメンターからフィードバックを受けてつくった作品はありますか?」と聞かれることもあるそうです。
つまり面談相手からすると、「メンターの添削が入っている作品は、あなたの実力じゃないよね?」と思われているということです。
これは面談する側からしたら当然の対策だと思います。
うまくつくれていると思ったら、それはスクールのメンターの実力が加味されていたとなると、入社後にお互いスキルギャップに悩まされることになります。
NOTでももちろんフィードバックはするので、メンターのパワーが課題に多少は反映されてしまうのですが(これはどうしようもない)、できるかぎり生徒自身に考えさせる、生徒自身の力でブラッシュアップさせるということを目標に、コーチング方式を採用してきました。
その結果、多くの生徒たちが、メンターのフィードバックがなくても仕事が取れるレベルのデザインをつくれるようになったと思います。
特にみんなが成長したなと思うのは、ビジュアルデザインのスキルだけでなく、自分でデザインの説明ができるようになっている部分。これはメンターからの修正指示をただ鵜呑みにしているだけでは、絶対に伸びない部分で、自分の頭で考えてデザインしているからこそ伸びた部分だと思います。
NOTのメンターたちは、幾度となく「なぜこのデザインなのか?」「なぜこの色なのか?」「なぜこのあしらいをここにいれたのか?」となぜなぜ攻撃をしてきます。それをくぐり抜け、生徒たちはかなり鍛えられてきました。
今でも時々、生徒に「どうしてこの色を選んだの?」などと聞くことがあります。それに対して、生徒もしっかり自分の設計思想を答えてきます。
「商品の品質の高さを表現するために、全体的に上品な印象にしたかった。でも価格はリーズナブルで、地域の人たちでも手が届きやすいところが強みでもあるので、高級感が出すぎないように、明るみがやや強いこの色にしました」と。
生徒にそう答えられた時はもう、素直に「めっちゃ成長してるやん…(T_T)」と泣きそうになりました。
来期も引き続き、生徒自身で考えさせるという教育方針は変えずにやっていきます!方針は変えないけど、やり方はブラッシュアップします!(こちらは改善点のほうで詳しく書きます)
◎毎月メンターを変えたこと
前回の第一弾記事でも触れたのですが、NOTではサブコンセプトとして「色々なデザイナーと触れ合う」というものがあります。
そのため担当メンターを毎月チェンジしていました。運用コストがかかるのに、なぜそんなことをしていたのか。
一言に「デザイナー」と言っても、その働き方や価値観、デザインの作り方や重要視していることも、人によってかなり違いがあります。
担当メンターを固定してしまうと、属人的になってしまい、担当メンター=デザイナーとして正しい姿、となってしまう。そうすると考え方やキャリアプランが偏ってしまう恐れがあります。
多種多様なデザイナーがいることを知り、たくさんのメンターと関わることで、自分が目指すべきデザイナー像を見つけていってほしいと思っていました。
あのメンターさんみたいな働き方が合っているかもしれない、とか。あのメンターさんのデザインに対する考え方は自分もとても共感できるな、とか。
そうやって色々なデザイナーの先輩たちから、考え方や働き方を吸収してほしかったのです。
そして毎月メンターを変えることで、それが実現できたと思っています。
ただ中には毎月メンターが変わると、やっと慣れてきたタイミングでまた別のメンターさんに変わってしまうので、人見知りな性格だとちょっとしんどい…という意見もありました。
そのため来期からは、色々なメンターさんと触れ合う機会をつくりつつも、より課題に集中できるように、少し頻度は落とそうかなと思っています。
◎制作プロセスを書かせたこと
NOTでは生徒に制作プロセスを書かせていました。
制作プロセスというのは、課題の作品をつくる際に、どのような作業を行ったのか、どのように考えたのか、という設計部分をNotionのページに書いてまとめてもらうというものです。
