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プレゼント。

この記事でも書いたけれど、私は一度転校している。
そして小学校三年生の夏休み明けに、元々住んでいた近くの学校へ戻ることになった。
父の赴任期間はまだあったけれど、祖母の体調が悪くなったことで私たちは帰ることになった。そもそも母も長くここにいることは想定していなくて、ひとときの核家族気分を味わってみたかったのかもしれない。

夏休み明けの帰りの会で先生から
「それでは、最後に皆さんへお話があります!」
という、皆うすうす知ってるのに勿体付けたような言葉。
いよいよか・・と、教壇の前に出てお別れの挨拶をする。

そのあと、皆からお別れの言葉を事前に私のために買ってきてくれたプレゼントをそれぞれ渡された。鉛筆、消しゴム、ノート、交換日記、小物入れ、などなど。
私はそれらのプレゼントを教壇の上に置いてゆく。
最後の子になった時だ。
その子が
「私はプレゼントを用意していなくて・・。だからこの夏休みの宿題で提出した工作をあげるね」
と、突然言い出した。
それは紙粘土で作った帽子で、キレイに色が塗られていて、たしか彼女の名前とクラスが書かれた紙がついていた。
さすがに宿題貰うのは申し訳ないし、こんな良い出来のものを渡してしまったら彼女だって困るだろうと思って、私は断ったのだが彼女は持って行ってほしいと言うので、受け取った。

帰ってから、頂いたプレゼントを使ったりしていたのだが、正直一番使い道のない彼女の紙粘土の帽子は、引き出しの奥にしまっていた。
それでも、たまに取り出しては「夏休みの宿題くれるって逆にインパクトあるな・・」とよく彼女を思い出していた。

数年経って高学年くらいになると、当然ながらプレゼントはほとんど使ってしまっていたし、何を貰ったなんてほとんど覚えていなかった。
でも、その紙粘土の帽子だけは引き出しにあった。
たぶん最後の最後まで取っておいたのがそれだった。
名前が書かれていた紙はとれてしまったけれど、高校生の時にもあった。
もしかしたら実家にまだ机があるから引き出しにあるのかもしれない。

プレゼントの価値なんて関係なくて、その気持ちに込められたものが相手にどれだけ届くかってことを、彼女から教わった気がして私はそれをずっと捨てられずにいるのかもしれない。
にしても、宿題をプレゼントされることもなかなかないと思う。


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