マキプ

文章を書くことが好きです。 書くことで生きていけたら良いのだけど、なかなかうまくいきません。 ここでは自分の書きたいことを、読む人視点で見直して、多くの人に読んでもらえる小説を投稿したいと思います。

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文章を書くことが好きです。 書くことで生きていけたら良いのだけど、なかなかうまくいきません。 ここでは自分の書きたいことを、読む人視点で見直して、多くの人に読んでもらえる小説を投稿したいと思います。

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自己紹介的なことを書いてみる。

noteに祖母ばーばらを題材にした小説を少しずつ掲載していこうと考えている。 某新人賞に応募したのだが選ばれなかった。 最近覚えたkindle出版にしようかとも思ったが、買ってもらわねば読んでもらえないというスタイル故に最近乗り気がしない。 そこでnoteという手を考えてみた。 新しい媒体に踏み出す段にはまずめんどくささが先に出て躊躇する。 がしかし何にでも挑戦せねば始まらない。 書くことが好き。 ならばnoteでしょ。 そう思って幾日経過したか。 祖母ばーばらのことを小説

    • 第56話:月(最終回)

       こんなことじゃいけない。  頑張らなくっちゃ。  もっと、頑張らなくっちゃ。  そうやって思うのは、頑張っていない自分がいるから。何をどうすれば自分が納得するのか、皆目見当がつかない。  毎日少しでも前進していたい。  自分が納得する自分でいたい。  何年も、何十年も前から、ずっと変わらない自分が自分を責める。ということは、恐らくこの先もずっと。そうして私はただ年齢を重ねるんだ。  ぶっこちゃんが死んで、葬儀も済んで荼毘に付した後にしのぶは自宅である新居に戻った。片付けや法

      • 第55話:希望とは

         希望があるから人は生きていけるんだというようなことを、誰かが言っていた気がする。確かフランクルだっけ。  私もそう思う、としのぶは頷く。確信があるわけではないが、自身のわずかの経験から、なんとなくそう感じている。  ぶっこちゃんの老いるのを見ていて、ある時それに疑問を感じることがあった。  本能として、先天的に持っているものによって、人は生かされている部分があるのではないかと。  ぶっこちゃんは幸福を感じることが比較的得意な素質を持っていたのではないかと思う。日常の些細なこ

        • 第54話:時間

           ある初夏の晴れた気持ちの良い週末。やはりぶっこちゃんの姿は縁側にあった。空調が無くても心地良くいられる季節はありがたい。扉を全開にして、足だけ外に放り出して、上機嫌である。その理由は幸太が隣に居るからだろうと、しのぶは少し妬いていた。 「大阪城誰が建てたか知ってる?」  幸太の声が聞こえる。  しのぶは、くし切りにしたりんごを二人に運んだ。二人の間に器を置くと、まず幸太がフォークで一切れ突き刺して、ぶっこちゃんに手渡した。  それを見て少しふくれたしのぶに気付いたのか、幸太

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        自己紹介的なことを書いてみる。

          第53話:進行

           ぶっこちゃんのボケっぷりは日々波がある。その日の天気や気温によって左右されるし、誰に会うかによっても異なる。特に、お腹の調子で変化が大きいようだということは最近わかってきたことで、どうも機嫌が悪いと思っていたらお腹が痛いと言ってトイレに籠もることもしばしば。トイレは今のところ一人で行っているため、最初は当たり前のように鍵をかけていたのだが、もし倒れたらという心配があるのでかぎをかけないでほしいと言ってある。  でもまぁ言って理解してその通りにするならば認知症ではない、長年の

          第53話:進行

          第52話:猫

           ある朝洗面台のところでしのぶが髪をくくっていると、普段より早く起きてきたぶっこちゃんがやってきた。扉のところに立って、こちらを見ている。 「髪に油つけたらええねん」  しのぶの髪に艶が足りないと思ったのか、若しくは油を付けるのが女子の身だしなみと思ったのか、ぶっこちゃんは女が髪を結う行為を見て「油」を想起したらしかった。 「ベタベタするのが嫌やねん」  しのぶはスタイリング剤の類が苦手で普段は専ら何もつけずヘアゴムで縛っていた。家でぶっこちゃんと過ごす日常におしゃれもないや

          第52話:猫

          第51話:ぶっこちゃんの部屋

           綺麗に清掃された昔サイズ十畳の部屋。四方を障子とふすまで囲われていてどこからでも出入り可能である。北側の障子戸の外は廊下になっており、廊下の向こうは裏庭が広がる。北向きなので花は無く、亡き夫満がこしらえた石庭一面に生える年中コケが厳かに美しい。だが、専ら色鮮やかな花を好むぶっこちゃんはその庭をあまり好まず、およそ年中障子を締め切っている。  南側ふすまの向こうが仏間になっており、月に三度参っていただく坊さんの読経が聞ける特等部屋となる。 西に面したふすまは押入れになっており

          第51話:ぶっこちゃんの部屋

          第50話:しのぶの夢

           三月も終わる頃、しのぶは夢を見て起きた。久しぶりのことだった。  しのぶはこの家に帰ってきて当初、ぶっこちゃんを気にしてぶっこちゃんの部屋の隣の部屋である仏間に布団を敷いて寝ていたのだが、どうも仏間は落ち着かず、ご先祖の遺影と目が合って、見守られているというよりは見張られているような気になって、一週間程で別の座敷に移動した。昔の屋敷なので部屋数は多く、今ではその大屋敷にぶっこちゃんと二人きりなので部屋は使いたい放題である。と言っても普段の生活には持て余し、掃除するところが多

