新型コロナの時代に想うこと(3)・・・COVID-19前の記憶

2020年5月の現在、私たちの周りには新型コロナの話題や知識が溢れている。私も含めて一億総プチ感染症専門家の様相を呈しているが、半年前はどうだったのか覚えている人・思いを致す人は少ないのではないだろうか。どうも新型コロナウイルスにはそれ以前の記憶を消してしまうという作用もあるようだ。ここで一旦立ち止まって私自身が新型コロナと過ごしてきた日々を振り返ってみたい。

2019年の年末

今は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と呼ばれている今回の感染症について最初に意識をしたのは何時頃だっただろうか。2019年の年末は、沢尻エリカの大河降板問題等々世の中では大騒ぎしていた話題がいくつかあった。また、個人的には職場の異動等、いろいろと落ち着かない状況であった。年末には実家に帰省したが、その時に新聞の片隅に「中国武漢で原因不明の肺炎が発生している」というような記事が出ていたような気がする。その時は武漢がどこにあるかも分からず、また関心すら持っていなかった。

大晦日にはカルロス・ゴーンが国外逃亡するという、重大ニュースがあり、人々の関心はそちらに向いていた。

ただ、個人的には年末は体調があまり良いとは言えなかったので、風邪をひいたり、インフルエンザに罹患することには注意していた。大抵、冬には扁桃炎で熱を出し抗生物質のお世話になることが多く、昨冬も12月に入って喉の不快感を感じたので、「ハレナース」を服用するとともに鼻呼吸テープをつけて寝るようにしていた(ただ、専用の鼻呼吸テープは結構値が張り、またキツくて就寝中に剥がしてしまうことが多いので、余っているキネシオテープで代用したところこれが快適!適度な伸縮性が奏功して口を開くことができるので無意識に剥がすことがなくなった。おかげで今まで喉の痛みが出ることがなくなった。)

2020年が来た

年始は初詣にも出かけ、2日には初売りで福袋の行列にも並んだが、インフルエンザを警戒して、常にマスクを付けていた。子供と一休みしようとマクドナルドに入ったときに、周囲に旅行者と思われる中国人が多くいたので緊張したのを覚えている。年末年始は何とか無事に過ごし、3日夜に帰宅し翌週からも通常の出勤を始めたが、6日に妻から「インフルエンザA型」の報告が。勤務先近くの薬局ですぐに体温計を購入して体温測定し、1日はテレワークをして体調をみたが悪くなかったので出社を再開した。ただ、この時家庭内では病人隔離プロトコルを実施した。またその際にアルコール消毒液等、多少の衛生用品を購入したので、その後のコロナ禍のときには役に立った(ただ、マスクは買いそびれた)。

日常は新しい職場での様々なイベントに忙殺されていた。夜の会合も続き、色々な人と会う機会が増えていった。1月半ばを過ぎると武漢での肺炎を意識せざるを得なくなっていたが、正直現実感は持っていなかった。3月に広州で開催されるシンポジウムで講演する予定だったのでプレゼンテーションの準備をしていたが、サポートしてくれている中国出身の部下とは「市内観光はやめたほうが良いかなぁ」とか「(出張時に習慣としている)ジョギングは避けたほうが良いかなぁ」といったレベルの話をしていた。シンポジウムの主催団体からは「念のため航空券の手配はちょっと待ってください」と言われるぐらいだった。

その後、1月23日には武漢が封鎖され、中国はそこまでするんだ、という驚きはあったが、団体旅行は禁じるが個人旅行は制限しない対応や、湖北省のみを対象としていることについて少し疑問を持った。そして春節でどれくらいの中国人が訪日するのか、不安を感じた。そして1月末に3月の広州のシンポジウムについて中止を検討する旨の連絡が主催者からあり、ついに武漢肺炎の影響が私の生活にやってきた。

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