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「記憶スイッチ」の提案

人は、10年を3回経験すると「翼」が生えることをご存じでしょうか?
私のように40代後半になると、慣れたものでビュンビュン飛んでいます。飛びまくっています。もしかしたら、飛ばされているという方が正しいのかも知れません。
例えば、

「1988年のソウルオリンピック」

…。
…。
…。

すみません。飛んでしまいました。
頭の中で、カール・ルイスを負かしたベン・ジョンソンが、変なオシッコを出していました。
これが、私が10年を3回経験すると生えると言う「翼」です。

ふいに与えられた言葉や曲、匂いで喚起される記憶。目の前のことはさておいて、思わず「ぽー」っと思い出に浸ってしまう。日常の溝に入り込んでしまったような。
そういう経験はないでしょうか?
おじさんになると、この頻度が多くなりがちです。しかもそれはいつも突然にやってくるのです。
「飛んだ経験がない」という人でも、あの日あの時という特定の瞬間でなくとも「夕日」「スピッツの『楓』」「潮の香り」と聞いたら、ちょっとノスタルジーな気持ちになりませんか?
今回はこういう「郷愁」を肯定しませんか、という提案です。

一般的には過去よりも未来が重視される傾向があります。もしくは現在です。
≪未来≫をどう切り拓くか、そのために≪今≫は何をするのか、という言葉の引力が強く、過去を懐かしんでいると、何となく冷めた目で見られがちです。
でも、本当は「思い出とか、郷愁とか、みんな好きじゃない?」と思うのです。
社会という生産性に重きが置かれる中だから、ともすれば過去は不毛とされてしまうから、遠ざけているだけでしょ?と。
でないと「ALWAYS 三丁目の夕日」を、あの時を知らない世代が懐かしんで見ることはないと思います。
人には、そもそも懐かしむという機能が備わっているし、記憶“欲”があり、本来は好きなんだと思います。
ならば、不毛だからと懐かしみは遠ざけるのではなく、うまく楽しめた方が良くない?と思うのです。

おじさんになると新しいことは覚えられないのに、昔のことはやたら鮮明に覚えています。
その鮮明さは「4K」です。一瞬であの時に戻り、ただ熱だけで喋るなんてこともあります。
実際に、旅行をするとなると時間も、お金も、体力も使いますが、この「記憶旅行」は手軽に旅立てるのです。

私が思うに、記憶を呼び起こすのに重要なのは、

・「気候」
・「曲」
・「匂い」
・「出来事」
・「名前」

この5点です。記憶スイッチにおける「5種の神器」です。
この神器を使い、どのように記憶スイッチを押すのか、フラッシュバックメモリーのきっかけを作るのか、です。必ずしもこの5種が必要という訳ではありません。

「夕暮れ」 「ここでキスして。」 「キンモクセイの香り」

この3点だけで飛んでしまう方もいるかも知れません。

詩手帖はどうでしょう。
こういったキーワードが載っている詩手帖があれば、ふとした時に開き、手軽に飛ぶことが出来ます。ランチタイムの終わり5分前に開く。軽く飛んでから午後の仕事に戻る。良い気分転換になりそうです。

・『80年~85年が青春期』の方用
・『85年~90年が青春期』の方用

などと、年代別に分けておけば、さらに飛びやすいと思います。飲み会でみんなで一緒に、なんて出来たら楽しめそうです。

カードにするのはどうでしょうか。
気候や曲名、出来事などのジャンルカードがあり、それをめくっていく。一人で楽しんでも、数人で楽しむこともできます。こちらも年代で分け、参加するのは同年代の方が良いでしょう。飛んだ人から「UNO!」のように「飛んだ!」と自己申告。その記憶を語っていきます。
「もう飛んだの?まだ2点しか出てないよ!」
「全然、話まとまってないけど、熱く話すお前が面白いわ!」
という会話も。
ただ本当に飛んだ時は、ぽーっとしてるので「飛んだ!」とは言えない可能性もあります。

アプリではいかがでしょうか。
自分の年齢を入れて、【スタート】ボタンを押します。ジャンルにおけるキーワードが出て来て、記憶を呼び起こします。そして【飛べた】【飛べない】をタップ。【飛べない】をタップすると次のキーワードが出てきます。それを繰り返し、飛べたタイミングで【飛べた】をタップ。するとその当時の代表曲が流れる、なんて仕掛けも。プレイリストの発展版としての機能でしょうか。

クロスワードパズルも良いかも知れません。
クロスワードを解いていきながらワード一つ一つが記憶喚起の言葉になっており、最終的にどんな言葉が出来るかは問題ではないクロスワードパズルです。

様々な懐かしいアイテム、記憶を副産物的に蘇らせるものは今までもあったと思います。ただ、それらは懐かしむ対象であっても、あの時に「飛ぶ」ということを目的にはしていません。
記憶"欲"記憶"翼"に変える。
もっと飛ぶことに特化したものが出来たら、良い娯楽になると思います。
もっとノスタルジーを楽しみませんか。

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