訪日外国人に道案内してモヤモヤが残った
"Need any help?" (困っていることないですか?)
地図とにらめっこしている訪日外国人を見つけたら声をかけるようにしている。
「〇〇駅に行きたい」と言われれば、路線や乗り場、乗り換えのしかたなどを案内するのだが、ときたま一筋縄でいかないこともある。
相手が「地下鉄乗り放題チケット(以下、メトロパス)」を持っているときだ。
メトロパスは購入後、24時間、42時間、または72時間にわたり、地下鉄(東京メトロ&都営地下鉄)が乗り放題になる、短期の旅行客にはお得なチケットなのだが・・・。
(注:JRのみ、複数路線など、ほかの乗り放題チケットもいくつかある)
JRならば5分で着くのに
先日、夜の秋葉原駅で外国の旅行客が2人、食い入るように路線地図を調べていたので声をかけた。聞くと「水道橋駅に行きたい」という。
「それならJRですぐ。案内するので一緒に行きましょう」。JR(中央・総武線)では水道橋まで2駅、5分で着く。
すると「メトロパスがあるのでそれを使いたい」という。
道案内の経験でいえば、メトロパスを使う外国人観光客は多い。「JR山手線なら1本で行けるのでわかりやすいのに」と思っても、地下鉄で何度か乗り換えるルートを案内することはある。
しかし、もし秋葉原から水道橋まで地下鉄に乗ると、(日比谷線に乗る→)日比谷で乗り換える(→都営三田線に乗る)→水道橋駅に到着するまで、25~30分もかかってしまうのだ。
恩返しをしたかった
一応説明したが、「時間がかかってもメトロパスを使いたい」というので、そのまま乗り換え方を案内した。
改札で見送り、「サンキュー」と言われたものの、「これでよかったのかな」と、しばしモンモンとしてしまった。
やはりJRの乗り口まで案内して、さりげなく切符を購入して渡してあげればよかったのではないか。
こんなふうに考えるのには理由がある。訪日外国人に道案内をしているのは、海外でたくさんの人に助けてもらった恩返しなのだ。
運賃を支払ってくれたキューバ人
何度か訪ねたキューバでも、たくさんの人に道を聞いた。バス、フェリー、乗り合いタクシーなど、地元の人でなければ乗り方やルートがわかりにくい交通手段もたびたび利用した。そんなとき、運賃をいつどこで払うか聞くと、地元の人がさっと運賃を払ってくれるのだ。
キューバは公共交通機関の運賃はとても安い。それもあるかもしれないが、こちらが支払いを申し出ても、みんな「大丈夫」と言ってくれた。
JR水道橋駅までたかだか150円の切符代である。日本に滞在する限られた時間で、30分の乗車時間が5分になるのなら、安いものではないか。その旅行者は夜も遅かったし、観光で疲れていたはすだ。
私は機械的に道を案内した。けれど、本当の意味で旅する人をHELPできたのか。しばらくモヤモヤが残ってしまった。