両論併記は誰の為?
両論併記について
両論併記とはある議題に対して対立する意見や立場を公平に扱い、両方の意見を併記する方法を指す。これにより複数の観点から情報を理解し第三者が善悪を判断する際に用いられる。
ある社会問題について異なる立場の専門家の意見並列して紹介されたり討論されたりしている。選挙直前では各党の政策の違いなどまとめてあり民主主義には欠かせないものとなっている。
両論併記の問題点
そんな選挙でも大事な両論併記だが大きな問題点がある。それは2つの論を公平に扱ってしまっている点である。
専門家の意見
「ネットは素人の意見など玉石混交である一方でメディアは専門家に裏取りしてるので間違いありません!」と書かれているのをよく見かける。マスメディアは専門家の意見を絶対視しているがそもそも専門家の意見というものは当てにならない。
そもそも専門家と言っても様々な人がいる。学者、評論家、ジャーナリスト、現場歴の長い人などあげればキリがない。同じ学者でもそれぞれの立場がある以上、発言が異なってくる。場合によっては180°違うこともある。正反対な意見が出てくる以上専門家の意見なんてものは重要ではない。では何によって判断してるか、私は医学生なので医学について語るが、医学には明確にエビデンスレベルが決まっている。エビデンスピラミッドと呼ばれており、研究デザインによってエビデンスの強さが決まっている。
エビデンスピラミッド
エビデンスレベルは上から、
I システマティックレビュー/メタアナリシス
II 無作為比較対照試験
III 非無作為比較対象試験
IV コホート研究、症例対照研究、横断研究
V 症例報告
VI 専門家の意見
VII 動物実験
VIII 試験管内実験
である。もちろんクソ論文のデータから作ったシステマティックレビューはクソである一方で、倫理的問題や性質上コホート研究しかできないものもある。その中に優れた論文はあるのでエビデンスレベルが必ずしも正しいとは一概には言えない。が、少なくとも専門家の意見よりも実際の研究による結果のほうが大切であることは間違いない。
他の学問について詳しくないが、少なくとも理論が実験結果によって証明されたり、覆されたりしていることから、意見や理論よりも実験結果のほうが大切であるのはどの分野でも同じであると思われる。
負の強化
本来、両論併記とは経済的な面と科学的な面のように2つ以上の軸によって多角的に捉えて初めて成立するものであって、同軸(主に科学的側面)内ではほとんどの場合結論が出ている。同軸内の両論併記はただどちらか根拠の低い主張を対等に扱うため負の側面を強化しているだけだ。さらに負の側面を強調する専門家は絶対数が少ないため貴重であり様々なメディア内で重宝されるため大物のように扱われさらに強化されることとなる。
両論併記は誰のため?
私は両論併記は自分で調べず責任を取りたくないメディアと極論によって目立ちたいだけの専門家のためのものだと思う。もちろん多角的な視点で議論している素晴らしい番組もあるが非常に少ない。
討論のエンタメ化
そもそもテレビや新聞にとって大事なのは視聴率でありレビュー数である。それによって広告などの収益で成立しているからである。
科学的な議論をするだけなら研究結果の抄読をすればよいのだが、おそらくそんな番組や記事は多くの人には見られないだろう。そのためエンタメ要素として「専門家」に戦わせ、討論番組の形式をとっている。さらに、視聴者に迎合されるため声を荒らげたり必要以上に煽ったり感情に訴えたりと主張と関係ないパフォーマンスを行う専門家も増えて来ており、内容が専門的で高度なほどパフォーマンスの印象で結論づけている番組もみられる。
どの番組とは言いませんが討論番組の体をしていますが実態はただ出演者が言いたいことを言うだけの番組もある。出演者の多くは評論家とかコメンテーターのような自称専門家で構成されています。身内の馴れ合いで建設的な議論はされないのですが人気番組なのが謎である。