制作プロセスを書かせることは、なんとなく感覚でデザインを進めてしまうというケースを減らし、ちゃんと"考えて"デザインをつくるというスキルを伸ばすのに貢献してくれたと感じています。
文章として残すので、デザインを言語化する練習にもなりますし、見返すことで自分のデザインの癖だったり、苦手な工程、得意な工程も見えてきたりします。
自分の制作プロセスだけでなく、他生徒の制作プロセスも閲覧できるようにしていたので、「〇〇さんの制作プロセスすごい!」とか「〇〇さんのまとめ方すごく上手で参考になる!」など生徒同士で刺激し合っていました。互いに切磋琢磨できる環境はとても良いなと感じました。
また制作プロセスの中身を使って、note記事にまとめることで、それをそのままポートフォリオとして企業に提出することができる点も、良いなと思っています。(これもまた狙いの一つでした)
👇️実際に生徒が制作プロセスから執筆したnote記事
通常「ポートフォリオ」と聞くと、たくさんの作品が載ったサイトを思い浮かべると思いますが、採用側からすると、実はこういった制作プロセスと作品を一緒にまとめた記事を見せてもらったほうが「この人に仕事を任せたい!」となりやすかったりするんじゃないかな、と思っています。(実際に私はそう)
制作プロセスを書くというのは、来期も変わらずやってもらおうと思っています!
改善が必要だと思った点の深堀り
つづいて改善が必要だと思った点も深堀っていきます。
✘ セッションの回数が週2回は多すぎた
良かった点に「圧倒的に多いセッション(フィードバック)の機会」と入れたのですが、その反面「セッション回数がさすがに多すぎた」という反省もあります。この辺はバランスが重要で、改善の余地があると感じました。
具体的に言うと、前期は週2回の1on1セッションをやってもらっていたのですが、これが多かった。
週2回あるということは、セッションから次のセッションまでの間が約2〜3日になります。この短い期間で作業を進め、次回のセッションの準備も整える、というのが思った以上に難しかったようです。
生徒側の準備が間に合わず、場当たり的なセッションになってしまったり、付いていくのに必死で精神的に疲弊してしまったり、という事態が発生しました。
途中、デザイン課題の期間を延長した時には、週1回の1on1セッションにしてみたのですが、逆にこれでは少ない(進捗が落ちる)という問題も発生してしまい、頻度の設定はバランスが難しいなと思いました。
来期では、より良いバランス感を探るために、アップデートしたシステムで挑戦してみる予定です!!
✘ あえてアジェンダのテンプレートを用意しなかったこと
1on1セッションの前に、生徒にアジェンダ(議題や計画)をまとめてもらい、メンターに提出するというルールで運用していました。
このアジェンダは、"あえて" テンプレートを用意せず、生徒が自分たちで1から作成するようにしていました。NOTではデザインスキルと同等にビジネススキルも重要視しています。そのため、自分たちでつくってもらうことで、ビジネススキルも伸ばせると考えていました。
ただこれはやりすぎだったなと反省しています。
テンプレートがないため、生徒ごとにアジェンダの内容がバラバラになり、途中で作成をやめてしまう生徒や、書き方が定まらず内容が煩雑になってしまった生徒もいました。
その結果、メンター陣や運営陣としても、うまくアジェンダのシステムを活用しきれなかったように思います。書き方がみんな違うので、それを読み込むメンター側の負荷が高くなってしまったのも良くなかったなと反省しています。
そこで来期からは、最初に模範的なアジェンダのテンプレートを用意し、それに沿ってアジェンダを書く習慣を身につけてもらうことを目指そうと思います。
その方が生徒に対しても「アジェンダを書く意味」を理解してもらえるのではないかと期待しています!
