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総選挙② 中盤から終盤へ、変わる情勢 与党過半数割れも 日本は大波乱の時代に入る予兆

政権交代を含む政局激動が現実味を帯びてきた。

公示直後の全国紙や通信社、NHK、民放の世論調査では、「自民過半数割れの可能性、与党では過半数維持へ」が大勢だった。
しかし、10月20日のラストサンデーを挟んだ中盤情勢では、「与党を中心とした政権より野党を中心とした政権」が多数派の調査結果が相次いで出てきた。
ベテラン政治記者も「これまで見たことのない動き」と驚く。序盤は様子を見ていた無党派層が、投票日が近づくにつれ、野党への投票に傾いているのだろうか。

このトレンドが続けば、自民党の予想獲得議席が大幅に減り、連立与党の公明党も議席を減らして、与党で過半数割れの可能性がある。野党陣営では、野党第一党の立憲民主党の伸びが加速し、国民民主党も躍進、れいわ新選組も伸びる一方、日本維新の会と共産党は伸び悩み――という可能性が高まる。

過半数割れなら「石破おろし」も

石破茂首相は、今回の総選挙での勝敗ラインを与党での過半数としているので、もし、このラインを下回った場合、即座に自民党内から責任を問う声が上がり、「石破おろし」が始まるかもしれない。そうなれば、同様に、弱小派閥だったが金権政治批判の〝風よけ〟の総理大臣として登場した、かつての三木武夫氏と同様の道を歩むのか。三木氏は、改革路線に対する党内の大勢から強い批判を受けたものの、国民人気を背景にかなり粘ったが、結局、選挙での敗戦の責任を取って退陣させられた。

岸田文雄前首相や菅義偉元首相らは、総選挙や来年7月の参院選の「顔」として、国民的人気があると見られていた石破氏を支持して、新政権が発足した。しかし、「改革派」の旗手だったはずの石破首相は、就任すると、総裁選での「じっくり野党と議論してからの解散」から「早期に国民の審判を仰ぐのは当然」へと主張を翻し、首相就任から8日後という戦後最短の解散に踏み切った。政策面でも、支持母体の岸田派や菅グループなど主流派の方針にがんじがらめとなり、主要政策のほとんどを事実上、反故にした。

生活苦とのギャップに、国民の怒りは収まっていない

自民党、石破政権の支持率の低下は、この「ブレる姿勢」が原因とする見方がマスコミでは多いが、果たしてそうだろうか。

そもそも、この解散総選挙に至った要因は、自民党派閥の裏金問題である。安倍派を中心とする国会議員が派閥の資金集めパーティーで、ノルマ以上に集めた金をキックバックしてもらい、それを政治資金報告書に記載しなかった。資金の入りを公表していないのだから、本来、納めるべき所得税も納めていなかった。

2023年の11月から歳末にかけて、この問題が次々に明らかになると、国民の怒りは沸騰した。一般の国民は、1000円でも所得があれば、しっかり課税される。確定申告に1日でも遅れれば、ペナルティーを払わされる。にもかかわらず、国会議員は、100万円、1000万円単位の所得を隠していても、「忘れていた」「派閥に記載の必要はないと言われた」で済んでしまう……。今年1、2月の確定申告会場は、あちこちで納税者の不満が噴出した。

その一方で、物価の値上がりが止まらない。天候に左右される生鮮食品だけではなく、様々な商品が急激に値上がりし続ける。国民の多くは、日々日に、生活が苦しくなっていることを実感している。

これには、ずっと自民党に寛容だった日本の有権者も、ついに怒りを爆発させた。今年に入って行われた多くの国政選挙の補欠選挙では、都市部だけではなく、保守の地盤である地方でも自民党候補が立憲民主党候補に連敗した。

それでも、自民党としては、クリーンなイメージで国民人気のある石破氏を看板にすれば、なんとか、批判の風を最低限にできると踏んでいたのだろう。9人も候補が立った総裁選を「THE MATCH」などとショーアップし、国民の目を反らそうとした。

だが、公示後の世論調査の動向をみていると、国民の怒りは静まっていないようだ。むしろ、投開票日が近くにつれ、様子をみていた「支持なし層」「無党派」の人々の怒りの炎は燃え上がり、じわりと与党から離れている。もし、自公与党が過半数を割り込めば、日本の政治、経済、社会に大きな変化が現れるのは間違いない。

2025年は歴史的大転換の予兆

もちろん、まだ投票先を決めていない有権者も相当数いるから、最終結果はどうなるか、下駄を履いてみるまでわからないが、小選挙区の恐ろしさは、風が一方に吹いた時、雪崩を打つ可能性があることだ。少なくとも、今回の総選挙は、戦後、ほとんど一貫して日本を統治し続けてきた〝昭和体制〟の代表、自民党にとって、身にしみる結果となるのは間違いない。

来年2025年は、昭和100年、戦後80年に当たる。7月には、参院選もある。自民党は結党70年である。この巡り合わせは、単なる数字のあやではない。様々な法律や制度、システムの多くが賞味期限を迎え、日本のあちこちで悲鳴のような音を立てて軋んでいる。ジャニーズ事件から大手メーカーの認証不正、政治とカネの問題まで、問題が噴出した2023年以来、今年から来年にかけて、歴史の大きな歯車が回っている気がしてならない。


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