政治への怒り
「生きていても良いことが少ない……。つらいばかりの人生じゃ……」
目の前の老爺が言った。
「そうですねえ、おとうさん。年金は削られる一方なのに介護保険は取られる一方……」
隣に立つ老婆が首肯する。
すると、老爺は語気を強めながら声高らかに演説する。
「それもこれも、最近の政治家がイカン。政治家はクズと同義語に成り果てた!」
「そうねえ、そうねえ……」
流石にここまで言われては黙っていられない。
「ちょっと待って下さい、おじいさん」
おれは優先席からすっくと立ち上がって続けた。
「おれはクズだが、政治家なんかじゃありません。訂正して戴けませんか?」
老夫婦はおれの迫力に気圧されて、すごすごと退散していく。
おれは、再び優先席にどっかと座って、そうしてから眠りに落ちた。