✘ 1on1だけでも微妙、グループだけでも微妙
これはセッション回数のところでも触れましたが、セッションは本当にバランスが難しい…!!(泣)
ゼロ期では、前期はマンツーマンの1on1セッション、後期はグループセッションという設計をしていました。
NOTでは定期的にアンケートを実施して、生徒の満足度や意見を集めています。その結果、1on1セッションとグループセッションにはそれぞれの良さがあり、どちらが優れているとは言えないことがわかりました。
1on1セッションでは、メンターとじっくり話せて深く学べる反面、他生徒の進捗や状況がわからず、必然的に「マイペース」になりやすいです。つまり進捗が遅くなりがちです。また生徒同士の横のつながりもあまりできないので、仲間意識が生まれず、モチベーションが低迷するケースもありました。
一方で、グループセッションでは、他の生徒へのフィードバックが学びになったり、他生徒の状況や様子が分かることで刺激になって自分も頑張ろうと思えた、などのメリットがあります。しかし、深く聞きたい質問がしづらい、自分に使ってもらえる時間が少なくて物足りない、などの意見もありました。
この結果を受けて、どうしたらええねん〜〜!!と、しばらく頭を抱えておりましたが、悩み抜いて結論を出しました。
来期では1on1セッションとグループセッションのハイブリッド型で行きます。どちらも短所長所があるのであれば、両方やればいいじゃないか!!という大胆な構想です。
仲間たちと切磋琢磨しつつ、1on1セッションでメンターにじっくり話を聞くこともできる、という良いとこ取りシステムです。
1期生を目指す皆さま、乞うご期待です!!
✘ コーチング形式のフィードバックだけでは厳しい
これも反省点のひとつです。
当初NOTではティーチングはしない、コーチング形式でデザインを教える、という考えをかなり重要視していました。それが生徒の成長につながると考えていたからです。
しかし、実際にはコーチングだけでは難しいと分かりました。
その理由は、生徒によってスキルの差が大きく、コーチング形式だけでは成長しづらい生徒もいたからです。
ゼロ期生の中には、デザインを始めたばかりの初心者もいれば、すでに数年のデザイン経験がある中級者もいました。
ある程度デザインの経験があれば、コーチング形式で考えを深め、自分で答えを見つけていくやり方も有効です。しかし、ほとんど経験がない場合は、「どうしたら良くなると思う?」や「どこが物足りない?」といった質問に対して、「特にありません」や「わかりません」という返事がかえってくることがありました。
生徒がまだ「自分なりの良いデザインの基準」を持っていないと、このような問題が起こりやすくなります。そうなると、コーチング形式でデザインを改善するのには限界があります。
何度か運営陣とメンター陣で話し合った結果、生徒のスキルレベルによってティーチングとコーチングのバランスを調整するというルールに変更しました。
生徒に合わせて教え方を変えることで、一人ひとりにしっかり向き合ったフィードバックができるようになったので、変更して良かったと感じています。
この「生徒のスキルに合わせてティーチングとコーチングのバランスを変える方法」は、来期も続けていこうと思います!
さいごに
今回は前期の「メンターと生徒のセッション」について振り返ってみました。新しいやり方に挑戦している分、なかなか思ったようにうまくいかない点も多かったです。それでもゼロ期生の協力もあり、少しずつこうしたら良いのかもしれない、と答えが見えて来た気がします。
新しい設計を1期で実践してもらうのが、今からワクワクです!
次回は「インターン制度」について振り返ります!
お楽しみに!
少しだけ宣伝。
NOT DESIGN SCHOOLというオンラインデザインスクールを主催しています!当スクールのコンセプトは「即戦力となるデザイナーの育成」。一般的なスクールでは深掘りされることの少ない上流設計やプレゼンテーションの技術も、実践的に教えていきます。デザイン業界で生き残るためのスキルを、徹底的に身に付けていきましょう!
次期生徒募集は11月下旬を予定しております!
▼公式サイトはこちら
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今回は以上になります。
また次の記事でお会いしましょう!
ばいばい👋
読んでいただきありがとうございます!デザイナーのためになる記事を書けるよう頑張ります(^◇^)