キューバの高齢者、年とともに色気が増すのはなぜ?
着飾ったり、若くみえるようにがんばったところで、ほんものの若さに勝るものはない。
そんな思い込みが、キューバに行って、ひっくり返りました。
つい、目で追ってしまいます。
白髪交じりの髪を、頭の高い位置で2つに結い上げたツインテールに、カラフルな花柄ワンピース。白いビーチサンダルと小さなリュックを背負って街を歩く、高齢の女性。
ピンク色のボタン付きシャツに、麦わら帽子、ひげをたくわえた口もとに葉巻をくわえ、道行く人を座って眺める高齢の男性。
そのかっこよさといったら、むしろ若い人には醸しだせない、空気感をまとっている感じなのです。
足し算ファッションを味方に
若者にはかなわない気品。若者には出せない色気。華やかな色や、アクセントの小物を味方につけた足し算のファッションで、高齢者に軍配が上がってしまいます。
旅行ガイドブック「ロンリー・プラネット」キューバ版でも、しわが刻まれた年配男性が表紙になっていましたし、ハバナで観光客が高齢の女性を撮影しているのも、ときどき見かけました。
キューバの高齢者はなぜ、加齢にあらがうのではなく、楽しく年を重ねているのでしょうか。
まず、服装の「きちっと感」が品のよさを引き出しています。暑いゆえ、上半身裸で闊歩している男性もよく見ますが、ボタンのついたシャツを着ると、印象ががらりと変わります。
女性はワンピースなどやわらかいスタイルを身にまとい、タイトでセクシーな装いの若い人たちとは違った、可憐で気品のある雰囲気を放っています。
通りを歩く女性を眺める習慣
そして、色気。年を重ねてなお、増すことができるものなのでしょうか。
80代の日系キューバ人男性がこんな話をしてくれたことがあります。かつては仕事から帰ってきて、シャワーを浴び、新しい服に着替え、外に出て通りを歩く女性を眺める習慣があったとのこと。
互いを見つめる眼差し×時間の積み重ねが、色気の源泉になっているのかもしれません。
映画「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」に登場するミュージシャン、コンパイ・セグンドが、当時92歳で「まだまだ子どもを作る!」と話していて仰天しましたが、そんな彼も艶やかさがみなぎっていました。
席をゆずられた高齢者の反応
キューバでは高齢者が大切にされる社会、という印象もあります。10年前ですが、ハバナのローカルバスに乗ったら、高齢者と女性は率先して席をゆずられていました。
席をゆずられた高齢者は、席をゆずってくれた若者の荷物を自分のひざに乗せ、楽しそうにおしゃべりが始まります。どちらかが「肩身がせまい」といった様子はまったくありませんでした。
キューバは男女の平均寿命が80歳近い、長寿国でもあります。
年齢に関係なく自分が主役。年とともに魅力と自信がさらに加わる。そんなポジティブな加齢をめざしたいと思いました。