          第50話:しのぶの夢

          第49話:淡い思い

           朝からぶっこちゃんが玄関前ソファを占領し続けている。3月に入ったばかりでまだ寒い時期なのに冷暖房のない玄関前から動かない。しのぶが掃除機がけをしていても、ひょいと両足を上げてうまいこと避ける。 「寒ないん?」  声をかけても返事をしない。ということは寒いのだなと思い、しのぶはブランケットをかけてやった。ぶっこちゃんはブランケットにくるまって、イモムシのようになった。  日曜日の午前十一時。およそ見当はついている。幸太を待っているのだ。  たいてい週末はぶっこちゃん宅に泊まる

          第49話:淡い思い

          第48話:ミラクル

           冷え込む朝。しのぶはゴミ出しをしてキッチンに戻るとそこに、ぶっこちゃんが居た。 「あら、えらい早いやん」  普段は昼前にならないと姿を見せないものだから、何か普段とは異なることがあったのかもしれないとしのぶは思った。何かとは、嫌な夢を見たとか、妄想の子どもか猫でも現れたとか、そういったぶっこちゃんの中での何かである。  ぶっこちゃんはユニクロダウンの上からブランケットを被ってやはりもこもこしているが、足元は素足だ。そのへんてこりんな格好で冷蔵庫に向かって突っ立って、なにやら

          第48話:ミラクル

          第47話:ある週末

           週末はたいてい幸太が来てくれる。必然、ぶっこちゃんにとっても親しい関係の人として認識されているものと思われる。が、今のぶっこちゃんにとって他者との関係性はどうでもよく、会う時間の長短のみが重要であるように、彼女を見ていて思う。  しのぶは必然、毎日会うから最も親しい存在だと認識しているらしいが、それが孫であるということはどうでも良い。というより、既に忘れてしまっている。  しのぶもしのぶで「私はぶっこちゃんの孫でしのぶという名前だ」などと主張しない。主張しても覚えてもらえな

          第47話:ある週末

          第46話:コメディアン

           ぶっこちゃんとの毎日は、大変なこともあるけれど、それをしのいで愉快でならない。とにかく、吉本に売ったら高く売れるんちゃうかと思う程に日々爆笑発言を連発してくれる。これは認知症老人特有のボケっぷりがそうさせているのだろうか。  その昔テレビのクイズ番組で高齢者を回答者にしてその珍回答を笑うという今では批判されそうなことをゴールデンタイムに放送していたが、しのぶとぶっこちゃんもそれを見て笑っていた。  しのぶとしては当時から我が祖母も似たようなものだろうと思っていたが、後に見た

          第46話:コメディアン

          第45話:情熱家

           ぶっこちゃんの様子は日によって異なる。おもいっきり甘えん坊の子どものような時もあれば、認知症だとは思えないようなハキハキとした口調で話すこともある。特に幸太に対しては前者の場合が多いように伺える。男の人を敬い頼もしさを感じる男尊女卑が当たり前だった時代を生きた女性が表出しているのか、若しくは若い日に返ったぶっこちゃんが男性と話す姿なのかは分からない。そうかと思えばメイコなどに対しては幾分しっかりした態度で話す。無意識下にボケ老人扱いされたくないというような感情が表出するのか

          第45話:情熱家

          第44話:思い出作り

           ぶっこちゃんが認知症になって、最初は自分でもそのことをうすうすにも認識したらしく「ボケてきたかも」とか冗談半分に発言していて、しのぶも「ほんまやな」とか言って笑っていたが、本格的に進んでくると本人に自覚が無くなるのか冗談にもならなくなるのか、そうした発言は無くなる。  そして、発言が無くなるだけではなく、徐々に人格が変わってくる。それが、常に一緒にいるしのぶには如実に感じられ「あ、また進んだな」と少しばかり不安にもなるわけだが、幸いと言って良いのかぶっこちゃんの場合、その人

          第44話:思い出作り

          第43話:しのぶ

           しのぶは自分の生き方について計画を立てるタイプではなく、流れに流されてその時々に良いと思った選択をして今に至っている。高校までは地元の公立に通い、特に何かに興味するわけでもなく、たまたま地元に新設された大学の学生募集のポスターを見て一期生ってかっこいいという思いつきの不純な動機で受験したわけだが、何かを学びたいという気持ちなどもないままに医療系はハードルが高いという排除法で幼児教育を学んだわけだが、決して子どもが好きというわけではなかった。高卒で就職する友人も多くいたが、働

          第43話:しのぶ

          第42話:モラトリアム

           ぶっこちゃんとの日々は時間がゆっくり流れているようだと、しのぶは感じていた。もしかしたら、本当にゆっくりなのかもしれない。昔そういう類の科学雑誌なのかオカルト雑誌なのかを読んだ記憶がある。元々のんびり性分のしのぶにとっては、こういう時間の過ごし方が心地良かった。色々と大変なことはあるが、自分はまだお世話に専念できる立場なのだから、働きながら時間に追われて慌ただしく介護もしなくっちゃという人よりは幸福だろうと思っている。  以前テレビの討論番組で、仕事に注力したいのに親の介護

          第42話:モラトリアム