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ホン川の支川がハノイ付近で分かれることから、「○○デルタ」と呼ばれる経済圏の強みを考えた。

ハノイの市街地には湖、というより、池がやたらと多い。

その周辺が緑化された公園として整備されて市民の憩いの場になっている。街のシンボルとしても名高いホアンキエム湖(還剣湖)もまたその一つだ。衛星画像からも、ハノイ周辺にはあまたの池が存在していることが分かる(画像中の濃紺の領域)。

ここまで池が多いのは、ハノイの東側を流れる大河、ホン川(Sông Hồng)が古来より氾濫して、流路の変遷を繰り返す過程で池として残されてきたためだ。これらは総じて河跡湖と呼ばれるものだが、中には蛇行による急曲線の形状をした三日月湖も少なくない。ハノイは漢字で書けば「河内」(中国語も同様、he nei)というように、まさに氾濫原の真っただ中に成り立っている都市だ。そして、ホン川がもたらす恵み、この肥沃な大地により多くの人口を支え文化を育んだこの一帯はホン川デルタと呼ばれる。

それにしても、ホン川の三角州(デルタ)は広大だ。ハノイは河口まで100km以上離れているが、(経済圏としての地域名だけではなくて)地形として実質的にも三角州の上に位置している。ハノイ付近でホン川からドゥオン川(Sông Đường)という結構大きな河川が河口に向けて枝分かれしていることがそれを物語っている。

感覚的に表現してみると、平坦地になり河川は流れる方向の意思を失い、気ままに流路をとって枝分かれして海に注ぎ込む。そうやって堆積物で地ならしされて形成されるのが三角州。河口まで残すところまだ100km以上にもあるにも関わらず、ハノイの時点でホン川はすでに旅の最終章に入っているという感じだ。

日本国内の典型的な三角州として太田川が造った広島平野があるが、太田川が枝分かれをするのは河口から10kmにも満たない地点(標高約7m)。日本国内でイメージする三角州とはこのような感じのスケールだ。

分流地点から河口までの距離(直線): ハノイ 約110km 広島 約9km
分流地点の標高:ハノイ 約10m 広島 約7m

さすが、中国雲南省に端を発し大陸を貫流した大河川がフィナーレに形成する三角州はハンパない規模だということだ。

こういった広さの規模感覚をつかんでおくと、ホン川デルタ以外でも、メコンデルタ、中国では長江デルタ、珠江デルタ、などの名称が出てきたとき、いくつもの都市を含んだ地域で、平坦で肥沃で広大であるが故に、豊富な人口を支える食料生産、製造業、第3次産業までを擁するポテンシャルの高い経済圏だということが容易に想像がつくのではないだろうか。





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