現役医大生が語る地域枠 光と闇と問題点


自己紹介

薪・松明屋です。とある大学の現役医大生です。医学部の地域枠について語っていきたいと思います。制度について良い点と悪い点を書いていきますが知って欲しいのは問題点のところです。

地域枠とは

まず地域枠とは医学部入試において地元出身者であったり、特定地域で勤務することを条件に選抜する入試制度です。目的は地域間の医師の偏在化を改善するためで、内容自体は都道府県や大学によって異なるが多くは貸与型の奨学金を受け取れる代わりに義務年限は地域医療に従事しなければならないというものである。義務年限は一般的には9年であることが多く、義務年限を働けば奨学金の返済が免除されるという制度である。

受験生はほとんど知らない

制度自体は上記の通りである。地域枠受験生の多くは制度自体は知っているが「お金貰える代わりに9年間働けば良いんでしょ。元々地元に残るし大丈夫でしょ。」くらいの解像度である。その通りではあるのだが、実際には地元に残るが地域枠は離脱している人も実はいるのだ。受験生はできるだけ一般枠で合格して欲しいです。

地域枠の良い点

地域枠の闇に触れる前に光について話したいと思う。良い点と言っても都道府県や自治体によって異なるため一概には言えないことは注意してほしい。

  1. 奨学金が借りれる

  2. 学生優遇

  3. 入学しやすい

1.奨学金が借りられる。一部の高所得家庭を除けば、これは大きなメリットです。医学部は6年(学士編入でも5年)かかります。学費だけでも国立医学部でも50万×6で300万、私立医大なら最低でも2000万弱、多いところでは5000万弱します。学費以外にも一人暮らしの家賃や生活費など6年分かかります。経済的に6年も大学に通わせられない家庭も少なくない。かといって第一種奨学金は借りれるか分からない。そのため、学費のほか生活費も借りれ、9年働けば返済免除になるこの制度は特定の生徒において魅力的です。実際に奨学金を理由に地域枠を受ける生徒は少なくはないのです。

2.学生優遇について、地域枠は確実に将来、その地域に残ってくれる学生です。人手不足の大学病院や関連病院にとって貴重な人材です。ポリクリ実習などでは希望の病院で実習できたり、地域枠の学生を対象にした実習があったりして楽しそうなことをしています。少なくとも地域枠でない学生と比べ、先生方と仲良くなりやすい機会が多いのは事実であると思います。

3.入学しやすい。もちろんこれは大学や年によって変わります。前期入試と合格最低点がそこまで変わらない年もあれば、センター(共通テスト)の合格最低点が700点くらいの年もある。平均してみれば入試難易度としては簡単な傾向があります。学力劣っていると思われています。しかし入学後の成績と入試の成績はあまり関係ないので学生が気にする必要はないです。

実際に、兄弟が東京の名門私立大学に通っているので難関大医学部に受かる実力があったのに地域枠を選んだ友人もいれば、地域枠じゃなかったら医学部に合格できないような友人がいます。彼らはそれぞれ地域枠のメリットを享受して入学しています。

地域枠の悪い点

では地域枠の闇について述べていきたいと思います。

  1. 人生設計

  2. 専門医取得

  3. 返済

  4. 制度変更

1.人生設計について、医学生6年と義務年限9年の15年間が今後の人生で制限されます。受験生は18、19歳の方がほとんどであり、15年後なんて想像できていないのです。おこるイベントしましては結婚、病気、親の介護など様々です。女性は特に医師のキャリアと出産、子育てなどの問題もある上に地域枠の制限もあります。子育てしながら義務年限を果たした偉大な方もいますが、もちろん離脱する方もいます。卒後進路で大学時代の彼氏と別れ、独身のままアラサーになった先輩もいます。ほかにも大学院進学留学などの機会を逃すかもしれません。特に地元以外の地域枠を受験を考えている際には、産休、育休、一時離脱、留学や研究が可能かを確認すること大事です。人生何があるか分からないので興味がなくても絶対にしてください。

2.専門医取得について、一般的なキャリアとして研修医が終わり、専門医取得するのだが、地域枠では都道府県のプログラムに参加しなければなりません。都道府県によっては専門医が取れなかったり、一部の科には進むことができなかったりします。また、同意なく離脱した際は専門医をとれなかったりします。同期が着実にキャリアを積んでいるのに自分は数年遅れただけで焦るのに、専門医を取れないとなると大変です。そもそも離脱者を減らしたいからと言って専門医のない医師を生み出すことに意味はあるのでしょうか?専門医が取れないことが離脱後に美容に進む理由の一つだと思います。

3.返済について、諸事情で離脱する際に奨学金を1000万と仮定して、返済の利子として10%かかります。年間100万円くらいはかかります。医師とは言え十分な金銭的負担であります。さらに違約金がかかる場合もあります。金銭的理由で離脱後に美容に進む理由の一つだと思います。

4.制度変更について、制度変更される場合があります。入学後に制度を変更するのは果たして有効なのかどうかわかりませんが常に変更のリスクを伴います。もちろん義務年限終了した方の意見を踏まえ、改善されていることが多いですが、改悪されるかを気にしなければならないのが精神的に大変です。

問題点

地域枠の目的として、過疎地域の医療格差を改善するために医師を派遣する目的で作られました。しかし地域間の格差以外にも診療科格差もあります。小児外科医心臓血管外科医は全国的に見ても絶対数が少なく、大学病院や(都道府)県立病院など比較的大きな病院にしかありません。3次救急の病院も少ないです。志高い医師が、人が少なく大変な診療科を目指そう思っても、過疎地域に飛ばされて数年キャリアを遅らせなければならないのです。病院側も貴重な人員を失うことになります。また、過疎地域のこれらの科の患者も結局は大きな病院に運ばれて医療を受けるため、若手医師を過疎地域に1人送ったとして医師も病院も患者も誰も得をしていないのです。もちろん都道府県の奨学金であり、過疎地域の人から税金からも払われているのは分かりますが、特定の診療科に対しては柔軟な対応をとって欲しいです。例えば、特定の診療科では義務年限が12年に伸びる代わりに過疎地域での勤務義務がなくなるなどです。これなら美容や東京に出たい人との差別化はできます。地域に貢献しているのに大きなペナルティが課されるのは問題だと思います。

最後に

美容に進むため地域枠を離脱するのか、離脱して専門医になれないことや金銭的理由で美容に行くのか。美容が先か離脱が先かは諸説あります。少なくとも今の制度は離脱者が美容に行くのを促進しているため、根本的に間違っていると思います。





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