キューバの家具に遊び心を見いだす
リサイクル(再生)、リユース(再利用)、エコ(環境にやさしい)といえば、「真っ当なことをしている」という、背筋がのびるようなイメージがあります。
ところが、遊び心でいっぱいの、キューバのリユース家具を見て、そんな概念がひっくり返りました。
「あれっ。もしかして自転車? どうなっているの?」
ハバナにあるレストランは、そこかしこにリユースの「しかけ」がありました。見てすぐにわかるものもあれば、不思議なかたちだけれど何だろうと、はてなマークが頭を泳いでしまうことも。
テーブルの上にあったオブジェがじつは水道管だったというふうに、意外性や発見に満ちていて、食事をしながら、宝探しをしているようです。
天井につるされたテーブルランプは「これを逆さにして使うんかい!」と心の中で突っ込みましたが、よく見ると、今にも動き出しそうに演奏しているミュージシャンの影絵が浮かんでいて、ムードのある演出です。
花びらの時計を扇風機に
ハバナの民泊で撮った家具をインスタグラムに投稿していた「となりの近所 |traveler」さんの写真には、頬がゆるんでしまいました。
掲載許可をいただいてご紹介する、2枚の写真はどちらも扇風機。
ひとつは花びらがついた時計が中央に据えられています。時計は動いていませんが、切り花のように空間を華やかに彩って、部屋に滞在する人を楽しい気分にさせてくれます。
ふたつめの背の高い扇風機は観葉植物のよう。足の部分は木の造り、三つ葉のクローバーのような羽の緑とともに、ほっこり愛おしくなる存在感です。
アレンジを加えることで、もともとの役割以上の新しい魅力を見出す。粋な工夫の背景には、モノ不足により、再利用が必要だというキューバの社会事情があります。
千野祐子さんが著された、キューバ旅行ガイド、「Amazing Cuba 自然と暮らしを巡るキューバガイド」(フォレスト出版)では、このような記述がありました。
「慢性的な物質不足によって廃材や不用品を生活に取り入れることが当り前のキューバでは、再利用することを、『リサイクル』といわずに照れ隠しと誇りの愛着を込めて『インベント(=発明)』と呼ぶ」(49ページ)
インベント(発明)という言葉にこめられている、クリエイティブな感性は、リサイクル、リユースを「楽しさ」に変換する力があります。
私も以前、ハバナの民泊で家族の方が使っていた灰皿が素敵だったので、思わず見入ってしまったことがあります。
清涼飲料水の缶を再利用して作ったとのこと。カラフルな缶の色と、折り曲げたふちの部分がおしゃれなデザインに様変わりして、部屋を移動してたばこを吸うのに、持ちやすく便利そうでした。
環境にやさしい生活を送るのは、まじめでストイックなイメージがあったのですが、使わなくなったものを楽しくアレンジする遊び心を取り入れたいなと思う今日このごろです。