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「亡命ダメ、ゼッタイ」の何が駄目なのか

中日ドラゴンズのキューバ系選手へ贈った、お祝いのケーキに描かれた「亡命ダメ、ゼッタイ」とのメッセージに非難が集まっています。

ドラゴンズ広報部は「シャレのつもりで」と釈明しましたが(「女性自身」の記事より)、悪意がなければいいというものではありません。

「亡命ダメ」を受け取った、キューバの選手がどんな気持ちになるか。想像できないのがイタいところです。

中日側は「他意はなく、これからもずっと一緒に頑張っていこうねという意味」(「女性自身」)と説明しているけれど、それをそのまま書けばよかった。

背景には、今年4月、WBCのキューバチームでも活躍した、中日のジャリエル・ロドリゲス選手の騒動がありました。

今シーズン開幕前に突如、姿を消し、球団との契約を反故にしてしまったのです。米メジャーリーグでプレーするため逃亡したと、本人もSNSで認めました。

中日にとっては痛恨の極みだったはず。しかし、いくらキューバの選手に前例があったからといって、今球団でがんばっている別のキューバ選手に、まるで当てこすりのようにも聞こえます。

このニュースで思い出したことがあります。以前雑誌の企画で、「日本に住んで困ったこと」を、外国人数十人に聞いたときのことです。

日本は観光で訪れれば、人びとは親切で礼儀正しいけれど、住むとなると別の側面を見ることになる(これは日本に限らないとは思いますが)。

そのなかで何人か指摘していたのが、「イタリア人は料理上手」、「黒人は足が速い」といった、特定の国籍や民族の背景に対して、悪意なく「特徴を決めつける日本人が多いことにびっくりした」というものでした。「自分の国なら大問題になる」との指摘も。

ほめているのだからいいのでは? と思うかもしれません。しかし、偏見を伴う決めつけは、人種差別と闘ってきた歴史を持つ国から来た人からすると、ショッキングに受け止められたようです。

私たちが日ごろの会話で、「〇〇の出身の人は~だよね」「女性(男性)だから~」「~の職業の人はこう」などと、勝手に一般化されてモヤモヤしたとします。それでも、「言っている人に悪意はなさそうだし」と、スルーすることが多いのではないでしょうか。

今回の「亡命ダメ」は「人権問題では」との声もあがっています。国籍で何かを決めつけることの危うさを、肌で感じられるかが、いま問われています。

【キューバの野球選手の「亡命」について】
日本の球団でプレーするキューバの野球選手は、キューバのチームに所属する公務員でもあり、日本での収入は2割程度、国に納めています。
一方、キューバ選手が米メジャーリーグでプレーしたいという場合、米・キューバ両国の外交上の関係もあり、「国を捨てる」かたちではないと、メジャーと契約できません。
「亡命」というと、キューバで迫害されて逃亡する印象ですが、MLBのキューバ選手も「メジャーで力を試したい」「将来はキューバでもプレーしたい」など様々な声があります。
2015年、米国とキューバの国交を回復したオバマ米大統領は、キューバ選手が「国を捨てず」にMLBでプレーできる道筋を作るために尽力しましたが、次のトランプ大統領によってその道筋が閉ざされてしまいました。
キューバ選手が安全かつ、正式にキューバからMLB契約できるようになるには、米国とキューバの関係性や取り決めがカギとなっています。

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